青道高校野球部一軍




眼鏡先輩に手を繋がれたままブルペンへと入った私は師匠さんが沢村へフォームのイメージを聞いているのをただ隣で聞いていた。



「なるほどなぁ。」



…ふーん。右手の壁ねぇ。
きっとそれでフォームが遅れて見えるのか、もともとの独自のフォームで見えにくいのか。



「 繭、お前何か分かっているのだろ? 」
「え?成宮がですか?」
「ああ。」
「多分、右手を意識しすぎて右足が中に入ってます。」
「え?まじ?」
「まじ。…だから、それだけでも直したら多分ストライクゾーンには入るとは思うのだけど。とりあえず応急処置としてはこの辺かと。」
「ということだ。沢村…できるな?」
「はい!!」



そういうと沢村とクリス先輩は場所について投球の構えに入った。



「よく見ておけよ、御幸。」



そして御幸先輩(やっと名前を覚えた)もクリス先輩の後ろにスタンバイをした。…といっても私は御幸先輩に腕を掴まれたままなので必然的にその隣に移動することになるのだった。
沢村は足のことを意識してクリス先輩に投げるとギリギリボールだったものの、きちんとクリス先輩のミットに収めることができたのであった。
ただ、初めて見た沢村の左手が遅れてくるフォームに私はすごく驚いたが、それは隣の御幸先輩も同じだったみたいだった。



・・・・


「あれ?君何してんの?」
「あ、ゆきのお兄さんお久しぶりです。」



あれから私は御幸先輩に連れられて野球部の一軍の所に来た。
ピンクの髪をしたゆきのお兄さんはともかく、ほかの方は見たこともない人がいっぱい…



「あれ、亮さん知合いっすか?」



そう声をかけたのは緑頭のヤンキーさん…地毛なんだろうか。



「ん?妹の友達だよ。」
「なんだよ、亮介。おめぇ妹もいたのかよ。」
「いるよー。青道に。」
「ヒャハ。亮さん追いかけてきたんっすね」
「そうみたい。で、君は一体どうしたの?
…御幸と一緒にブルペンにまで居たみたいだけど。」



…う。やっぱり見られてた。お兄さんちょっと怖いんだよな。
実を言うとたまにゆきの弟君も何を考えているのか怖くなる時がある。



「ってか、御幸よ。いつまで手つないでんだよ。」
「あー。忘れてた」



ブルペンからつい先程まで繋がれていた手はこの時にやっと離れるのであった。



「で、その子はどうしたんだ御幸?」



今度は少し怖そうな人が私について聞いてきた。…えらい貫禄があるんだけど、部長かな。



「なんでもクリス先輩の知り合いの野球してる子みたいっすよ?…良くわかないっすけど沢村の奴も知ってるみたいで。亮さんの妹の知り合いってことは1年っすかね。」



そう言いながら私のことを見た御幸先輩の顔は少し何かを考えているような顔だった。



「へぇー、そうなんか?」
「あ、はい。一応。」
「一応?お前そんなアバウトでええのか?あぁ?」
「ちょ、純さん。それちょっと怖いっす」
「はははっ」



…なんなんだこの人達は。



「とりあえずお前、名前は?」



…あ、やっぱ名乗りますよね。もういいや(諦めた)



「成宮 繭です。先輩とは半年ほど前に高校を決めるときにお世話になりました。 」
「成宮か…俺は部長の結城哲也。ファーストだ。」



…やっぱり部長さんでしたか。貫禄があります。



「ヒャハ。俺は倉持洋一。」
「伊佐敷純だ。」



緑頭のヤンキーさんは倉持先輩、ヒゲのある人は伊佐敷先輩っと。
それからも一軍の人達に名前を教えてもらったのはいいのだけど、あいにくそんなに名前を覚えるのは早くないのです。



「ってかお前、成宮っていうのか。」



えっと、たしか伊佐敷先輩だ。



「はい。まぁ一応は。」
「もしかしてだけど、お兄さんとかいるの?」



次に聞いてきたのは小湊先輩だ。



「兄と思いたくない人ならいますけど…。」
「お兄さんの学校は?」



最後に聞いてきたのは…眼鏡先輩だ。(既に忘れた)



「この容姿でわかると思いますけど、皆さんが思っている通りだと思いますよ、眼鏡先輩。」
「ヒャハ。お前、眼鏡先輩だって。」
「ひでーな。」



なんて笑いながらこちらに視線を向けてくる眼鏡先輩の目は多分笑っていない。きっとこの人あれだ、友達少ないんだきっと。

そのことはさておき…
沢村の試合は沢村がちゃんとなげれるようになってきちんと進むようになり、攻撃ではクリス先輩が打って、沢村がバンド、春市くんが打つなどして点数を勝ち取っていくのであった。



「くははっ。やっぱあいつおもしれーわ。馬鹿な上に何やらかすか想像もつかねー。お前も気合入れねーと追いつかれんぞ。」



沢村の新フォームは満足のいくものだったのだろうか眼鏡先輩は隣の人に嬉しそうにこう言った。…会話の内容からして同い年ではなさそうなんだけど、もしかして一年生かな?
その人は少し拗ねるように自主練をランニングに変えて走ると言ってその場を去っていった。
というか沢村のフォームにはいろいろ問題があるのだけど、自主練でも付き合ってあげようかな。…同じクラスの好として。


「あ、そうそう。 繭ちゃん。 」
「はい?」
「俺、御幸ね。」
「…名前ですか?女の人みたいな名前ですね。」
「… 繭ちゃんマジで言ってる? 」
「いえ、冗談です。…御幸先輩ですね。」
「そ。…あ、なんなら一也先輩でもいーけど。」
「一也先輩?…え。かずやって言うんですか?」
「うん。俺、御幸一也だから。詳しくは鳴に聞けば分かんじゃね?俺、鳴の誘いを断ったわけだし。」
「あぁ噂の。」
「ま、そういうことでよろしく、 繭ちゃん。 」



実際に御幸先輩のプレイを見た事がないからどうにも言えないのだけど、この人が鳴が人なんだってちょっと信じられないままとりあえず去っていった御幸先輩の後ろ姿をただただ見つめるのだった。



第四話 end



(春くんと沢村一軍になったらしいよ!!)
(あ、選抜残れたんだ。)



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