「じゃ、おつかれっしたー!」
「おう、気ーつけて帰れよ」

笑顔で挨拶をし、部室から飛び出す。
早く帰って、黒子っちに会いたい。
今日の夕食の事などを考えながら校門を通り過ぎようとした時、くんと腕を引かれる。

「よー、黄瀬」
「え、青峰っち!?」

振り返った先にいたのは青峰で、久しぶり、と小さく手を振った。

「久しぶりっスね!どうしたんスか?海常に何か用っスか?」
「ちげーよ。お前にだよ」
「俺に?」

何も約束などはしていないはずだが、忘れてる事でもあったのだろうか。
首を捻る黄瀬に、青峰が言う。

「久しぶりにお前と1on1しようと思ったんだよ。今からストリート行かねーか?」
「ホントっスか!?あ、…でも早く帰らないと黒子っちが心配するし…」
「…テツ?なんでそこでテツが出てくんだよ」
「…ううん、何でもないっス!明日じゃダメっスかね?今日はちょっとこれから用があって」
「まあ、別にいいけど」
「じゃあ、明日この時間くらいにストリート集合でいいっスか?」
「ああ」

その後青峰と別れ、家に帰ってすぐさま黒子に報告した。

「てことで、明日ちょっと青峰っちと1on1してくるから帰り遅くなるっス」
「………」
「黒子っち?どうしたんスか?」
「…いえ、あんまり遅くならないようにしてくださいね」
「了解っス!」

浮かない表情だったのが気になったが、すぐにいつもの笑顔に戻ったので触れないようにした。

次の日。
約束した時間にストリートに行き、既に来ていた青峰と1on1を楽しんだ。

「…っあー!やっぱ強いっス青峰っちー」
「何当たり前なこと言ってんだよ。お前が俺に勝てるわけねえだろ」
「いーや!そんなこと言ってると今に足元すくわれるっスよ!」
「へー、そりゃ楽しみだな」

笑みを向ける青峰に、黄瀬も笑顔を返し、隅に置いていた鞄を持つ。

「じゃ、今日は楽しかったっス!そろそろ俺帰るね」
「送ってく」
「え?」
「お前ん家ちけーし、送ってくって言ってんだよ」

まさかそんなこと言われるとは思ってなかったので驚いたが、青峰が言ってるのは今黒子っちと一緒に住んでる家ではなく、ちょっと前まで家族と住んでた家のことだ。
それに黒子から秘密にと言われているし、送ってもらうわけにはいかない。

「…えっと、気持ちは嬉しいんスけど、俺今あの家にいないんスよね…」
「は?なんだよ、一人暮らしでも始めたのかよ?」
「一人暮らしではないっスけど…、まあそんなもんス」
「なんだそれ。じゃあお前の家教えろよ」
「え!?いやいや、俺女の子じゃないし、一人で大丈夫っスよ…!」
「とか言って、ヤローにストーカーされたのはどこのどいつだよ」
「…ぅ…、」

その通りで、言い返す言葉が見つからない。

…黒子っち家の中にいるだろうし、玄関までだったら大丈夫かな…。

そう簡単に考えてしまったのは、相手が青峰だったからなのかもしれない。
ここまで言ってくれてるのを無下にも出来ず、了承してしまったのは。

「…じゃあ、お願いするっス」
「おう」

そう言って、青峰も自身の鞄を拾い、黄瀬と一緒にコートを後にする。

まさかこれが原因で他のキセキにもバレてしまうとは知らずに。


黒子と住んでるマンションに着き、入口前で足を止め青峰の方に振り向く。

「ありがとう青峰っち、ここ俺の家だからもう大丈夫っス」
「へー、結構良いとこ住んでんじゃねーか。ここまで来たんだし、お前の部屋教えろよ」
「ええ!?いや…、それはちょっと…っ」
「なに渋ってんだよ。別にそれぐらいいいだろ、減るもんじゃないし」

ど、どうしよう…!
さすがにそれは黒子っちに怒られるよね…!?

どう断ろうか悩んでいると、入口から見慣れた水色の髪の住人が出てくる。
それにさらにぎょっとし、こちらに気づかないでと願ったが、入口前にいるのだから気づかれないはずがなかった。

「…黄瀬君?」
「く、黒子っち…っ」
「遅いのでちょうどキミを迎えに行こうかと…、…青峰君?何で…」
「…何でテツここにいんだよ?」

顔を見合わせた彼らは互いに眉を寄せ始める。
黒子がチラリと黄瀬と見やったその顔は、他人から見たらただの笑顔だが、黄瀬から見れば怒っていることがすぐに分かった。

「黄瀬君、どういうことですか?」
「おい黄瀬、なんでテツがここにいんだよ」



─END─

三話に続く


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