小説 | ナノ

▼ あくま

注意*優しい幸村ではありません

ありがちな場所でありがちなことをすることに決めた。
校舎裏で柳くんに告白する。

一言に校舎裏と言っても、立海の校舎裏はじめじめしたリンチ場ではない。
木がたくさん生えているがきちんと日差しがあたり、雑草も切り揃えられている。
木の近くにはベンチもある。

「好き、です」

のどがからからだ。
ちゃんと言えたのかもわからない。
柳くん、好きだよ…好き。

「すまない
お前の期待には応えられない」

「…」

わかっていたの。
彼は忙しい。
それに恋や愛とは相容れないような…。
彼から恋だの愛だのイメージがつかないのだ。

「俺は部活や勉強に集中したい
それに、今誰かと付き合っても寂しい思いをさせるだけだ」

本当にすまない。
そう言って柳は去っていた。

やっぱり失恋した。
柳くんのように言うなら、私が失恋する確率90%だ、みたいな。
あ、でも話せただけでも良かったかもなんて
私バカみたい。

「どうだい?失恋した?」

「!?」

驚いて後ろを振り返る。
にこにこしながら幸村が近くの木から歩いて来た。

「…何が面白いの?」

「ごめんごめん、柳がきっぱり断るもんだから、まるで真田みたいだなって思ってさ」

名前はひどく傷ついた。
今失恋したことをわざわざ言わなくても良いじゃないか。

それを感じたのか幸村が言った。

「…ああ、悲しんでいたのかい?」

幸村くんの笑った顔は、比較的好きだ。
クラスで楽しそうに友達と話しているのをよく見る。
あははっ、って豪快に声を出しているのに全然下品じゃなくて、幸村くんが好きって言う花みたいにきれい。

その幸村くんが、たいそう面白い、とでも言うかのようにくすくすと笑った。

「そんなことより名字さんは、どうして俺がここにいるのか気にならないの?」

ん?今そんなことって言わなかった?幸村くんって言葉選ばない人なのかな?

名前はぐっと手に力を入れた。

ああ、バカにされているのか。

悔しい。
そこまで言わなくても良いじゃないか。
こっちだってなりたくて悲しんでなんかいないのに。

それをそんなこと、って。

「ひどいよ、」

幸村はきょとんとした顔をした。
なんでひどいって言われたかわからないの?

「あれ、俺の質問の答えは?」

有無を言わせないような笑みだ。
友達と話してたときもたまにこんな顔をしていて怖かった。

「ふっ ごめんごめん、
俺って人をいじめるのが好きみたい」

そこで区切った幸村は名前の肩に手を置く。
そして幸村の柔らかそうな唇を耳元に寄せた。

「気づかせてくれてありがとう」

ふふふと笑った。

(150305)
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