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次元を越えるなんて事、ある訳ないと思っていた。
だけど目の前にある状況を説明するには、それがピッタリと当てはまるだろう。
「…誰だ」
「えっと…」
「先輩、ひとまず拘束しましょう」
背後に立たれ、クナイを首元に突きつけられ間髪入れずに拘束の言葉。
今、少年二人に追いやられてます。
目の前の茶髪の少年が両手を組み合わせ、術を発動。
「も、木遁…っ?」
その子の腕からみるみるうちに木が作り出された。私はこの術を知っている。
そちらに意識を持っていると後ろからパチッと独特の音が聞こえた。これも知っていた。
「……」
「もう一度聞く、お前は誰だ。そしてどうやってここに侵入した」
「気配もなく、一瞬で現れましたよね…?」
ひとまず現状を把握。
視界を広げると木で出来た室内に足元に置かれた面と忍具、外は暗い。
そこから察するに、二人は暗部の任務中だろう。そして夜になり野宿をしようとした所か。
無言で彼らを見つめる。
ああ、やはり私は次元を越えてしまったようだ。それも、過去に。
何故なら、そこにある顔は私の知っている顔より随分幼かったから。
とりあえず…この状況をどうにかするか。
悪いけど、舐められるのは大嫌いなんでね。
「カカシ…と、テンゾウだっけ?」
「!」
「先輩、この人ボクらの名前を…!?」
「甘い…!」
チャクラを集中し、一気に放出させ木遁の術を破る。そのまま首元に突きつけられていたクナイを片手で制止し、空いた片手で後ろに立つ少年…もとい、カカシの鳩尾を打つ。
チャクラ練ったその攻撃に、うっと声を上げて膝から崩れ落ちる。
一瞬での出来事に目を見開く茶髪の少年、もといテンゾウには回り蹴りを喰らわす。
もちろんチャクラを練るのは忘れない。
「残念でした…っと」
影分身の術を発動させ、二体の分身を作る。
そして疼くまる二人に馬乗りし、先程カカシがしたように首元にクナイを突きつけた。
「さて、どうしようか…信じてもらえる訳でもなさそうだし」
「ぐっ…」
「この人…強い…っ」
「一応、木ノ葉の忍だしね」
「ふさげるな…お前の様な奴は見た事がない!」
「まぁ、そりゃそうだろう」
今の私の格好は一般的に流通している忍装束ではなく、黒一色に包まれた装束。
その上、未来では少々特殊な立ち位置にいたので火影様や上層部にしか顔を知られていない。
それでも里の忍の情報はほぼ把握している。
「というか、今二人って何歳?」
「…」
「…」
「だんまりか。立場が完全に逆転しちゃったもんねぇ…仕方ない」
耳に着けた特注のピアスに手を伸ばす。これは特殊な物で、チャクラを練ると小さな巻物が現れる仕掛け。軽く意識を集中させて印を結び、とあるモノを呼び出す。
優秀な彼らだ、口寄せの術を行った事を理解しているはず。だが、そこからは何も現れなくて緊張感だけが空間を支配していた。
私が呼び出したそれは形がない。
何故ならそれは、自身のチャクラを練ったモノだから。形態変化や、性質変化をしていないソレは目に見えはしない。
取り出したチャクラを体内に戻す。
「なるほど、なるほど…テンゾウが14歳でカカシが18歳?」
「どうして、それを!…貴女は一体…」
「テンゾウ!耳を傾けるな!」
少なからず、二人は動揺している。
いきなり現れた正体不明の女、最初は尋問していたはずなのに形勢は逆転。そして面識もないはずの奴に名前と年齢さえも当てられる。
いくら暗部もはいえども、まだまだ若い。
精神的にも揺らいで当然だ。
「二人の敵じゃないから安心して。とりあえず、疲れたから…お休みー」
とびきりの笑顔を見せた後、ゴロンと横になる。
木の香りがいやに落ち着く。
「ちょ、ちょっと待て…!この格好のままでいろと…!?」
「ぅ…押さえつけられたままとか…」
あまりの眠たさに影分身を解くのを忘れていた。
まぁ、解いちゃうと安眠出来そうになかったので良しとしよう。
そうして、私が目覚める翌朝まで18歳のカカシと14歳のテンゾウは馬乗りにされたまま一夜を過ごすのだった。
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