小説 | ナノ

▼ バカども

部室に行くとレギュラーが机を囲むように椅子に座っていた。
なんだろう、この人たちが部室に集まると占いの館のような雰囲気が漂っている気がする。

「あ、皆さんお揃いで」

「さっさと座れ」

不機嫌そうに花宮が顎をしゃくり座れ、と指示する。

見ました?めっちゃ怖いっす。

「早く始めよう、花宮」

古橋が話を切り出すと、ああ、と花宮が切り出した。

「映画鑑賞会だ」

ん?そんなの家でしろよ。
各々で楽しめよ。

なんて言えないので無言で次の言葉を待った。

「面白そうな映画があってな
借りてきた」

古橋の言葉に瀬戸はへえ、と興味を示した。

「俺は古橋が面白そうって思ったものに興味あるわ
どんなやつ?」

「いや、まだ見ていないからわからない」

「え!?全員初見かよ!」

「じゃあ早く観よ〜」

山崎が驚くのをよそに原は古橋の手からDVDをひったくりセットした。

「で、名前は頼まれたもの買ってきたか?」

「もちろん
みんなどうぞー」

花宮に命令されて買ってきた飲み物とお菓子でーす。
と言いながら名前は全員に配り、終えるとちょうど映画が始まった。

「くそっ」

カロルは隠しもせず悪態をついた

「カロル…私、輝いていた…?」

名前はふんわりとした笑みを浮かべカロルに手をのばした。

名前はもうすぐ死ぬ。

はあはあと肩を上下させまるで息があがっているような呼吸を繰り返す名前をカロルはもう見ていられなかった。

「ああ、殺してる時すげえ輝いてたぜえ
オレの目にはお前はいつも綺麗で輝いてた
だから逝くんじゃねえよ」

「わ、カロルに褒められたー
嬉しい、」

ふふふ、と笑いが溢れる。

「でもね、カロル、」

「なんだあ?」

でも、もっと早く言ってよね

死なないでくれと切に願った。
だがそれは叶わない。
どんなに正しい人間も、悪い人間も、偉い人間も、卑しい人間も、死からは逃れられない。
死は毎日自分の後ろをついてくるのだ。
それが少しずつ、毎日毎日近づいてくる。
そして最期に言うのだ。

「こんにちは」

と。

死は時よりフライングをしてくる。
あんなに後ろにいるから大丈夫、まだまだ死なない、そう思っていると急に真後ろにいる。

「早く君に会いたくて」

そう言うのだ。
迷惑だ。
好きな人が近づいてくれるなら嬉しい。
自分も早く会いたかったよ、そう言える。

「名前…?おい、名前っ!!!」

俺たちは死が近かった。
毎日すぐ後ろにいた。

名前が死んだ。

涙は出なかった。
涙なんて、暗殺者になった瞬間捨てた。

「なーなー、任務だってよ」

「ああ?…わかってる」

談話室でゆっくりしていると妨害してくる者がいた。
ベスに言われカロルは立ち上がった。

あれから何年が経ったのだろう。
名前がいなくなってから、今まで大量にしていた仕事にさらに集中していた。

お前を愛している。
決して忘れない。
だから、俺がそちらに逝ったら……

「…」

「…なんかさ〜」

「なんだよ」

原の気まずそうな言い方に花宮がチラリと原を見る。

「ヒロインの名前が名前だったな」

「古橋オブラートに包もうぜ!?
ヒロイン死んじゃったじゃん!
で、同じ名前の名前ここにいるじゃん!」

「ザキが一番傷つけてるよ」

瀬戸がつっこむと山崎は名前を見た。

「…グスッ、カロルうう!!!」

「名前うるさいぞ」

「古橋、こいつ聞こえてないみたい」

「名前感動してんのかよ」

ふはっ、と花宮が笑った。

「で、もう一つあるんだがいいか」

「古橋どうした?」

瀬戸がまた古橋のアンテナに引っかかったものに興味を持った。
そんな古橋はカバンからプリントを出す。

「文化祭で今の映画を俺たちでやらないか」

「!?」

一同が古橋に驚きの目を向けた。
そんな中花宮は笑っていた。

「俺と古橋は文化祭の実行委員なんだよ
ステージでやる出し物があと二つ三つ欲しいってなったから俺たちでやろうかと思ってな」

「なんで!?花宮が一番やりたくないって言いそうなのに…!」

名前が花宮を指差して主張した。

「花宮なんか裏あるでしょ」

瀬戸がため息を吐きながら聞くと、原も山崎もうんうんと頷いた。
そしてその質問には古橋が答えた。

「実はステージの出し物で人気投票するんだ
1位になると景品が出てな…」

「その景品ってのはなんだよ?」

山崎が聞くと名前が声をあげる。

「チョコレートとか?」

「はあ?そんなピンポイントなわけねえだろ
温泉だ」

お ん せ ん ?

古橋と花宮以外は頭にクエスチョンマークを浮かべた。

「なんで景品が温泉なワケ?
普通ジュースとかじゃん?」

「原…テメェは幼稚園のお遊戯会と勘違いしてねえか?」

「あーわかった
部活単位とか一つの出し物に人数が多いんだろ
だから温泉の方が一発で済む」

「一発…まあそうだな
遊園地とかアトラクション系と迷ったんだがな」

瀬戸…、と呆れながら古橋がそう言うと山崎が「ん?」と疑問を投げかけた。

「?古橋たちが決めたのか?」

「そうだぜ」

花宮がフフン、と得意げに話すと原が花宮をバカにした。

「やだ花宮おじいちゃん〜」

「原くんそういうこと言うと花宮おじいちゃんに殺されるよ」

名前が原と一緒になってそう言うと花宮は笑った。

「お前らは留守番だから」

「「え!?」」

「じゃあさっそく配役を決めよう
名前役は名前
カロル役は……誰が良い?」

花宮が原と名前をバカにし始めると古橋が急に仕切り始めたので場は混乱したのだった。

(150325)
prev / next
[ Back to top ]


人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -