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燃え盛る炎の周りを歩いて建物の正面まで出ると、たくさんのゾンビが倒れていた。
熱で溶けた体が異臭を放ち、6人を不快にさせる。

「…なに?」

名前がふと建物の入り口を見ると、奥でなにかがゆらゆらとこちらに近づいてくる。
思わず立ち止まってまじまじと見つめるが、巨大な黒いナニカということしかわからない。

「名前?どうかしたのか?」

一番近くにいた山崎が建物の入り口を見て立ち止まる名前に話しかけた。
その声に気づいた残りのメンバーも名前を見た。

「なにか、いる」

「なにかって…まずいね、アレ」

瀬戸は巨大な黒いナニカがなんなのかわかったようだ。
顔を引きつらせながら目をそらした。

「健太郎、なんだ?」

瀬戸の反応が気になったのか、花宮が聞いた。
花宮はかなり前を歩いていたのでよく見えなかった。

「すっごいボディビルダーっているじゃん
画像検索すると尋常じゃない奴とか
あれの激しい感じ…」

「はあ?適当な説明すんな、」

花宮が自分でドアの奥を見ると言葉を失った。

ああ、説明上手すぎだ健太郎
激しいボディビルダーだな

「ふはっ」

花宮は笑った。
赤く血色づいた肌にありえないほどの筋肉がついている。
筋肉増幅どころの話ではない。
身長はゆうに2mを超え、白衣を着ているが異次元のプロレスラーのようだ。
先ほど山崎が見た白衣の男だろうか。
炎から完全に出てきた巨体の手には、大きくて丸い銃があった。
ガトリングガンだ。
複数の銃身を束ね、それを回転させることで連射を可能にしている。

「なにあいつ…古橋攫ったヤツ?」

原が古橋に聞くと、古橋は首をかしげた。

「さあな」

「あんな姿じゃわかんねえだろ」

山崎が言うと巨体がガトリングガンを構えた。

「ちょ、銃とかヤバいじゃん」

原が冷や汗を流しながら後ろに後ずさりした。
ほとんど弾切れの銃だったのもあるが、古橋を助けたり火に飲まれたりといろいろあったので銃は建物の中に置いてきてしまった。
懐中電灯のみではなにも出来ない。

「ああ、とにかく隠れるぞ!」

花宮の言葉で全員が近くの木に隠れるため走りだす。
巨体も逃すまいと、ガトリングガンを放ちながら歩き出した。
バラバラという音がうるさくあたりに響き、瀬戸と古橋が木の影から叫んだ。

「小屋がある!」

「あそこに銃があるかもしれない」

「名前!」

花宮がその言葉を聞いて、木に隠れようと走る名前のところまで全力疾走する。
名前を捕まえ横抱きにすると小屋に向かって走り出した。

「花宮くん!?」

「いいからお前は後ろを見ておけ!」

花宮の言う通り後ろを見ると、巨体がガトリングガンを放ちながらゆっくり追いかけて来ている。

「追いかけて来る!」

「そんくらいわかってる!」

山崎と原が先に小屋に着いてドアを開けた。

「早く!」

山崎が急かすので花宮が舌打ちしながらなんとか小屋に滑り込んだ。

「おい大丈夫か」

「うん…だいじょうぶ…」

ぜえはあ、と花宮が肩で息をしながらぐったりしている名前に聞いていると、瀬戸と古橋も滑り込んで来た。
一番最後に入ってきた古橋がドアを閉めると、こちらを向く。

「はあ…武器は?」

「たんまりあるよん」

瀬戸が手の甲で顔の汗を拭いながら聞くと、原が座っていたテーブルをバンッと叩いて注目させた。

「さっき持っていたものと変わらないな」

花宮がそう言うと各々が銃を取りガチャガチャと確認した。
近くでガトリングガンの音がする。

「ハンドガン、5丁あるな」

山崎は呟いて花宮にそのうちの2丁を渡し、自分も2丁持つ。

「…名前のじゃん?」

原が言うと全員が名前を見た。

「…護身用にでも持ってた方がいいんじゃない?」

「わかっ、た」

瀬戸が渡してくるので、名前は素直に受け取った。
花宮ははあ、とため息を吐いた。
古橋がドアを少し開け巨体のようすを見る。

「もうすぐそこまで来ている」

「窓から逃げるぞ」

テーブルの奥に大きな窓がある。
そこからまず連射可能な銃を持つ瀬戸と古橋が出た。
2人は左右に分かれ、すぐに攻撃を開始する。
花宮がその後に続いて外に出るとこちらを振り返った。

「名前も出ろ」

「うん」

花宮が指示するので名前も銃を片手に窓に足をかけると花宮が手をのばした。
それをとり外に出る。

「原は最後だ、いいな!」

「オッケー」

そう会話を終えて花宮は名前の手を掴んだまま暗い森の中を走り出した。

(150330)
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