小説 | ナノ

▼ 夜の長さ

パァンッ

古びた廃墟に銃声が響いた

終わった

やっと、ファミリー殲滅に成功した。
今回の任務は長かった。気づかれないように少しずつ少しずつファミリーに暗殺の毒をまわらせたからだ。

あー疲れた
もう無理、お風呂。眠い。お布団。ごはん。

そんな独り言を言いながらヴァリアーの城へ帰った。

ガッシャァアン
どこかで陶器が割れる音がした。

まだ誰か起きてるの?
音がする方へ歩くと、暖炉の前でソファに寝そべっているスクアーロがいた。

「名前じゃねえかあ」

スクアーロが名前の足音に気づき扉の方をちらりと見る。
氷と褐色の酒が入ったグラスを片手に、よお、と話しかけてきた。

「何してるの?」

扉付近に寄りかかって尋ねる。
自室に戻らないで1人でこんなところでくつろいでいるなんて珍しい。

「少し考えごとだあ」

「スクアーロにも悩みあるの」

そう聞けば、悪いかあ!と眉を吊り上げて叫ぶ。
何を考えているのかは露ほどもわからないが、それなら早めに退散しよう。

「もう戻るね」

そう言い廊下を向くと、
「早くクソボスのところに行ってやれよ」

独り言のような言葉に歩きながら手をひらひら振っておいた。

久しぶりに自室に戻った
カーテンを開けたまま任務に行ったようで、窓に深い夜が広がっている。星や月の明かりで部屋が照らされている。行く時と何も変わっていない。なぜか安心した。

うっすら光のあたる冷たい机に触れた。
ポタッポタッ
コートから血やホコリの混じった液体が机に溢れる。

「お風呂入らなきゃ…」

お風呂に入ることにした。
コンコン

「ボス、私です」

無言ということは入って良いのだろう
重いドアを開けた。

「おせえ」

「すみません、服が汚れていたので着替えました」

ふん、と興味なさげに鼻を鳴らした。

クイッと指を手前に動かし、名前を呼んだ。
XANXUSのそれに従い近くに行く。

「ボス、報告書をこちらに」

XANXUSのデスクの上に報告書を置いた。
それにちらりと視線を移すと、目を通さず名前の腕を自分の方に引っ張った。

「よくやった」

「っ、まだ報告書もご覧になっていらっしゃらないのに」

とっさにそんな言葉が出た。
耳元で囁かれ、頭が回らなくなって苦しまぎれに言ってしまったからだ。

「ああ?見なくてもわかる」

名前の言葉に少し不機嫌になった。
まずい、怒らせたか。

「ありがとうございます」

XANXUSの紅い瞳をジッと見つめると、腕を引っ張っていた手とは逆の手で名前の頬に手を添えた。

「…ボス」

「もう仕事は終わっただろ」

呼び方が違う、と目で訴えられる。
頬に添えられた手に自分のそれを重ね、XANXUSを見つめる。

「XANXUS…」

「…ああ」

見つめあったままXANXUSの唇に近づいた。
XANXUSはなにも言わない。

唇を重ねると頬にあった手を後頭部回された。
深くなる口付けに息が詰まる。

「んっ、ザンザ、ス」

「名前」

唇を離すと鋭い視線に射抜かれた。
なんですか、と聞くと名前の腰に手を回す。

「来い」

少ない言葉に、なんのことだと思ったがXANXUSに身を任せた。

(150312)
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