小説 | ナノ

▼ バカにしないでください

まず人間には心のよりどころっていうのが必要で。
それに頼りすぎるのもいけなくて。
ならば、とよりどころがないままも危険で。
面倒な人間をやるのが疲れるのは当たり前で。
その中で恋だの愛だの見つけるなんて難易度が高くて。
人間は大変なのだ。

「へえ、名前にしてはよく考えたね」

「…バカにしてるでしょ」

「?していないよ」

赤司がくすくす笑うので、名前はふくれっ面をする。

「征十郎さ、この間告白されてたよね」

「ふっ、急にどうした?
名前の心理状態の話は終わったのか?」

赤司は名前に対してよく笑う。

「確かに告白はされたが…わかるだろう?
お断りしたよ」

「ふーん?」

名前が不満そうに返事をすると、赤司は名前を見つめた。

「なんだい?」

「なんか征十郎って私のこと大好きだなって思って?」

名前が調子に乗って言うと、赤司は吹き出した。

「ああ、大好きだよ」

赤司が恥ずかしがりもせず自信満々に言ったので名前が恥ずかしくなった。

「な、な、征十郎…」

「別に良いだろう?
本当のことだよ」

悪びれもせずむしろ恥ずかしがる名前を不思議そうに見る赤司は楽しそうだった。

面白いやつだな

赤司が心中で思っているとなにか感じとったのか名前が近づいて来た。
名前が赤司に抱きついた。
赤司の少し低い体温が触れ合ったところから混じり合って心地いい。

「なんか征十郎かっこよすぎじゃない?」

「自分ではわからないな、そうか?」

「うん、悶えた」

名前がそう言うと赤司は首をかしげた。

「?悶えた、のか」

「うん、むずむずする」

名前が赤司を抱きしめたまくすぐると赤司は少し身をよじらせて笑った。
こちょこちょは効くようだ。
赤司が一つ咳払いをして話した。

「それは僕のせいではないだろう」

赤司が名前ににっこり笑って言うと名前は真剣な顔をして赤司のオッドアイを見つめた。

「征十郎のせい」

「なんだと」

冗談で答えると赤司も冗談で心底驚いた顔をした。
赤とオレンジの瞳が見開かれて宝石のようにきれいだ。
その顔が面白くて名前が笑うと、赤司も笑った。
赤司が名前の背中に手を回した。

「名前は温かいな」

「うん、暑い」

「まだ季節は寒いのに」

赤司が名前の肩に顔をうずめた。
そのまますうっと息を吸うので名前が赤司を押したが動かない。

「またバカにしたの?」

「していないよ
名前は被害妄想が得意なようだね」

「はいはい」

名前が適当に返事をすると赤司は名前の頬に触れた。
さらさらな赤司の手が名前の頬を滑りうなじに手を移動させ自分に近づけた。

「そんなところも好きだよ」

「どんなこくはく、」

チュ、と名前の動く唇に赤司のそれを重ねた。
どんどん深くなって恥ずかしくなる。
名前が赤司の肩を押して離れようとすると赤司はうなじに置いた手に力を入れて離さなかった。

「せいじゅ、ろ…」

「…ふふっ、なんだい」

「笑わないで」

顔を赤くした名前を見て赤司が笑うので名前が睨む。
だが赤司にはそんな攻撃は通用せずに流された。

「恋人らしいことをすると名前の反応が可愛いからつい」

「…」

「?怒ったか?」

恥ずかしくて静かな名前が珍しいのか赤司が名前の顔を覗きこんだ。
名前の顔はまだ赤かった。

「怒ってない」

「そう」

ぽんぽんと意味もなく赤司が名前の背中を叩くので名前から笑みがこぼれた。
赤司の目元が優しくてこの時間も優しい気がした。
赤司が目を閉じて言った。

「名前は初々しいね」

「征十郎はプレイボーイだね」

「…」

赤司の眉がピクリと動きスローモーションのようにゆっくり立ち上がると死の鬼ごっこが始まるのだった。

(150413)
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