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▼ 確率…%

注意*大学生、成人済み

合コンに来ていた。
しつこく誘われて仕方なく来たのだ。
友人はうるさく仕切ったり飲んだりしている。

合コンの埋め合わせで参加し、同じ埋め合わせで来た女と恋に落ちる。
ドラマにありがちなシチュエーションだ。
だが現実にそんなことが起こりうる確率は何%だろう。
いつかの参謀と呼ばれていた俺と似た髪型の先輩を思い出した。
彼ならそんな確率もすぐに出るのだろうか。
考えながら静かに飲んでいると、目の前の女性に話しかけられた。

「ねえ、日吉くんてモテるでしょ」

「いや、そんなことはない」

「うそ〜?謙遜してるでしょ〜」

正直疲れる。
語尾を伸ばしたりどうでもいい話をされるのが嫌いだ。
仲の良い者とどうでもいい話をするのは癒しになる。
だが、今日知り合った者とそこまでの話をするのは逆に疲れる。

というか、よく謙遜なんて言葉を知っているな、と感心した。

はあ、とため息を吐くと、斜め前に座る女性が視界に入った。

どうやら下戸のようだ。
お酒をちびちびのみ、水をその倍くらい口にしていた。

彼女を見ていると目があった。
驚いたのか、少し目を見開いてそのまま会釈してきた。
どうやら彼女もこういう場が苦手のようだ。
あらかた自分と同じような理由で連れて来られたのだろう。
そう考えると、妙に親近感が湧いた。

少し話しかけてみようか。

自分と同じ立場の人を見つけたら彼女も居心地が良くなるのではないか、そう思った。

「あの、こういう場所は初めてですか?」

「は、はい
人が足りないって言って半ば無理矢理…こういうのは苦手だしお酒も苦手で」

彼女は目の前のお皿に視線を落としながら言った。
大人しそうな人だ。

「俺と、一緒ですね」

「え…?あなたも?」

と言う彼女に改めて自己紹介した。
彼女は名前と言った。
女子大の3年生で文学系の学部で勉強しているらしい。
本をたくさん読むようで、話が弾んだ。

いつの間にか時間が過ぎ、合コンもお開きになった。
幹事の男がカラオケに行かないか、と言うと全員が賛成する。
そんな中、名前が俺の袖を引っ張り呼び止めた。

「日吉くん、行く?」

「俺は苦手だから遠慮しておく。
名前は?」

素直に行かないと答えれば名前も行かないと言った。

「だったら夜も遅いから送る」

「え、大丈夫だよ!」

両手をぶんぶんとふって否定する名前がなんだか可愛く見えた。
まるで小動物みたいだ。
こんなやつが夜道を1人で歩いていたら襲われるだろう、とふと思った。

「危ないだろ」

半ば強引になにで帰るんだ、と聞くと電車と言うので駅に向かって歩き出す。
名前が慌ててついてきた。

「…あ、ありがとう」

名前が隣に来るとそう言った。

「…別に」

なんだか急に恥ずかしくなってそっぽを向いた。

駅に着くと名前が乗る電車があと2、3分で来るらしかった。
もうここでお別れだな、と思い名前を見ると名前が口を開いた。

「日吉くんのおかげで楽しかった
ありがとう」

「いや、俺も…楽しかった」

そう言うと名前はにこにこ笑った。
…なんだこいつ、可愛いな。

「あのね、その…また会ってくれますか?」

「まあ、気が向いたら、な」

素っ気なく言うと名前がうん、と答えた。

「じゃあもう電車来るから行くね!
ばいばい」

「またな」

名前の笑顔につられて俺も笑みがこぼれた。
小走りで駅のホームを走る名前の背中が消えるまで見つめていた。

また会いたい、と思った。
友人には少し感謝しないといけないが秘密にしておこう。

(150319)
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