大嫌いな君


※BLではありませんがカカシを崇拝するヤマト設定です。
それを踏まえてお読み下さいませ。





ボクは君が嫌いだ。
理由は簡単、ボクの大好きな先輩を奪ったから。

もちろん好きっていっても、尊敬とか崇拝の類?
決して愛情とかそんな意味じゃない。
それでも先輩の一番はボクだったのに、君はそれを奪ったんだ。いとも簡単にさ。


憎むに決まってるよね?

だから、君を振り向かせる事にしたんだ。

色々調べたんだよ、君の事。
好きな物を送ったり、サプライズをして喜ばしたり。ボクを好いてもらえるように努力した。
案の定、君がボクに夢中になるのに時間は掛からなかった。

カカシ先輩は『愛してる』の類はあまり掛けなかったようで君はそういった言葉にすごく弱くて度々、顔を赤く染めていた。

きっと世間一般ではそれが『可愛い』に当てはまるんだろうけど、生憎ボクは何も思わなかった。
カカシ先輩がマスク越しに鼻の下を伸ばしながらイチャイチャパラダイスを読んでる姿の方が、よっぽど可愛いって思う。


そうして何ヶ月か経った頃、君はカカシ先輩に見向きもしなくなって。でも先輩は『お前になら名無しさんを任せてもいーよ』って。

笑って、ボクの背を押した。

加えて『あいつは寂しがり屋だから、いっぱい愛を囁いてやってちょーだいな。オレはそういうの苦手でね。忍なんてやってりゃ、いつ死ぬか分からないし…深い情は持ちたくないのよ』って。


嗚呼、傷付いている。

すみません、先輩。
貴方にそんな顔を、想いをして欲しかったわけじゃないんです。
ただ、貴方の傍から…彼女を離したかった。



「名無しさん、今日は話があるんだ。聞いてくれるかい?」

「ヤマトの話を聞かないわけないよっ。なに?なんでも言ってね!」



カカシ先輩から興味を失った名無しさんは、必然的にボクと身体を重ねる機会が増えた。

正直、ヤりたくなかったけど。
愛を囁いて、甘い言葉を掛けて、イカせてあげる。

君は心底、ボクに酔いしれていた。



「君はほんと…ボクに従順っていうか…」

「ふふ、だってヤマトのこと、だーいすきだもん!」



大好き、ね。

行為が終われば気持ち悪くて何度も吐いていたボクがいただなんて、君は知る由もないだろう。

でもね、それも今日で終わり。
さぁ、クライマックスだよ。



「ありがとう、でもボクは君が嫌いだよ」

「……え?」

「聞こえなかった?ボクは君が嫌いって言ったんだよ。本当に嫌いだった、憎かった。けど今は嬉しいよ?君を殺せる、今がね。ふふっ、ふははは…!!」

「じょ、冗談キツイよヤマト?わ、私なにか気に触るようなことしちゃった?謝るから…!」

「気に触ることならずっとしてたよ?まぁ、知らない方が君の為さ」

「や、ヤマト…や、め…」



名前を呼ぶ事さえも痴がましい。
君と過ごしていく内にボクの知らないカカシ先輩がいっぱいいた。

ベッドサイドの引き出しからクナイを取り出す。
色んな感情を押し込めて、ボクは其れを振りかざす。彼女の心臓を目掛けて。



「さようなら、大嫌いな君」



彼女を殺して、元通り。
…なんて事にはならない、むしろボクは先輩に殺されるんじゃないかな。


貴方は言った、深い情は持ちたくないと。

でも、自らは手放せなかったんですよね?
信頼しているボクなら任せられる…そういう何処か人間臭いところ、好きでしたよ。

だから殺して下さい、愛する彼女を奪ったボクが憎くて堪らないでしょう?
後悔はない、ボクは貴方から名無しさんを離し…いや、断ち切れて満足しているから。


そうさ、先輩に殺されるなら本望。
ずっと貴方を慕っていた、尊敬していたカカシ先輩になら、何をされても受け入れられる。



「…良かったね。もしかしたらボクら地獄で会えるかも知れないよ?」



君はボクからカカシ先輩を奪ったから地獄に堕ちるんだ、ボクも君の命を奪ったから地獄へと堕ちるだろう。



「どんな顔をするのかな、カカシ先輩」



カカシ先輩が来るまであと少し。

泣くかな、悲しむかな、怒るかな?

どの顔もボクは好きですよ、どんな表情の貴方に殺されても…



「ボクは笑っていますから」



そして、地獄に堕ちた時は君と笑顔で再会。
…悪くは、ないかもね。



(この感情は決して愛情じゃない、だから愛してるなんて言葉は使わない)



fin
20200607
思考が少し狂っている?という意味で此方の黒ヤマトカテゴリに。




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