う、お、お、
2020/05/17 00:33
人に送ったものなので、名前を呼ぶシーンがあります。
よって「名無し」として記載。
ドサ…
オレは今、名無しを押し倒している。
否、組み敷いている、なのだろうか。
「…斎藤さん…」
「む…怖くはないか」
「少し、怖いです」
「そうか」
気持ちが通じ合い、初めて肌を触れ合う日がとうとう来た。頬を染め視線を逸らす姿に堪らなく欲情する。その瞬間、オレは新撰組幹部という肩書きから、ただの一人の男となる。
しかしながら…経験がない。
きっと名無しもそうだとは思うが、女という生き物をどうやって愛でれば良いのか知らない。
左之助のように愛を囁く事さえ、きっと困難で。
それでもオレは愛しく思う、この手で抱きたいと。
「…えっと」
「案ずるな…オレも、そうだ」
「心臓バクバクですね…」
「あぁ、あんたと同じで…オレも少し怖い。壊れてしまわないか、と」
彼女の手を取り己の心臓へと導く。
平静を装っているが、心の臓は大きく波打っているのだ。軽く己を嘲笑ったあと、そっと頬に触れる。
「ふふ、なら安心しました。でも斎藤さん…私は壊れませんよ。だってこんなに優しく触れてくれるんだもの…」
「っ…!」
「抱いて下さい…抱いて欲しいです、斎藤さん」
「名無し…今宵は寝かせんぞ?」
「…はい」
「それと…一、だ」
名前を呼んでくれ。
其の唇で、其の声で、オレを。
愛しいあんたがオレを呼ぶ、それだけで気持ちが昂る───