拝啓、私の大切な人

拝啓、私の大切な人
医療忍者と呼ばれるにはまだ未熟な私が太陽の日差しと蝉の声が響く真昼に熱射病になりかけていることにも気が付かず、ふらふらと歩いていた時に助けてくれたのが出会いでしたね。ヤマトは任務の帰りだったから砂と埃に塗れていて私を抱き留めてくれたのに謝ってくるので二人して道の真ん中で頭を下げて近くを通りかかったカカシさんに「何してんの」って言われて恥ずかしかったのを覚えていますか?私は今もはっきり覚えています。そして、その日が貴方の誕生日だと知ってお礼も兼ねて食事に誘ってそのまま意気投合して…思い出すとなんだかこそばゆい感じがします。



貴方は今何をしていますか?

ちゃんとご飯を食べていますか?

カカシさんの口車に乗せられてご飯を奢らされたりしていませんか?

新しくできた教え子とはうまくやれていますか?

最近お互い忙しくてすれ違うことが多く会えない日が続いていますがどうかお体に気を付けて任務がんばってください。

貴方は私にとってかけがえのない存在なのですから。


生まれてきてくれてありがとう


名無しさん










「本当に心配性だなぁ」

任務地で彼女の使う燕に運ばれてきた文を読みヤマトは口元に弧を描く。
この任務が終わったら必ず彼女に会いに行こう、そう心に決めて肩にとまる燕の頭を人差指で撫で空を仰いだ。


その時。


「心配して当たり前でしょう?」

ポフンと音を立て燕が人に変化した。いや、正確には人が燕に変化していたのだろう。

「名無しさん?!」
「えへへ、来ちゃった」
「来ちゃったじゃないだろう?!火影様には…」
「ちゃんと許可を頂いてきました。ほらちゃんと書状もあるのよ?」

懐から巻物を取り出しヤマトに見せつける。そこにはちゃんと火影の印が押してある。
どや顔で笑う目の前の彼女にヤマトは片手で顔を覆い下を向いた。

「途中で医療忍者が離脱したんでしょ?その補填に立候補したの」
「だからって態々変化してこなくても」
「え〜、だって折角だし…ね?」

首を傾げ見上げてくる彼女の顔は悪戯っ子の顔をしている。

「だって、今日はヤマトの誕生日じゃない」
「はぁ…任務中なのにボクも不謹慎だな」
「ん?」
「今、すごく、嬉しいんだ」

片手で覆われている顔が赤く、口元はニヤけるのを必死に耐えているように見えた。そんなヤマトを見て名無しさんも嬉しそうに微笑み口を開く。

「ヤマト!お誕生日おめでとう!!」
「!!…あ、ありがとう、名無しさん!」

見上げたヤマトの顔は嬉しそうに綻んでいた。


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AJISAI/碧様より
ヤマト生誕記念フリー夢






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