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▼ よろしくしてくれ

注意*とても緩く異常性癖

「かーずーやー」

名前が原の背中をめがけて走って来る。
「どーん」と力の抜ける効果音とともに名前が後ろから原に抱きつく。
原は名前を受け止め自分の体を包む腕を優しく撫でた。

「なーにーよー」

「なんもないよん」

原が名前の真似をして答えると今度は名前が原の真似をする。
それが嬉しくて原は顔を綻ばせた。
原は名前のノリが好きなのだ。

「ないの」

「うん」

原が名前の手の甲にキスをすると名前が原の頭を撫でる。
一連の動作が互いを幸せにする。

「あ、キスマークついちゃった」

「うそっ?」

ばっ、と原から腕を引き離し見ると赤くなっている。
おまけに歯形もついて見るからに痛そうだ。

「ちょ、歯!」

「んー?出来が違うよん」

原はそう言うとわざとらしくニィッと歯を見せて笑う。

「なんで瀬戸くん?」

「なんでだろうね」

「これどうするの」

原の隠れた目に歯形のついた手を近づける。
原はガムを噛むだけでなにも言わない。

「おーい、一哉」

「そういえば名前さ、アブノーマルなことしてみたいって言ってたよね」

「うん?…ああ、人生一回しかないしやりたいことをやりたいなあって思ってね」

急にどうしたの?と聞いたがふふっと笑われなにも答えない。
原はミステリアスだ。
誰に対してもふわふわとした付き合いをするのを好む。
彼女の名前でさえ、原の本性や底はわからない。
べたべたした付き合いは嫌いだが、自分がべたべたするときは対応しろとでもいうような勝手な性格なのかもしれない。
または実はかなり優しく、ピュアでそんなところを隠すためにひらひらとかわすのかもしれない。
結局、原のことをわかる者なんていないのだ。

「俺もそう思う」

「へえ」

原の返事に名前は意外だと思った。
のらりくらりとして掴めない原の考えを少し知ることが出来た。
名前は少しの優越感に浸った。

「じゃあしよっか」

「なにを?」

「アブノーマルなこと〜?」

じりじりとゆっくり近づいてくる原から名前は逃げるように後退りをする。
なにをされるかわからない。
原なら犯罪に触れることだってさらりとやってしまいそうだと名前は思った。

「また今度にしようかな」

「遠慮しないでよ」

逃げているといつの間にか押し倒されてしまった。
にやにや笑い、噛んでいたガムを銀紙に包みゴミ箱に投げ捨てると原の口元は月のように弧を描いた。

「はい、目ん玉見開いて〜」

「い、いや」

「大丈夫大丈夫」

起き上がろうと肘で上半身を支えると再び押し倒される。
原はぴったりと密着して名前を至近距離から見つめた。
恥ずかしくて名前は目を閉じた。

「くるしい、おもい」

「食われたいの」

「ごめんなさい」

原が物騒なことを言うので食い気味に謝ると原は笑った。

「目、開いてよ」

原が低い声でそう言って名前の頭を両手で固定する。
低い声で言われると従うしかなかった。
強く閉じていたまぶたを少しだけ開けると、原はチャンスを逃さないかのようにべろり、とゆっくり眼球を舐めあげた。

「いっ、」

「いたい?」

「うん、っ」

舌が触れて反射的にまぶたを閉じようとするも、原の指がそれを許さない。
意図的な目の潤いに目が混乱している。

「かず、や」

「んー?」

目を舐めたことを詫びるように、原は目尻や閉じたまぶたにキスをした。
優しくてくすぐったい。
先ほどまでの強引さは嘘のような優しいキスに溶かされる。
目は痛いが原の優しさを感じた気がして許してしまいそうになった。

「全部食べたいんだけど」

「食べないで」

原がそんなことを言うので名前は冗談なのかと疑問に思った。
食べることなんて出来るはずがないのだ。
それこそ犯罪を犯すことになる。
それでも名前が原の冗談に真剣に答えるのは、原が冗談だと感じさせないからだ。
しかし同時に原であれば、と許してしまいそうになる。
口に入れてしまうほど愛してくれるのならそれでもいいと思うのだ。

「名前って甘そう」

「舐めてみれば?」

冗談で返すと原はぽかんと口を開けて名前を見る。
するとすぐににっこり笑って首筋に舌を這わせた。
ざらざらした舌が触れそうな触れないような距離で彷徨い、原の唾液が名前の首筋を濡らした。

「あまい」

「あまく、ないよ」

首筋から唇を離さないまま言うので、名前は原の柔らかな髪をくしゃりと掴んだ。

「名前の、ぜんぶがあまいの?」

「知らな、い」

「じゃあ調べないとね」

そう言って原は名前の服に手をかけゆっくりと脱がせた。

(150703)
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