小説 | ナノ

▼ でいと計画3

映画館を出ると人が行き交っている。
もうお昼だ。

「少し歩かないか」

ずっと同じ体勢で疲れただろう、と言い映画館から少し離れたレストランに入った。

古橋くんほんとに気がきく…

名前は優しすぎて気がききすぎる古橋に気づかれないように感嘆のため息を吐くのだった。

「んーなににしようかな」

レストランに着き、向かい合って座りそれぞれコートを脱いだりメニューを見たりしていた。
ちょうどお昼なので混んでいたが、待たずに入ることが出来た。

たくさんのメニューに決めかねていた名前はメニュー表をパラパラとめくっていた。
ここのレストランは和洋中なんでも揃っていた。
メニュー表のページ数も多く、迷うのも仕方ないだろう。

そんな名前を、メニューを見るふりをしながら古橋は見ていた。

「決まったか?」

「…もうちょっと見ていい?
古橋くん決まった?」

古橋がメニュー表を指差した。
和のページで魚や肉、てんぷらなど充実していた。

「俺はこれにする」

「あ、それも美味しそう」

古橋の差したメニューを見ると、いろいろな料理が少しずつ、肉も魚も食べられるものだった。

んんん、と自分の持っているメニュー表とまたにらめっこにしたあと、名前がオッケー、と小声で言った気がした。

「決まりました!ドリアにします!」

メニューを閉じながら古橋を見る。

「そんなに大きな声で言わなくても聞こえているぞ」

いつの間にかスマホを見ていた古橋が名前にそう言うと店員を呼ぶボタンを押した。

「ほら」

「わ、ありがとう!
…古橋くんすぐ気がつくね
どっちが彼女かわかんない」

古橋が名前にスプーンを渡すとあはは、と名前が少し俯き自嘲気味に笑う。

「…名前は俺の彼女だろう」

「う、うん」

「気にするな」

歯切れの悪い名前に疑問を抱きながらも少し目を離した隙にすぐ食べようとしたので注意した。

「熱いから気をつけろ」

「はーい」

ふーふーとドリアを冷ます。

「おお、美味しい!」

笑顔で名前が言うので古橋も口元を緩め笑う。

「そうか、良かったな」

「…古橋くん笑うね」

「?」

「もっと笑った顔見たいな」

古橋がとっさに口元を隠し名前から顔をそらした。

急になんてことを…。

顔に熱が集まるのが感じられた。
ああ、これはレストランが暑いんだ、そうだ。

「…そうか」

「うん」

お昼を食べ終わり、デザートを食べながら映画の感想を言い合ったり学校のことを話して、ゆっくりとした時間を過ごす。

「古橋くんのケーキの横にあるそのアイスさんは…」

「抹茶だが、食べるか?」

そう聞くと、パァッと顔が明るくなり
「ひ、一口ください」
と言われたので仕方なくまだ口をつけていない抹茶アイスを丸ごとスプーンですくった。

「!?ちょ、それは…!」

「口を開けろ」

「えええ、量多いし脅迫…!」

名前がしぶしぶ口を開けると「あーん」と小さな声で聞こえた。
間接キスだ。
初めてのことに顔が赤くなるが口の中は大きなアイスに悲鳴をあげていた。

冷たい、と怒った顔で古橋を見るとケーキを食べていた。
そのケーキも食べちゃうぞ、と言うとどうぞ、と言われたので残りの半分くらいをガッとフォークで刺して口に入れた。

「よく食べる口だな」

名前のせいで食べ終わった古橋は頬杖をつき時折紅茶を飲んでいた。
暇そうなので話しかける。

「今日は和な日なの?」

名前が自分のケーキを口に運びながら聞いた。

「いや、たまたまだ」

「へえ、古橋くんなんとなく和なイメージだよね」

「自分ではわからない」

「そっか」

と、どうでもいい話をしていた。

というか緑色なんだから抹茶とすぐわかるだろう、思い出したように古橋が言うと、
「あれは?ピスタチオ。」
という答えが来たのでそんな味もあるのかと感心した。

(150313)
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