小説 | ナノ

▼ ぐうたらしようよ

劉は部屋の机に向かい本を読んでいた。
今日は名前と寮内デートだ。
各々の好きな本を読んだり、一緒にお昼を作ったりして1日を過ごしていた。

「ねえ、この本読んだ?」

名前が劉に後ろから抱きつき、先ほどまで読んでいた本を見せた。
名前が読んでいたのは少女マンガだ。

「読んでないアル」

「面白いよー」

ほらほら、と名前が表紙を劉の顔に近づけるので、劉は名前の手を掴んだ。

「…なんか嘘っぽいアル
なにか隠してる?」

「いえ、まったく」

「なんで今目そらした」

劉が少し振り向いて名前を見ると目が合う。
名前がにやにや笑うので、ため息を吐いた。
少女マンガだと言うのに、表紙のタッチがなんだか怖い。
名前の手から受け取りぱらぱらとページをめくると、女が男にストーカーされているではないか。

「…」

「男の執念のはなしー」

名前が劉の肩に顎を乗せて話す。

「シュウネン?1周年の周年アルか?」

「なんか…ん?、いたっ」

名前がそう言って劉から離れ、目をこすり出した。

「なにしてるアル」

「目が痛い」

「こするな…白目が尋常じゃないくらい赤いアル」

劉がイスから立ち上がり名前の腕を掴んでこすっていた方の目を見ると、真っ赤に充血していた。

「えっ、どれどれ!?」

「…なんでちょっと嬉しそう…」

劉が再びため息を吐き、机の上から目薬を取って壁の鏡を見る名前の後ろに立つ。
真っ赤な目からぼろぼろと涙がこぼれて痛そうだ。

「うぎゃああ赤い!
涙が止まらないっ」

「ほら、目薬で目に栄養を与えるアル」

「ありがとうアル」

「真似するなアル」

「福井先輩に騙されてるのわかんないの?」

「もう慣れてなかなか抜けないアル…ほらまた」

「じゃあアルをみんなに広めれば?」

「めんどくさいアル」

「紫原くんかな?」

「違うアル
劉偉アル」

「知ってるけど」

劉と名前が揃うと、いつもこんなくだらない会話をする。
それが2人にとって普通で、楽しくて、笑いが絶えない。

「ねえ、肉まんが食べたい」

鏡の前で立ったまま話していると、名前が劉の手を握る。

「肉まん?それならコンビニに行けばいいアル」

「えっ、一緒に行ってくれないの」

名前が大げさに驚いた顔をして劉を見上げる。
首が痛い。

「えぇ…外出るの面倒アル」

「えええ…」

名前が口を尖らせて不満そうな顔をすると、名前はその流れで変顔をしだす。
ときどき変な声を出して、劉を笑わせようとするのだ。

「ぶさいくアル」

「はー?
彼女に酷いこと言う中国人がいるわ
アメリカ人っぽい人のところ行こうっと」

名前はべえっと舌を出して手を離すとドアに向かって歩いた。
やれやれと言った顔で劉が名前の背中を見つめる。

「なにしてるアル
行くんじゃないの?」

「…追ってこないの」

「さあね」

ゆっくり振り返る名前が面白い。
劉がくすくすと笑うと名前はムッとした顔で劉に近づいた。
壁に寄りかかる劉の両腕を掴み自分の肩に乗せてドアまで運ぼうとする。
だが名前より重くて身長もあるので、まったくその場から動くことはない。
動かすのを諦めたのか、名前は腕を肩に乗せたまま劉の方を向いた。

「ねえー早く行こうよー
にーくーまーんー」

「うるさいアル
さっきチャーハン作ってやったアル」

「それ9割くらい劉偉サンが食べたと思いまーす」

名前が劉にそう言うと劉は心当たりがあるのか、目をそらした。

「…覚えてないアル」

「食べないなら寄越すアルとか言って休憩中の名前チャンから奪いましたー」

「…あー、覚えてないアル」

名前の肩にある両腕に交互に力を入れると、名前がそれに合わせて揺れた。

「あ、そう言えばこの間肉まんを買い溜めしたアル
残ってるかも」

「えっ、食べる!」

「いや、食べるのはワタシアル」

「あんなに食べたのに!」

「体が大きいと燃費悪いアル」

「お腹すいたよアルアル〜」

「アルアルじゃなくて劉アル」

「知ってるってば」

名前がジャンプして劉に抱きついた。
足を絡めて離れない。

「名前、キッチン行くから離れろアル」

「連れてって」

「はあ…わかったアル」

その後ロボットのように歩く劉を見たとか見ていないとか。

(150405)
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