09
「…ん」
カーテン越しに明るい陽が射し込む。
が、そこで違和感に気づく。
私の住んでいた家は地下だ。朝であろうが、こんな陽は入らない。
慌てて布団をめくって起き上がり、クナイを持ち攻撃体勢を取る。
「…ぁ、れ…」
何処だ、ここ?
見慣れぬ一人部屋に私はいた。
「おーい名無しさん、起きてる?オレ今日は任務だからテンゾウが後で来る…って、なにやってんの?」
「…え?…あ、そっか私、昨日からここに住む事になったんだっけ」
「ぷっ、なにもしかして、寝惚けてたの?案外マヌケなんだね」
「うっさい…!」
図星だ。
ムッとなり、殺気とクナイを突き付ける。
「ちょ、アンタの殺気半端ないから止めてくれる?」
「じゃあ、アンタも笑わないでくれる?」
「はいはい」
「生意気なガキ…」
のらりくらりと誤魔化すカカシに、イラつきつつもクナイをしまう。
「ん、良くできました」
「あのね、アンタ」
「カカシ」
「…はい?」
「オレの名前はカカシだよ、名無しさん」
「…知ってるよ」
「そ?ならいいや、ご飯出来たから食べるよ」
頭を一撫でされ、カカシは部屋を出る。
これはもしや子供扱いされてる?
私、一応これでも年上なんだけど…
「まだぼーっとしてんの?」
「…25」
「25?」
「私、一応25歳だから…あんま舐めないでよ」
ここは13年前の世界なので未来では年下になってしまうが、今は明らかに私の方が上。
いくら居候とは言え、どうも釈然としなかったので本来の年齢を伝えた。
「…7歳上なんだ、ふーん」
「そ、だから少しは敬う事してくれる?」
「そうだね、まっ、良いこと聞いたし敬う努力はするよ」
「良いこと?それに努力って…はぁ」
私は秘術にて人の記憶や情報を得る事が出来る。よってこの男の情報も知っていたが、あくまで情報でのはたけカカシか知らなかったので…今、目の前にいる飄々とした若カカシに少し驚いている。
掴めない、抜け目ない性格というのは把握していたが、こんなに人懐っこい奴だったのか?
「でもまぁ悪い子じゃないから、いっか…うん」
「なにか言った?」
「別に…」
カカシの手作りの朝食を頂く。
悔しい事に美味しい。
テンゾウもそうだったけど、男の癖に女子力高すぎ…
モヤモヤしながら食べていると、知った気配が近づいてきた。
「…テンゾウが来たらオレ、任務行くから」
「分かった」
「おはようございます、先輩、名無しさんさん」
噂をすればなんとやら、テンゾウが現れた。
二人はローテーションで私を監視する事になり今日はカカシが任務なので、テンゾウが私を見張る。
軽く引き継ぎをして、カカシは私の前に立つ。
「一応結界張って、オレ達以外の奴は入れないようになってるから安心して。じゃ、後は任せたテンゾウ」
「はい」
「カカシ、気を付けてね」
「ん」
玄関まで送り向かい。
こんな事、今までなかったので心がざわつく。でも決して悪いものじゃなくて。
ただ、慣れるまで時間がかかるだろう。
「そうだ、テンゾウ。いーこと教えてやるよ」
「はい?」
「名無しさんって、25歳らしいよ」
「ちょっと、いきなり人の年齢暴露する?」
「オレ達の年齢も暴露したでしょ」
それは事実だが別に今言わなくてもいいだろう。
何故かテンゾウは固まってるし…
言うだけ言って、瞬身の術で消えるカカシ。
「…25歳…なんですね、名無しさんさん」
「なに、思ってたよりも歳食ってるって?」
「ち、違います!ただボクと11歳離れてるんだって…」
「そりゃ過去だし」
「…ボク、子供じゃないですから。それだけ言っておきます!」
忍に年齢なんて関係ない、全て実力の世界とカカシは言った。少なくとも私もそう思っている。
テンゾウにだって当てはまるだろう。
でも、少しムキになった姿を見ると…
「ふふ」
子供というより、ただ純粋に可愛いと感じた。
テンゾウはカカシより素直でいいね、うん。
そういった子は…
「好きかも」
「え!えっ!?ど、どういう意味…!」
「さて、片付けしよー」
サラリと呟いた一人言に過敏に反応したテンゾウが、ますます可愛いかったのはいうまでもない。
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