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▼ 君が好きです

「ふくい〜」

ぐったりしたようすで名前が福井に抱きついた。

「どうした、てか重い」

「ひどい」

んで?と福井が聞いた。

「あつしくんにバカにされたんだけど」

「へえ〜そうなんだ〜」

福井は名前の口調に合わせて言った。
面倒なことも楽しいこともおふざけも、なんでも付き合ってくれる。
名前はそんな福井が大好きだ。

「福井クン人の話聞いてないねー」

「聞いてないよー」

なんでー?と言いながら福井の顔を覗き込む。

「んー知らねー」

「彼女チャンかわいそう〜」

自分で言うな、と福井がデコピンすると名前が痛みに悶え始めた。

ふるふると震えて静かになったのを心配して顔を覗き込むと、涙目になる名前が福井を見つめた。

ドサッと音がして、名前が福井の手によってベッドに沈む。
突然のことに名前が目を見開く。
その間に福井が名前の片方の足を自分の足で挟み動けないようにした。

「つかなんで俺は福井なのにあいつはあつしなわけ?
彼氏差し置いて後輩を名前呼びかよ」

「ふくい、」

「だーから…」

そこで切ると福井は名前の肩をガシッと掴み、健介、と言った。

「…健介」

「よく出来たなー」

わしわしと名前の頭を撫でて笑う福井につられて笑う。

「すき」

「…急になんだよ」

「気持ちが溢れたー」

あはは、と名前は笑う。

「叶わねえな、」

「?」

名前が無言で福井を見つめると福井は自嘲したように笑った。

「好きだ」

「健介、」

「…好きだ」

ぼーっとしてどこかうなされたように呟く福井の背中に名前が手を回す。
福井が吸い込まれるように名前の唇に触れた。

チュ、と音がして唇を離しお互い見つめ合うとどちらともなく笑った。

「まだ足りねえ」

そう福井が言い終わると再びキスをする。
名前が背中に回した手に力を入れると福井が深く口付けた。

「ね、健介」

「なんだ?」

ねえねえ、と子供のように問いかける名前に福井がきょとんとした顔で答えた。

「ずっと一緒にいようね」

名前は優しく笑って言った。
福井も笑みがこぼれた。

「そうだな」

(150320)
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