小説 | ナノ

▼ くぎって、世界をこえてみせて

注意*ヒロインが悪い子ですがそれを推奨しているわけではありません

「じゃあ蓮ちゃん、また遊ぼうね」

「ええ、機会があれば」

そう言って"蓮ちゃん"は汚いおじさんから離れる
私の名前は蓮ちゃん
源氏名だ
汚いおじさんだとか、心中でなんと思おうがバレなきゃ良いのだ
バレずにお金が手に入れば、

「おい、」

あーまたかな
こういう場面を見てこの子は安全とか思ってやろうって考える人もいるから
またそのお誘い?
もうだるいんだけど…でもお金欲しいしな…
ていうか「おい」って態度悪すぎ
やらせてもらえるんだから下手に出ろよ

「っ、」

振り返ると見覚えのある男がいた
おかしい、まずい、いや待って、普通の男よりたちが悪い
なんでここにいるの
だってここは東京で、私たちは神奈川に住んでいるわけで、
バレないように東京でやっているわけで、

「や、なぎ…」

「…その顔は相当驚いたようだな」

涼しい顔でなに言ってるの
先生や警察に言うつもり?
それともあなたもやりたいの?

「なんで…ここにいるの」

頭が回転しすぎてそれしか言えない
あなたも男だから他の男と一緒なのか、それとも理性的なあなたは説教を始めるのか
私はどちらにせよ構わないし辞めるつもりはないから
で、答えは?

「お前をつけて来た」

「…は、なん、」

「なんで、とお前は言うが…学校でのお前の態度の変化にこの柳蓮二が気づかないとでも思ったか?」

なんで、なんで、なんで、
なんで私より切なそうな顔をするの
私はあなたに知られたくなかった
あなただって知りたくなかったでしょう?

「…変化に気づいてついて来た?
そんなに私のことが気になるわけ?
知ったとしてもどうにもならないのに?」

「ああ
…お前が心配だった」

は?柳ってこんなにまっすぐ自分の気持ちを言う人だっけ
もっと我慢してから爆発するタイプじゃないの?
でもね、私には優しさとか愛とかもういらないんだ
くだらないしバカみたいな理由でも、私は傷ついたの

「っ、うるっ、さい」

お願い、近づかないで
私はあなたが好きだから
嫌われたくない
ただのクラスメイトで良いから、ほんの少し近づきたいだけなの

「離れて」

「っ名字、」

「話しかけないで」

「…もう目を合わせないで、と言うか?」

「っだから!」

視界が滲んできた
ただでさえ疲れてるのに頭の回転が速いあなたと話す元気もなければ騙す語彙力もない
ただあなたの言葉を聞くしかない
きっと弁解することも許されないのでしょう?

「大体の理由は検討がついている
家族だな?」

「…」

なにも誰にも言っていないのに私の態度だけで理解してしまうのね

「お前はどうしたいんだ」

「…」

さあ?どうもしたくない、面倒なの

「説教をされると思っている確率92%」

「…」

100%だよ
現にさっき説教されると思ったし

「さっきの男が"蓮ちゃん"と言っていたが、どこからとった?」

「そんなことどうでも良いでしょう」

「やはり俺か」

ついムキになって無視するのを忘れてしまった
少しの変化で気づいてしまうあなたにこれ以上のヒントはない
あーあ、やってしまった
気持ちもバレちゃったね

「俺の自惚れなのか?」

は?
私は何回「は?」って言えば良いの

「…なにが」

「お前が俺の名前から源氏名をとるのにはなんの意味もないのか?」

そんなこと聞かなくてもあなたならわかるでしょう
さっさと言えば良い
お前のような女はこちらから願い下げだと

「さあ?」

「嘘をつくな」

「だったら言えば良いじゃない!
どうせあなたの頭には答えが出来上がっているんでしょう!」

吐き捨てるように言えば同時に涙がぼろりと1粒、2粒溢れた
なぜ涙が出る?
そうだよ、私はあなたが…柳蓮二が好きだから

「お前は俺が好きなんだろう」

「っ…」

真剣な眼差しで言われても頷くことも首を左右に振ることもしなかった
推測で言うふりをしているくせに本心では確信している
あなたもそれなりに悪い人だと思うわ

「俺はお前が好きだが、この行為を辞めるなら付き合おう」

「…え…」

「好きな人が悲しむのを見たくはない」

思わずあなたを視界に入れるととても苦しそうな顔をしていた
バカね、あなたは頭が良いでしょう
それなら私に近づかないことがどれだけ賢いかわかるでしょう?

「私、は…」

「辞めないつもりなのだろう
それなら俺が代わりになる」

「い、や」

あなたにそんなことをさせたくない
あなたの隣を歩けるならそれで満足だから、もうしないから

「?俺では不満か」

「違う、あなたじゃ恥ずかしくて…ってなに言わせるつもり」

あなたの口車に乗せられて変なことを言うところだった
あなたは本当に悪い人ね

「フッ、恥じらうお前も可愛いだろうな」

「…は、」

「答えは決まったか?」

「さあ」

するとあなたの口からため息が漏れた
こっちの方がため息を吐きたいのだけれど

「…俺をとる確率を言った方が良いか」

「わ、わかったから!
…辞め、ます」

気まずくてそっぽを向いて言うとあなたの乾いた笑い声が聞こえた
決してバカにしたのではない優しい笑い声

「良い子だ」

頭にあなたの手が乗って疲れが涙に変わって溢れてきたみたい
あなたの顔が見えなくなるくらい涙が溢れた

「名前…好きだ」

ぎゅうって温かな体温に包まれても良いのか、なんて
あなたがやっと名前を呼んでくれた、なんて

「れんじ…すき、っ」

どうでも良いの

(150422)
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