小説 | ナノ

▼ 少し変わった世界

火神の部屋
放課後、部活が終わり2人で火神の家に帰っていた。

家に着き、火神は自分の部屋に着替えに行った。

相変わらずシンプルな部屋に住んでいる。
でもこれくらいの方が落ち着くのだろう。
名前は自分の部屋よりゆったりできる気がした。

火神が部屋着に着替え隣の部屋から出てきた。

「今お茶出すな」

そう言い火神がキッチンへ向かいお茶を持って来てくれた。
ありがとう、と言い一口飲むとほっとした。

「あのな、今日は頼みがあって…」

なんだろう、勉強でもするのだろうか?
名前はまっすぐ火神を見つめた。

「どうしたの?」

「これ、着てくれねえか?」

…ん?どれ?

「な?頼むっ!1回だけでいいから!」

「いや、だから!押し付けるなっ!」


誰だよ、火神くんて料理出来るしパパになったらイクメンそう〜とか言ったの
この人料理が出来る女子力高い系男子なんかじゃありません
変態です。変態系男子です。

だって男装してほしいだよ?なんで彼氏の前で男装するわけ?
裸で彼氏のワイシャツ着ちゃって、「これおっきいよお」とかならまだわかるよ?
見えそうで見えない萌え袖エロスはあはあとか、そのままいただきますだったら私も頬赤くして「っもう!」とか言うかもね?でもね?男装だよ?なに?どこに萌えるの?友達になりたいの?「名前!一緒にバスケしようぜっ!だむだむ」なの?

「いや名前落ち着けって!
そうじゃねーんだよ」

「落ち着いてるよ?大我こそ落ち着いて枝分かれしてる眉毛片っぽ取ったら?」

「これは生まれつきだっつーの!」

火神はどうやら名前に男装をしてもらいたいらしい。

…理由を言いたまえ理由を。

そう名前が思ったのが通じたのか、火神が口を開いた。

「その…俺もしかしらいろんな名前が見たいのかもしんねえ
名前の表情がころころ変わるところが好きっつーか…わくわくしたり恥ずかしがったり笑ったりする顔見たくて、なんかねーかなあって思いついた」

俺の服着るだけですぐ出来るから良いだろ?
と火神が言った。

「ん…?それ男装なのかな?」

「?違うのか?」

男装って多分カツラとかかぶったりするんじゃないかな?

んんん?と名前が首をかしげた。

なんかよくわからなくなってきたなあ。
でもさっきの大我が可愛かったから着てやろうではないか。

名前は火神が持っている制服を取った。

「?着るのか?」

うん、と名前は頷いた。

「大我が可愛いからしょうがなく着てあげる〜」

「は、可愛い?どこが」

可愛いという言葉に機嫌を悪くしたのか声が低くなる。

そんな火神にぎゅうう、と抱きつく。

「着るから変わりにメイドさんやってね」

「!?」

今度私の家に来たときね、にっこり笑って火神を見ると引きつった顔をしていた。

「名前それはマジ勘弁…」

「えー」

「私も大我のいろんな表情見たいな」

そう言って火神の部屋に着替えに行った。

バタン

「〜っ反則だろ」

まさか自分同じ言葉を言われるとは。

火神はお茶をグビッと一気飲みして名前を待った。

「大我ー
これ大きすぎて着た意味ないかも」

そう言いながらリビングに歩いてきた名前はまさしく「服に着られている」状態だった。

それを見た火神はふるふると肩を震わせ俯いていた。

「おーい」

「ぶはっ
服に着られてるみたいで可愛いじゃん」

サイズ合ってたら似合うかもな、と言った。

「笑わないでよね
着せたの大我だし。てか動きづらい」

「あーこっち来い」

片手をおいでおいでと動かす。

火神の座っているソファに名前も座ると手を覆う袖を折ってくれた。

両手が終わると腕を引かれ抱きしめられた。

「さんきゅ」

名前の肩に顔をうずめる火神が愛おしく感じ、名前も火神を抱きしめた。

(150307)
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