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▼ 変態じゃねーの

注意*テンションとノリが変

古橋の家で暇を持て余している。
床に寝たりわかりもしない社交ダンスをしよう、と言ってやってみるがわからず結局遠心力を利用して2人で目が回るまで回ったり。

「おいこら」

「なんだ」

名前が乱暴に呼びかけると古橋はいつもの読めない表情で名前の方を向いた。
自然と向かい合わせで立った。
名前が両腕を古橋の首を抱くと、古橋はがら空きの名前の腹に両手を添えた。

「お客様のウエストを測らせていただきますね」

「店員さんにしてはスキンシップが激しいと思います」

名前が睨んで言うと古橋も睨む。

「別に良いだろう」

「店員さん役終わるの早すぎ」

名前が文句を言うと古橋はおや、と言って名前の腹の肉をつまんだ。

「…腹に肉が、」

「やめて」

食い気味に言うと古橋は名前の腹から目に視線を移した。

「なんで」

「なんでも」

名前がいつもより強めに言うので古橋は静かに名前の前に服を差し出した。

「…」

「店員さん…なんですか」

「よし、これを着てみてくれ」

「What's this?」

「This is my uniform.」

「…そうですか」

「はい、そうです」

「変態ですかね?」

「お客様限定ですねー
こちら今大人気の商品ですー」

「棒読みじゃねーの」

名前が2人で読んでいるテニスの漫画の登場人物の口調を真似すると名前も古橋も笑った。

「じゃあなんて返したらいいんだ」

「『お前だけだ…』みたいな?」

名前の中で一番の低音を出して言うと古橋は固まった。
古橋が自分の喉に手をあててあーと低めの声を出すと急にフッと笑って名前に向き直った。

「名前はお前と言われるのが嫌いだろう」

「やだ覚えてたの?イケメン」

「名前が言ったことだろう」

「まあそうですけど嬉しいです」

「それは良かったですねでは着てください」

古橋はどさくさに紛れて頼んだ。
さりげなく話にユニフォームのことを入れれば名前が騙されると思ったのだろうか。
だがそれに引っかかるほど名前の頭の中はババロアではなかった。
以前原にババロアと言われて古橋が止めるまで喧嘩したのだ。

「話が飛びましたよ」

「飛ばしたのは名前だろう」

「ちぇっ」

「…現実に『ちぇっ』なんて言う人がいるんだな…」

「え、本気にしないで
ねえ待ってレギュラーに一斉送信しないでお願いします一生イジられるんですけど!」

「…」

ならば、と名前の鼻先に古橋のユニフォームを差し出した。
ちなみに洗って乾かしたばかりなので洗剤と太陽の香りがしていい匂いだ。
別に古橋が臭いとか言っているわけではない。
それをしぶしぶ受け取ると古橋はどこか嬉しそうだった。
なんなら満面の笑みだったのではないかというくらいはしゃいでいた。

「ご試着はあちらでお願いします」

「あら、意外と紳士」

「いつもの間違いだろう」

「痛いっ!」

古橋が少し怒って名前の耳をかじった。
名前はかじられた耳を片手で押さえもう片手にユニフォームを持って隣の部屋に入る。

…遅い。
脱いで着るだけだろう。

「…名前」

名前が遅いので古橋は隣の部屋のドアまで近づいた。
決して覗いてはいない。
ドアをノックしようと構えるとドアが開いた。

「はい、着てみましたよー」

両手を少し広げて先ほど言い合いをしていたところを見ようとすると古橋がかなり近いところにいて名前は驚いた。

「ノースリーブのワンピースみたいだな」

「身長が違うしもともとユニフォームが長いからね」

ほら、と裾を指で引っ張ると隠れていた太ももがチラついた。

目に毒だ。
あいつらの言っていたのはこれか…。

「…似合ってるな」

「…どこが?」

「すべてだが」

「あ、そうですか…真顔で言われると恥ずかしいんですけど」

古橋が真面目な顔をして言うので、名前が俯いて顔を赤くした。

「可愛いぞ」

「…聞いてた?」

その言葉を最後に古橋は名前を抱きしめて離さなかった。

(150415)
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