小説 | ナノ

▼ 彼なりの

「原のハゲ」

「は?名前どこ見てんの?
フサフサじゃん
フサフサすぎて前見えないくらいだから」

スマホを操作する原はイライラしたのか反論してきた。

「つーか、名前のがハゲでしょ
気づいてないの?てっぺん結構ヤバいよ?」

「私だってめっちゃ生えてるし
原はカツラ感ビンビン伝わってくるよ
前髪とか特に」

「はああ?
あんじゃん、ここにフツーに髪あんじゃん」

いつも喧嘩まがいのことをしていた。

なぜこんな関係になったのか、きっかけとか全然覚えていない。
強いて言えば、原が話しかけてきて仲良く?なっていって…こうなったんだと思う。

「あのさ〜マジホントウザい」

「こっちもそう思ってるよ」

原にべー、と舌を出せば口元をひくひくさせていた。
わー怒ってるー。

「じゃあ話しかけんなよ」

「は?原が話しかけてくるから答えてるだけじゃん
自意識過剰やめてもらえます?」

「原チャンブチギレしそ〜」

「そうなんだ〜」

お互いにため息を吐くと席を立った。
近くにいない方がいい。
面倒だ。

廊下を歩いていると後ろから知らない生徒が話しかけてきた。
なにやら話があるとかで、別に用もないからついて行く。

来たのは屋上だった。

「なに?」

「俺、名字さんのこと前から気になってて…好きです」

「ごめんなさい」

間髪入れずに断った。
私には好きな人がいるし…てかこの人誰だ?

「なんで?」

「え?」

「なんで付き合ってくれないの?
俺の方が原より喜ばせられるよ」

なんでここで原の名前を出すんだろう
というよりこの人なんで私の好きな人知ってるの

「俺さ、毎日名字さんが心配で…家まで送ってたじゃん」

「は?」

「だから、後ろから見送ってたじゃん」

「…ごめんなさい、じゃ」

怖い
気づかなかった
毎日ストーカーされてたとかありえない

私は走った。
屋上の入り口を出て、階段を思いっきり駆け下りて。
早く、早く、誰か…!

さっきの人は後ろにいる。
追いかけてきている。
男だから歩幅とかで速いしすぐに追いつかれそう。

「名前、こっち」

「っ原!?」

目の前に原が現れて、原の後ろに隠れるように立つ。
さっきの人は原の数メートル先で止まった。

「原…邪魔すんなよ」

「別にどうでもいいけどさ〜
好きなコ怖がらせたら意味なくね?」

そう言うと原は静かに右足を振り上げた。

「なっ」

「早く消えろよ」

頭上から右足を戸惑いなく下ろす。

かかと落とし…

生で見るの初めて、と感心しているといつの間にか原と2人だった。

ギュ

原にがっちりと抱きしめられた。
肩が重い。
そんなことより心臓がうるさい。
なんでここにいたの。助けてくれたの。

「はあ…もう超ビビった
お前どっかいなくなんなよ」

「原…」

「お前ホント俺をイライラさせるね」

「はあ?」

なにそれ。
なら思わせぶりなことしないでよ。
…嬉しかったのに。

「あーもう、好き」

「え…」

「すーきー」

名前はー?
なんて言うから、原に抱きついた。

「すき、」

「本当さ〜鈍いよね
毎日話しかけてやってんのにさ」

そう言う原の言葉に疑問が生まれた。

「ケンカふっかけてきてたよね?」

「さあ?」

「え」と私が言うと「なに?」と原が答えた。
なんかバカみたいだねって廊下でお互いに笑った。

(150326)
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