小説 | ナノ

▼ よろしくない

注意*中学3年⇒今吉、ヒロイン 2年⇒花宮

花宮にはどうしても許せない2人がいた。

元来、花宮は自分の前を歩く人間が嫌いである。
立場も、歳も、頭も。
だいたいすべてのことが上位、いや細かく言うと上の上にいた。

幼いときには自分が大人すぎて怖がられた。
友人も出来なかった。
まあ、幼稚園小学生のときの話だが。

「早く追いついてね」

「待っとるで」

「ッ…クソッ」

いつものことである。

なぜだ。なぜこの2人には勝てないのだ。
ムカつく。
お得意のいい子は見抜かれ内側の真っ黒な部分を暴かれた。
そのとき2人はこう言ったのだ。

「花宮くんはまだ甘いね」

「せやなあ、成長が楽しみやわ」

なにがだ。ふざけるな。
だがそのときの名前の顔は妖艶だった。綺麗だった。
そして思ったのだ。
俺のものにしたい、と。

名前の近くにはいつも今吉がいた。
付き合っているのかと思ったが、そうではないらしい。
あの狐のような顔に寒気がする。
名前とは違い今吉のことは初めて見たときから嫌いだった。
なにか近寄ってはいけないものがあった。

…そんなのは言い訳で、怖かった。
なんでも知っているようだった。俺よりも。
はるかにものを知っているようだった
初めて闘う前に負けを想像した。

だが本当に怖いのは名前である。
純粋で真っ白に見えるのに簡単に今吉や花宮の思考を理解し、もっと良いものを提案するのだ。
恐ろしい人、そんな印象を受けたが嫌いにはなれなかった。
むしろ好きだ。

「名前さん」

花宮が少し前を歩く名前の背中を呼ぶと振り返った。

「なに?」

名前がにっこり笑うので、花宮はにやりと笑った。

「この世で1番美しいものってなんですか?」

花宮がいい子ちゃんのときのきれいな笑みに変えて、子供のような質問をする。
いい子ちゃんは通用しないが、笑顔は最高と言われたからこの笑い方をするのだ。

「…その人の気持ちや観点によって違うかな」

名前がわからないというようすで答えた。
なぜそんなことを聞くのか、名前はわからなかった。

「花宮くんが思う世界で1番美しいものってなに?」

名前が首をかしげて聞いた。

「さあ?俺は美しいとか興味ないんで」

「へえ」

人に聞いたのに自分は興味ないとはどういうことだ、名前は眉をひそめた。
なんだかムカついたが花宮を見ると美しいと思った。
端正な顔立ちに年相応ではない色気。
ほう、と見とれてしまう。

そんな名前は花宮の頬に手を添えて妖しく笑う。
ゆっくり近づきキスをすると、花宮が目を見開いた。

「花宮くん」

「名前さ、ん」

「自分の手にあると思ってる今吉から全部掻っ攫って」

花宮が眉間にしわを寄せて名前を見た。

「奪われたいんですか」

「花宮くんなら」

名前は花宮が好きだった。
それを今吉が気づきいつも名前の邪魔をした。
目線や少しの表情の変化で読み取られたのだ。
恋は盲目、と言うが名前から判断力や注意力を奪った。
いつも花宮を見ていれば今吉にはすぐに気づかれるだろうし、他の人にも気づかれるだろう。
素早く気づき、おもちゃを見つけたかのように今吉は名前を、そして花宮も手のひらで転がした。
自分の手のひらで転がるのを面白がっている今吉に名前は勝ちたかった。

「早く、奪って」

その言葉を聞き花宮は名前の手を引き自分に引き寄せ深く口付けた。

「後悔しますよ」

花宮は悪い顔をして笑う。

「2人であの狐さんを退治しようよ、」

名前は花宮を見上げ妖しく笑った。
まるでその 狐さん と同じような笑みだった。
だがそれで名前と一緒にいられるなら。

欲しいものは、ただひとつだった。

(150322)
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