昔話を一つ/01


「隊長、そんなにジロジロ見てなんですか?」
「いや、本当にボクの彼女になったんだなって思ってね…。おいで、名無しさん」
「……ん」
 
 
甘える事に慣れてない不器用な彼女を手招きする。不貞腐れたような顔をしながらも、素直に歩み寄る姿はとても可愛い。
でもあまりにそれを口にすると、可愛いなんて言われる歳じゃない!とムキになるので普段は言わないように気をつけている。歳とか正直関係ないんだけどね、何てたって愛してるから。

君はいつだってボクを魅了しているんだ。
 
 
「ここ、座りなよ」
「え…」
 
 
ここと称したのは、自身の膝の上。
呆然と立ち尽くす姿を見て、苦笑。
 
だけど、やはりそんな君が可愛いと思ってしまうボクはきっと重症…
 
 
「さ、早く」
「い、いや…さすがに暗部総隊長の膝になんか座れませんよ…」
「へぇ、じゃあボク以外の男の膝なら座るって事?」
「そうではなくて…!」
「んもぅ…ほら、早く」
「わっ!…っ」
「捕まえた」
 
 
いつまで経っても座る様子のない名無しさんの腕を掴んで無理やり膝の上へと座らせ、後ろから抱き締める。女性特有の柔らかさと温もりが心地よくて、うなじに顔を埋め込み暫くそのままでいた。そんなボクの行動に付いていけない彼女は軽いパニック。
 
 
「その、隊長…」
「…今は二人きりなんだし、名前で呼んでほしいんだけど?」
「て、テンゾウ…」
「ん、なんだい?」
「ひゃ…!」
 
 
うなじに顔を埋めたまま喋って性感帯を刺激、敏感に反応する姿を見て悪戯心が燻る。ちゅっちゅっと、わざとリップ音を鳴らして愛撫。そのまま軽く舌を這わすと身体が硬直したのが分かった。
気を良くしたボクは彼女の口元に手を持っていき、ふにふにと柔らかい唇を弄る。下唇を軽く摘まむと小さく開く口。その隙間から指を挿し込み、今度は口腔を弄る。


「名無しさんの口の中…あったかいね」  
「んっ…ふぁ…っ」
「もう少し、開けて欲しいなぁ…?」
「ゃ…っん」
  

頑なに口を閉じようとする彼女、それは精一杯の抵抗だ。その気になれば噛みきる事だって出来るのに。苦しくない程度に指を増やし上下へと動かす。


「吸って、舐めてくれてもいいんだよ…?」 
「んんっ…!!」


指先で口腔を犯しながら、耳元へ囁く低い声。その耳は真っ赤。さらに指先に絡まり、口元から零れ落ちる唾液が官能的で堪らない。
 
本当に可愛い。
でも、ここまでだ。


「…っと、ふざけ過ぎたかな…」
「っ、過ぎます…!!」
「ふふっ、それは済まないね。でも君が可愛い反応をするから悪いんだよ。まぁ、お詫びにといってはなんだけど少し昔話をしてあげるよ」
「…昔話?」
「あぁ」
 
 
それは、10年前。
君に出逢う前、そして出逢った頃の話。





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