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▼ 出陣せよ

出陣せよ

注意*柳と日吉がゲーマー、恋愛要素なし

「柳さん」

「なんだ」

「言いにくいんですが、このゲームやってますよね?」

そう言って日吉は手に持っているPSPを柳に見せた。
PSPからは軽快な音が聞こえる。

「やっているが」

「やっぱり…
このサンボマスターって柳さんですよね」

カチカチとボタンと十字キーを押してサンボマスターというユーザーを見せる。
柳はそれを見ると日吉を静かに見つめた。

「それがどうかしたのか
お前はこの若獅子だろう?」

柳はバックから自分のPSPを取り出し、長い指でカチカチと操作すると日吉に画面を見せる。

「知ってて一緒にクエスト出たんですか…」

「ああ、面白いと思ってな」

げんなりする日吉とくすくす声を押し殺して笑う柳の下から声がする。

「2人とも、私の頭上で会話しないで」

名前が少し嫌味のように言うと柳と日吉は案外素直に謝った。

「ああ、すまない」

「悪い」

いいよ、と名前は言って続ける。

「それでサンボマスターさんと若獅子さんとクエストに出た女の子は私ですが」

名前がにやりと笑ってバックからPSPを取り出し柳と日吉に見せた。

「…そうなのか?お前強いんだな」

「ふむ、気づかなかった」

日吉は驚き、柳は感心する。
名前が2人とクエストに出たとき、一番強かったからだ。

「2人とも和装だったよね、だから私も着替えて来たじゃん」

「ああ、驚いた」

柳が思い出しながら頷くと日吉は興味津々に答える。

「合わせてくるなんてプロかと思った」

「プロ?」

名前が日吉の言葉に苦笑する。

「ほら、よくテレビとかでプロみたいな人いるだろ
ああいう人かと思ったんだよ」

「それは見てみたいものだな」

「柳さん見たことないんですか?見た方がいいですよ、勉強になります」

「ほう?」

この2人がゲームをするなんて最初は知らなかった。

ただ、何度か同じクエストに出るうちに柳と日吉なのではないか、そう思うようになったのだ。
柳、もといサンボマスターは敵の攻撃パターンや弱点をクエスト中かなり読んで攻撃をする。
誰でもすることだろうが、毎回攻撃がクリティカルヒットをするので驚きながらかなり頼ってしまうのだ。

「蓮二ってゲームでもデータマンなんだね」

くすくす笑う名前の言葉に日吉と柳も笑った。

「ああ、どうやら俺の性分らしい」

「柳さんらしくていいじゃないですか」

口元を抑えて笑う日吉を柳はうっすらと笑いながら見つめていた。
どうやら日吉が笑っているのが珍しいらしく少なからず驚いているようだった。
そもそも柳と日吉にそこまでの接点はなかった。
今日会ったのも、近くの本屋で目当ての本がなかったために日吉が少し遠出をしたおかげで会ったのだ。
偶然だった。

「日吉はいつも自分よりレベルが高いクエストに出ているな」

下剋上か?
顎に指を置き考えながら言う柳に日吉は頷いた。
どうやら彼も変わらない性分のようだ。

「そうです
自分より上の敵を倒すのが快感なんです」

「すぐ瀕死にならないの?」

名前が聞くとフッと鼻で笑われる。

「それをどう切り抜けるかが楽しいんだろ」

「それも面白そうだな」

柳は感心して日吉を見つめる。

「時に日吉、お前の欲しい本はこれではないか?」

柳が自分の近くにある本棚から1冊の本を取り出す。
淡いピンクの表紙は、本を取り出す柳も、「あっ」と声を上げる日吉からも想像がつかなかった。
しかしどうやら目当ての本らしい。

「柳さん…どうしてわかったんです」

「愚問だな」

「蓮二はデータマンだからね、蓮二に下剋上しようよ」

「どんな誘いだ」

名前が日吉の袖を引っ張り言うと日吉は呆れたように答えた。
すると名前は不満そうな顔をし、柳は笑った。

「下剋上、待っているぞ」

「柳さんまで…っ」

ふふふ、と笑うこの意外な繋がりをいつまでも続けと願ったのだった。

(1509XX)
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