小説 | ナノ

▼ 花のような優しさ

名前の部屋が見てみたいんじゃが、なんて話しながら帰っていると「今日来る?」と言われた。
そんな軽く男を自分の部屋に誘って大丈夫なんか。
仮にも俺は彼氏なんじゃ、少しは恥ずかしがりんしゃい。
それにしても名前の家に行くのは初めてで正直緊張するぜよ。
俺は大丈夫なんじゃろうか。

「そんで…ここがお前さんの家か」

「そうです」

「結構…デカいんじゃな」

一般的な家庭よりデカいと思う。
そう言おうかと思ったがやっぱやめとく。
名前はそういうのどうでも良さそうじゃしな。

「そう?」

名前は俺の言葉を適当に流して鍵を開ける。
誰もいないんか。

「どうぞー」

「お邪魔しま……なんか今平安っぽい眉の奴おらんかったか」

「?わかんない」

いや絶対いたナリ。
なんか雅な雰囲気の男が優雅にコーヒー持って歩いてたじゃろ。

名前の部屋に入って荷物を置いとると飲み物を取ってくると名前がリビングに行く。
開けっぱなしのドアを閉めようと近づくとリビングから声が聞こえた。

「あれ、お兄ちゃん帰ってたんだ」

「(お兄ちゃん…?名前には兄がいるんか)」

しばらく聞いとると「はあ?」と低い声が聞こえる。
…名前のお兄ちゃん怖そうじゃ。

ぺたぺたと足音が近づくので顔だけ廊下に出して名前を待った。

「あ、座ってて良いのに」

「わざわざありがとさん、持つぜよ」

「ありがとう」

ひょいと片手で名前の手からトレーを奪ってもう片手で名前の手を握る。
名前も握り返してくれるし…あー俺は幸せ者じゃな。

「なんかお兄ちゃんいた」

「へえ、名前に兄がいるとは初耳じゃ」

聞こえとったけどな。

「え、言ってなかったかな…ごめんね」

「気にしなさんな」

うん、と名前の声がすると沈黙が流れる。
名前は部屋は可愛い。
いや、名前も可愛いが部屋がすごく…ラブリーっちゅうかまさしく女の部屋じゃな。

「なにしようか、この部屋勉強道具くらいしかないんだよね」

そう言って自分の部屋をぐるりと見渡す名前の首筋が色っぽい。
俺の理性は大丈夫なんか…?

「なにもせんでも名前といられたらそれで」

「恥ずかしいなあ」

でも嬉しいんじゃろ?わかっとる。
名前のことは好きじゃからだいたいわかる。
だって愛があればなんでも出来るじゃろ?

「そうだ、お兄ちゃんに紹介していい?」

「え、…ああ、俺も挨拶しておきたいぜよ」

「じゃあこっち」

これ大丈夫なんか?「お前にはやらん」とか言われんか?
どんな奴かはわからんが突然殴られたりしそうじゃな…。

「ちょっと待ってて」

「ピヨッ」

あー緊張してきた。
雅治くんって見た目がチャラいから歳上には怒られるのがお決まりじゃ。
だから真田にも怒られるんかの。
真田って実は30代くらいじゃろ?

「入って良いって」

「じゃあ、失礼するぜよ…」

リビングも広いんじゃな…。
テレビもデカいとか金持ちなんか。

「この人が彼氏」

待って名前説明適当すぎじゃ。
お兄さんも困っとるじゃろ?なあ、お兄さん…いや、さっきの麻呂眉なんじゃけど。
なんかすごく睨まれとる気がするんじゃけど。
怖いんじゃけど。

「(こ、ここは爽やか雅治を見せて好感度アップぜよ)」

「初めまして、仁王雅治です」

「…こんにちは」

は?なんじゃコイツ。
かなりの爽やかさだったと思うんじゃがなあ…なんでそんなに冷たいんじゃ?
ツンデレなんか?
俺に惚れちゃう〜、とかそういう感じかのう。
ああ、
睨んどるんは照れ隠しじゃな?

「えっと…お兄ちゃんはね、いつも勉強とか見てくれて優しいんだよ」

名前、お前さんのお兄ちゃんは多分俺に惚れたぜよ。
必死に場を盛り上げようとせんでも俺は大丈夫じゃ。
あとお兄ちゃんも多分1人で盛り上がっとるから大丈夫じゃ。

「お兄さん、会えて嬉しいぜよ」

「ぜよ…?あ、ああ、僕も嬉しいですよ」

…なんかこの笑顔嘘くさいナリ。
絶対猫かぶっとるじゃろ。
さっきの「はあ?」の声と全然違うしお兄ちゃんなんか隠しとるな。

「名前、もう行かんか」

「うん
お兄ちゃん、じゃあ戻るね」

「ああ」

リビングのドアを名前が閉めると自然とため息が出た。
なんなんじゃあのお兄ちゃん、怖いしガチホモなんか…。

「お兄ちゃんなんか怖かった
ごめんね、不機嫌だったときに行っちゃったかも」

「別に大丈夫じゃ
それより…お前さんのお兄ちゃん、その…ホモだったりするんか?」

「…?違うよ?」

えっ、雅治くんびっくり。

「それはほんとなんか…家族に知られたくないから嘘ついてるとかないんか」

「んー?ないよ」

「そうか」

俺の勘違いじゃったんか、別にどうでもええんじゃけど。
…じゃあ睨んでたのはただ単に俺を嫌ってたんか。

「名前…俺お兄ちゃんに嫌われた…」

「え、なんで?」

ぎゅうっと名前を抱きしめて呟くとぽんぽんと背中を叩いてくれる。
俺の体重でほとんど潰れそうなのにそこまでしてくれるところが可愛いぜよ。

「名前…」

「なに?」

「雅治くんは将来が怖いナリ…」

舅にいびられる確率を参謀に出してもらうしかなさそうじゃ…。

「えっと…じゃあ守ってあげるね?」

「もう名前大好きじゃ」

名前が可愛いから雅治くんがお兄ちゃんから奪ってやるぜよ。

(150516)
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