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「つーか見て見て」

原が両手に持っていたのはサブマシンガンという銃だ。
重さも大きさも、瀬戸の持つマシンガンの三分の一程度のものだ。

「これ2コあったんだけどさ、もしかして同時撃ちすんの?」

「それじゃブレるだろ
弾の入れ替えしなくていいように2丁なんだよ」

弾が切れたら捨てる感覚な、と花宮は付け加える。

「俺2丁拳銃とか憧れてたんだけど〜」

花宮の言葉に原が両手でサブマシンガンを持ち構える。
かっこよくね?と名前に同意を求めてくるので笑って流した。

「はっ、弾無駄にしたけりゃそうしろ」

カプセルの表面に書いてある暗号のようなものは解けたし原と銃の回収は済んだ。
古橋はどこだ。

花宮たちは古橋を探すために再び森に出た。

「さっきから全然ゾンビ出てこねえな」

山崎がふと気づいたことを言った。

「俺はずっと小屋にいたけど、外はなんの音もしなかったよ」

原が返すと今度は瀬戸が言った。

「俺も木の根元に座ってたときはなにもいなかった
花宮たちが来たらゾンビが集まってきてたけど」

「…俺のせいっつってんのか?」

花宮が瀬戸を睨むとそんな視線を受け流しへらっと笑った。

「あ、あれ古橋じゃない?」

原がまっすぐ指差す先には小屋があり、そのドアを近くでジッと見つめる古橋がいた。

「なにしてるのかな」

名前が呟く。

「おーい古橋ぃー」

「ヤマァ、静かにしろって何回も言ってるよな?」

花宮がふるふると拳を握りしめ山崎を見ると山崎は謝った。

山崎の言葉に気づいた古橋は花宮たちの方を振り向き手招いた。

「?なんだろうね」

瀬戸はそう言い古橋に近づいた。

「古橋くんどうしたの?」

「名前も無事だったか…
ドアを開けようとドアノブを掴んだら手錠がかかった」

ほら、と言いドアに繋がっている手で手錠を引っ張り見せた。

「…ずっとここにいたのかよ」

「ああ、動けないしドアも開かないからな」

花宮が聞くとなんでもないように古橋が答えたので、花宮は無言で手錠に銃を撃ち古橋を解放した。

「っ、」

引っ張っていた手錠が急に取れた反動で古橋は尻餅をついた。
原がガムを膨らませながら手をのばすので古橋はその手をとり立ち上がる。

古橋がドアも開けると少し重かった。
なにかあるのかと中に入りドアを閉め、見ると大きな銃が縦に立てかけてあった。

他になにかないかと小屋を見渡すと、机の上に懐中電灯が一つだけ置いてあった。

「あ、これで迷わず帰られるね」

名前はこれを持つのが自分の仕事なのだろうと予想して手に持った。

カチッ

「え?」

懐中電灯を取ると音がした。
するとゴゴゴゴ…と地響きがしたので周りを見る。

「外見ろ」

花宮がドアの隙間から外を見ると、ゾンビ化した熊が群れをなして小屋に向かって来ていた。

「俺が言い始めたせいで、すまないな」

ふと古橋が謝る。
ここに来るきっかけを作ったことを悔いているようだった。

「後悔してる暇があんなら撃て
帰るぞ」

「…ああ」

古橋が先ほどドアから取りそばに置いておいた銃を構えた。
構えたのはアサルトライフルだった。
瀬戸の持っているマシンガンとよく似ているが重さ、大きさが二分の一程度なのが特徴だ。
連射には適していない。
連射するとどんどん熱を持ち変形、最終的には破損してしまう。

古橋が花宮たちに加わりゾンビ化した熊に銃を放つ。

しばらく銃を撃ち続けていると古橋が呟いた。

「まずいな、これでは倒す前にこちらの弾切れだ」

「…ああ、こっちもだ」

花宮が答えたのを最後に全員が無言で撃っていく。
名前は5人の後ろで静かにそれを見ていた。

「!?なん、」

古橋が弾切れのアサルトライフルをガチャガチャといじっていると、古橋の背後から木のツルのようなものが近づいてくる。
木のツルは生き物のようにうねうね動いて古橋を絡めて遠ざかっていく。

「古橋っ!」

近くにいた山崎がとっさに手をのばすが届かない。
早く終わらせ連れて行かれた古橋を追うために瀬戸はゾンビ化した熊の群れを一掃した。
古橋が連れ去られ、一同は呆然となり沈黙が続いた。
その沈黙を破ったのは名前だ。

「…ねえ、あの大きな建物じゃない?」

名前が指差す方には大きな建物があった。
縦に長い直方体で灰色の建物だ。

全員がその建物を視界に入れるとなにも言わず走り出した。

(150327)
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