小説 | ナノ

▼ おとす

5人で大きな建物へ入った。

「っはあ、はっ…古橋くんは?」

名前が息を切らしながら周りを見渡す。

「いねえな…」

山崎が呟いた。

1階にはなにもなかった。
やけに明るい蛍光灯が等間隔にフロアを灯している。
探すことをせずとも、このフロアには上に登る階段と今入ってきたドアしかなかった。
仕方なく5人は階段を登った。
階段を下から見上げると永遠と続いている。
登る以外の選択肢がないので登るが、登っても登っても終わりがない。

「長くね?」

原が食べ終わったガムをポイッと投げ捨てる。

「名前さ、新しいガム持ってたよね?」

「うん?あるよ」

上のジャージからガムを取り出すと原がひったくる。

「さーんきゅ」

「原ってのんきだよな」

山崎が原を見つめると原はべえっと舌を出して答えた。

「ザキはビビってるね」

山崎がキレそうになったところで、やっとフロアが現れる。
階段もここまでしかなかった。

「実験室…?」

名前が言う通りここは実験室のようだ。
学校でよく見るような大きな机があり、左の壁の棚にはたくさんの薬品が規則正しく並んでいた。
入り口の正面に位置する壁の前にまたもやカプセルを見つけた。
今度は一つではなく、たくさんあった。

バンッバンッ

縦長の酸素カプセル型の中から音がした。
驚くもすぐに銃を構える。
全員で音がするカプセルを見ると、瀬戸が声を上げた。

「古橋っ!」

古橋が身体中にチューブを繋げられカプセルの中に入れられていた。
取っ手があるので瀬戸が引っ張るがまったく動かない。

「開かないな…」

「おい古橋!聞こえるか?」

山崎が大きな声で古橋に話しかける。
古橋は首をかしげた。

「聞こえねえか」

「銃でぶっ壊せば?」

原がそう言って銃を構えた。

「やめろよ
古橋にあたったらどうすんだ」

山崎が原を睨むと、原は舌打ちして銃を下ろした。

「さっき古橋が叩いた音ですごく硬いのはわかったから銃じゃ無理」

瀬戸が透明のガラスのカプセルをコンコンとノックして音を確かめた。
古橋はカプセルの外の5人を静かに見ている。

「このフロアしかねえならここに開けるモンがあるはずだ
探すぞ」

花宮が指示すると瀬戸がジェスチャーで古橋に『探す』と伝えた。
古橋は頷いた。
5人は薬品や他のカプセルを探索し始めた。

「お、なんかボタンみーっけ
ポチッと」

「!?原、なに勝手に押してんだっ!」

原の言葉に薬品を一つ一つ見ていた花宮がバッと振り向いた。

シュウウウウウーーー

「…なんの音だ?」

山崎が周りをキョロキョロ見るがなにも起こっていないようで、首をかしげる。

バンッバンッドンドンッ

「、古橋か!」

花宮が古橋の方へ走ると、古橋が必死にカプセルを叩いてなにか言っている。
顔色が悪い。

ボタンを押した原が焦りながら古橋に近づく。

「古橋、ヤバいどうしよっ
なんか苦しんでる!」

「毒とか?」

瀬戸がどうしたのか聞くが、古橋がパニックになり、なにを言っているのかわからない。

「チッ、紙とペンはねえのか?」

花宮の言葉に名前が「あっ!」と声をあげた。
瀬戸と名前が古橋たちから離れ、先ほどまでいた場所からなにか持ってきた。

「マジックペンあった!」

「もうイスでいい?」

瀬戸が近くの木のイスを持ってきて花宮に見せる。

「貸せっ!」

花宮は名前からマジックペンを受け取り瀬戸が持ってきたイスになにか書く。

『毒か?』

そう書いたイスを瀬戸が古橋に見せると古橋はぶんぶんと首を振った。

「?…く う き ?」

「くうき、だな」

原と山崎が古橋の口元から言葉を読み取る。
2人の言葉に花宮が再びイスに書き込む。

『酸素がないのか?』

コクコク
古橋が文字を見て頷く。
先ほどよりも顔が青ざめ、目も虚ろだ。

「たすけて…」

瀬戸が古橋の口元を読む。
古橋はふらりと前のめりになり、ガラスにガンッと頭をぶつけるとずるずると崩れ落ちた。

「古橋!?おいっ!」

「古橋くん!!」

ガラスを叩いても古橋は起き上がることはなかった。

(150328)
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