小説 | ナノ

▼ 甘くてごめんね

「真くん、物理やろ」

「じゃあ教科書開け」

イライラする
甘ったるいから少し離れてほしい
お前の服なのか髪なのかはたまた体臭なのか知らねえが、甘ったるい
頭がガンガンする
お前しか考えられなくなりそうだ
勉強が進まない

「近けえ、離れろ」

「、ごめん」

ああ、そうじゃねえ
嫌いとかじゃねえんだ
お前に酔いそうなんだよ
こんなこと本人に言ったらどうせ「まこちゃん可愛すぎ!」とか言うんだろ
だったら冷たく思われたままで良い
つかまこちゃんって呼ぶなよ

「名前お前さ、マニキュア好きとか言ってなかったか」

「うん、覚えててくれたの?」

目をきらきらさせるな
可愛いんだよバアカ
お前は俺の顔の筋肉を使わせる気か

「…たまたまな」

「そっか、でも嬉しい」

あー健気
健気すぎて涙出るな
あ、これ今吉さんのセリフか

「俺の母親が今ハマってて名前が良ければやるって」

「そうなの!?
真のお母さん優しいし面白いから是非お願いしたいな」

俺の母親と名前はなぜか仲が良い
俺の知らない間や俺を置いて買い物に行ったりお茶したり…度々名前をとられる
嫁と姑の仲が良すぎて息子が拗ねてるみたいだな
…俺は名前と結婚するつもりかよ

「じゃあそう言っておく」

「うん!ありがとう」

「…別に」

目の前のノートに目を通すと問題とはまったく違う解答を書いていた
いつこの問題を解いたのかすら覚えていない
大丈夫か俺

「真くん…ここわかんない」

「…どこ」

ふと教科書の上の名前の手が目に入った
マニキュアが好きだから手入れしてるのか形が良い

「力学的エネルギーの保存の法則」

「力学的エネルギーが保存されんだよ
以上」

「えええ」

なんか改めてよく見ると華奢だな
折れそう

「…んだよ」

「真くんが勉強見てやるって言ったんだよ?」

「ふはっ、教えるとは言ってねえけど?」

「屁理屈だよー」

そう言ってペン回しをする名前が可愛い
あーうぜえ
可愛すぎてうぜえ
俺がおかしくなる
その指食ってやろうか

「爪、綺麗だな」

「そう?」

名前が俺の目の前に爪を突き出す
綺麗な10本の爪と指が俺を指差す

「名前ちゃんビーム」

「は?」

「…ちょっと、今笑うところなんだけど」

今確かにビームをくらったように感じる
俺の心臓がおかしい
お前のせいで体が異常を訴えるんだよふざけんな

「ガキかよバアカ」

バアカ、バアカ
本当に名前は俺をバカにさせるのが得意だな

「そう言えば真くんいい匂いするね」

「はあ?お前の方が…っ!」

急に変なこと言うなよ
俺と同じこと考えてるのが嬉しいとか思っただろうが

「いっつも真くんからいい匂いがするんだよね
シャンプーかな?制服?」

「さあ?知らねえよ」

「なんか優しい匂いがするの」

悪童から優しい匂いってなんだよ
悪の要素が薄れるじゃねえか

「あのさあ、お前の方がいい匂いする」

「えっ、恥ずかしい!」

「お前のせいでくらくらする」

あーあ、お前のせいでお前にべた惚れな花宮真みたいになっちまった
悪童の名が泣く

「そんなに強い!?ご、ごめん」

「だから俺以外に近づくなよ」

「…え…」

チッ、鈍いやつだな

「…俺から離れんじゃねえよバアカ」

「なんて言うわけねえだろ、は?」

なにこいつ
そんなに信じらんねえのかよ
もう言わねえぞ

「ねえよ」

「え、…え?
まっまこっまこちゃんかわ、」

「チッ、まこちゃんって言うなっつってんだろ!」

…こいつ本当うざくて好き

(150423)
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