隣の席のうるさいやつ




高校生活も2週間前に始まり、周りも少し落ち着きを見せたこの頃。



相変わらず「かずや」と言う人は見つからないのであった。



まぁというのも私があまり野球部に近づかなかったというのが大きな理由である。



入学前はマネージャーになることも考えたのだが、やはり苗字があの兄と一緒ということからいろいろとめんどくさくなりそうなこともあり、近づずにいたのだった。この性格は昔からなので治ることはなさそうだ。



「繭ーご飯食べよー」



しかし、そんな私でも中学生の時とは明らかに違うことができた。そう、初めて同い年でお友達ができた。



「んー。」



彼女の名前は小湊雪音。通称ゆき。ピンク色の髪にピンク色の瞳と特徴のある色をしており(と言いつつ、私も金髪に青色の瞳と変わっているけど)、性格は明るく、クラスの女子の中心にいる感じの子だ。なんでも双子で片割れは隣のB組にいるらしく、二人揃って神奈川からお兄さんを追ってきたのだとか。



「ねぇ、聞いてよ!
昨日こそはと思ってお兄ちゃんに会いに行ったのにさぁ、練習試合だったみたいでお兄ちゃんいなかったんだよ!もう信じらんないー」



そして彼女の兄そして片割れは聞いてる限り野球部みたいで、実は最初の会話もそれつながりだったりする。



「ってかそれだったらうちのクラスにマネージャーの子いなかったっけ?ほら、あそこの席の。」
「あ、春乃ちゃん?
…そっか!そうだよ。春乃ちゃんに聞けばよかったんだー」



指さした窓際に座るのは吉川春乃さん。確かこの前マネージャーになったとか少し前にクラスで話していた気がする。それを聞いたゆきはお弁当を食べ終わったと思ったと同時に吉野さんに今日の予定を聞きに行くのだった。なんでも今日は普通にみんな参加の練習らしい。



「っていうか、 繭も一緒に野球部みに行こうよ!
お兄ちゃんと春くん紹介するからさぁー 」
「えー。一人でいきなよー。」
「やだ。なんか怖いもん。」



だって、紹介されたら挨拶に自分の名前を言わないといけないじゃないか。



「とにかく、今日はいいから。久々なんでしょ?兄弟水入らずで話してきなよ。」
「はーい。けど、いつか絶対に一緒に行こうね!」
「はいはい。」



そこから話題は最近のテレビの話になり、なんでもゆきは最近あるアイドルにはまっているらしく、今日の夜もまたそのメンバーがテレビに出るらしい。そんなことを話していると昼休みは終わりを告げるのであった。



そして迎えた放課後



「じゃあ、また後でね〜」



といいながらゆきは自身が所属する部活へと向かっていき、特に何部にも入っていない私は教室でいつものように勉強をはじめるのであった。別に学校の近くに学生寮があるからそこで勉強してもいいのだが、それをしないのには少しわけがある。



だんだんクラスの中から人が消えていく中、私が発する音だけが教室に響き渡る。



そしていつもなら完全に人が居なくなった頃に起こる静かな時間。この静寂はなんとなく好きだ。



けれど、今日はその静寂はまだ訪れない。



完全に人が居なくなってから数分後、おそらくこの教室に向かってだと思われる急ぎ気味の足跡と声が聞こえた。やべー、遅れるーなんてきっとこの声の主は廊下を走っていると思うのだが、きっと先生に見つかったら怒られるよ、それ。
そして遠くから先生らしき人物からの廊下を走るなーとかいう声をBGMに教室のドアも音を立てて開いたのだった。



「「あ。」」



それはいつもうるさい隣のあいつだった。確か名前は…金村?



「えっと…成宮帰らないの?」
「あー、私寮だから。」
「へぇー、寮って青心寮だけじゃなかったんだ。」
「女子用の寮もあるよ。それより、金村急がなくていいの?」
「あ、やべー。携帯忘れたんだった。」



結構大切なものを忘れていった金村君。この2週間観察してきたが、野球部で確かエースになるとか言っていた気がする。と言ってもほかの人とは別メニューで走っているところしか見ないのだが。
…そして大切なもの忘れたなぁ。



「あ。ってか数学宿題出てるから頑張ってー」
「はぁ?俺そんなん聞いてねーぞ!」
「…授業中寝てたからね。」
「ってやべまじで行かないと!!」



ボスにおこられるーーーなんて金村は元いた場所へと走り去っていくのであった。



そんな彼の席には先ほど話題にしていた数学のノートがおいてあり、やはりドジなんだろうかと密かに思ったのは内緒にしておこう。よく見てみると沢村栄純と書かれていた。


本人目の前にして名前間違えたなぁなんて思いながら私はまた勉強を始め、外がだんだん夕焼けに近づいてきたのを見張らかって沢村の数学のノートを届けに野球部のグラウンドへとむかうのであった。



グラウンドへ向かうとまだ練習の最中だったので近くを通ったマネージャーの人にノートを渡して置いてもらうように頼んでその日は寮へと戻るのであった。…片目を隠した
可愛い系のお姉さんだった。2年生の方だろうか。




なんとなく久々に見た青道野球部への印象はいつも一緒にいる彼女と同じピンクの髪を二人見かけたと言うことだけだろうか。…けど去年みたピンクの髪ではなかったからきっとあれが片割れくんだろう。



第一話 end



翌日
(成宮ー、昨日はノートありがとな!あとなんか公式とかやり方まで書いていてくれたから助かったぜ。
あ、そうそう。金丸も一緒にやったんだけどさぁー)
と朝から元気に登校してきた挙句、数学の時間に、沢村が数学の宿題をきちんとやってきたことに対して先生が感動をして泣いて喜び、クラス全体から拍手が起こったのもまたどうかと思うのだが。そしてほぼ話したこともなかった金丸君になぜか感謝をされ、とりあえず1時間目からすごく疲れた。



そしてこれを期に沢村、金丸、吉川春乃ちゃんという野球部メンバーと仲良くなってしまったのは言うまでもない。



prev next