05


「で、ここからが本題…私はとある任務中だった」
「任務中…ダンゾウか?」
「…機密事項ですよ、火影様」
「うむ、そうじゃな…」


はぐらかしてみたが、火影様の言った事は的中している。あの時、私はダンゾウの命である忍を追っていた。

多里の忍であるが禁忌とされる忍術を使い回り、木ノ葉に近づいているという情報が入ったので向かう事になったのだ。
表向きは忍の抹殺も兼ねているが、重視されるのはその禁忌をである情報を持ち帰える事。暗部ではないが、内密に動き顔を知られるわけにはいかないので面をして黒一色に包まれた忍装束で動く。

そして出くわし、応戦。
が、思っていたよりも手練れだと気付いた。


「それで名無しさんさんは傷だらけだったんですね」
「そうなんだよね、でもやることはやった」


私が優先すべきはあくまで情報を持ち帰る事。戦闘の際に互いの血が流れ相手の血も自分に付着、条件は揃った。
一瞬の隙をついて雷遁で腹部を貫き、その場から駆け出す。


「でも…そこから…」


急激な目眩が襲った、いや空間が歪んでいた。立つこともままらなくなって、その場に崩れ落ちる。

その衝動で外れる仮面、そのまま意識は途切れた。


「で、気付いたら…オレ達の前に現れて…」
「ボクらが敵と勘違いしてしまった…」
「うん、そこから推測されるに…その禁忌という術は一種の空間忍術で…」
「飛ばされた、それも過去に…というわけじゃな」
「恐らくは…。だけど相手の血は私に付着しました。ここから情報、記憶を得てみます」


チャクラを練り付着した場所に手を触れ、見えないモノで覆う。そして自身の中へと戻す。
駆け巡るのは相手の情報とそれまでの記憶。記憶に関して普段はあまり視る事はしないが、今回は別。もしかしたら秘術を他でも使っていたかも知れないし、術を解くヒントだってあるはず。
印をし意識を集中させ目を閉じて、記憶を遡る。


「…っ」


文字として書物にするのは簡単だが、記憶の映像は書物にする事は出来ない。脳内に情報があるのではなく、チャクラにあるのでこういう場合は自分が視る以外方法はない。
もちろん見たくないものだってある、ただ殺戮を好む者もいれば、己の快感のみで強姦するゲスな奴らなどその他もろもろ。
忍の風上にも置けない。


「…どうやらこの秘術は精神のみを異空間に飛ばし相手の意識や自由を奪う術みたいですね…。が、私の場合は身体まで飛ばされて過去に…」


印を解いて目を開ける。


「おい、名無しさん…すごい汗が…」
「…大丈夫」
「どこまで、解ったんじゃ」
「…恐らく、その忍はもう息絶えたかと…よって…うっ…」
「…!名無しさんさんっ!!」


視界が揺らぎ、足に力が入らない。
だが咄嗟に伸ばされた腕に身体が支えられた。


「テンゾウ…?ごめん…いつもならこんな事ないんだけど…」
「ボクは別に構いません、それより大丈夫ですか?」
「火影様、彼女を…名無しさんを休ませてやってはくれませんか?」
「そのつもりじゃ。名無しさん、情報はもう得た…ひとまず休むんじゃ」
「…ん、じゃあお言葉に甘えて…」


思っていたよりも疲弊していたのか、意識はすぐに微睡みの中へ落ちていった。





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