心の本音
私は知っている。
いつも、笑顔の貴方の心は
いつも、泣いてることに。
心の中は、未だに後悔と懺悔の嵐に苛まれているんだ。
大いなる力との引き替え、それはたくさんの犠牲の上での生き残りである証。貴方が悪いわけじゃないのに、自分の所為だと追い詰める。
ほら、今だってそう。
「…うっ…わぁぁっ!!はっ…ぁっ…」
「テンゾウ、大丈夫?」
「…名無しさん…、ボ、ボクっ…」
「落ち着いて…ね」
テンゾウと共に過ごすようになって、どれくらい月日が経っただろう。ある程度、彼の事は理解している。大蛇丸の実験体のただ一人の生き残りだ。それがどうした、彼が私の大切な存在であることには変わりない。
そして、テンゾウは毎日悪夢を見る。
夢の内容は敢えて聞かない、そこまでバカじゃないから。
だから、私は抱き締めるの。
何も言わずに、私よりも何倍も大きい身体のテンゾウを。悪夢に魘され震えるその身体を、ぎゅっと優しくも強く抱き締めるんだ。
「ごめ…ん、名無しさん…」
「どこに謝る理由があるのか、分からない」
「………」
「抱き締められるの、嫌?」
「そんなことない…助かってるし、君の体温がとても気持ち良い…」
落ち着かせる為に背中を撫で続けると、呼吸はじょじょに安定していく。
自分よりも大きいはずの背中は、何故かとても小さく感じて。
「じゃあ謝ることないよ、私は幸せだし」
「幸せ…なの?」
幸せに決まっている。
そう、何故ならこれは私にしか見せない弱さだから。
彼の質問には応えずに微笑みながら額にキスを一つ。見開く目、でもそれは一瞬だけで、すぐに目を細めて満更じゃない様子を醸し出す。
「…可愛い、テンゾウ…」
「男に対しての台詞じゃないよね、それ…。でも、その言葉に名無しさんの愛が詰まってるから…」
やっと落ち着いた彼は、そっと私の頬に手を添えて視線を合わす。
「詰まってるから、なに…?」
「とっても嬉しくて、ボクも幸せだって思っちゃうんだ」
困ったように微笑みながら、今度は彼から額にキス。そのまま目尻、鼻、最後に唇へと。触れるだけのものを、1つずつ、ゆっくりと…
「じゃあ幸せのまま寝直そうよ、テンゾウ」
「うん…ありがとう、名無しさん」
この温もりが彼を包み、夢の中まで届け。
そう願いを込めて目を閉じる。
弱さも、全てさらけ出して。
全て受け止めるから
「おやすみ…テンゾウ」
fin
***
相互記念。
葉様に捧ぐ!
201702016
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