練習試合




その後鳴のピッチングをみんなで見た。



鳴のピッチングは前半に体力を抑え、変化球をうまく使っている…まあいつもながらのピッチングだった。シニアの時よりかは変わっただろうか。



「なぁ、成宮。お前とあの白頭って…」
「兄貴。」
「え?」
「自己中で我が儘でうるさくて仕方のない兄貴。」
「あぁ噂の。まぁけど、あの白頭に連れられて野球やってたんだろ?」
「まぁ練習相手だけどね。」
「へぇー。」
「…なに?」
「じゃあ成宮さんって降谷くんの球取れるのかなーって。」
「まあ見た限りだとコントロール甘めそうだから取れるんじゃない?ただスタミナ考えないで投げるから威力までは知らないけど鳴ぐらいだったらいける。」
「なんかすごいね。」
「そう?ま、普通の女子ではないかなー。」



そうしている間にも試合はどんどん進んでいく。



「!」
「ふーん」



途中鳴は青道側に見せつけるかのようにあるボールを放った。



「なぁ、今のボールって…」
「チェンジアップ…変化球だね。緩急の。」
「打ちづらいの?」
「まぁスピードが変わるから打ちづらいんじゃない?あーなんなら今度投げてあげよっか?」
「むむ。ぜひ。」
「じゃあ僕もお願いしようかなー。」
「いいよー。あの生意気に付き合っていたけど変化球だし同じとまではいかないだろうけど。」



じゃあお願いします。なんてゆきの弟はなぜそんなに律儀なんだ。



「あーどつきたい。あの自信満々の面」
「そういう時はピッチャー返しでね。」



威嚇のつもりです鳴は投げたのだろうが先輩たちは逆に火がついみたいだ。
その後青道が試合となり、みんなが移動して行く中私はさっきと同じ場所に座ってみるのだった。



「あれー誰かと思えば馬鹿妹じゃねーの。どうよ、久々に見たお兄様のピッチングはー?」



振り返らなくてもわかる調子のいい声。



「確かに球威はあがってたしピッチング自体はキャッチャーの人と合ってて良かったかもねー。」
「でしょでしょー。やっぱ、俺って天才!」



けど、あれくらいだったら多分わたしでも…って張り合っても仕方ないんだけど。



「ってかよー、お前まじで野球部入るの?」
「入るよー。なんで?」
「嫌べつにー。」
「ふーん。」
「なんでもいいけど今度は迷惑かけないようにね。」
「かけねーし。」



それから鳴は考え込んだかのように黙り込んだのだった。 



「丹波さん!」
「丹波ー」



結局、その日の試合は丹波さんがデットボールをくらい中途半端で終わることとなるのだった。私はとりあえずちょうどいいところにいた原田さんに挨拶だけをして再びグラウンドを見つめているのだった。


「大丈夫かなぁー」
「丹波先輩だよねー」
「そうだけど、お兄ちゃんも…」
「あー今日見に行く?多分抽選も近いし。」
「そうだね…あ。あとさ。ちょっと相談なんだけど…。」



結局、鳴の前ではマネージャーになるとか言ったものの、その後の丹波先輩のデットボールの件があり、まだ先生たちには伝えられていなかった。



「お前らも聞いていると思うが…」



私達が野球部の室内練習場に着いた時中から片岡先生の声が聞こえたため私たちは室内練習場の扉の外からその会話を聞いているのだった。…たぶん、扉の近くなので選手さんからは見えていないと思う。1
その中で聞こえたのは予選には間に合わないことと沢村達1年生にも投手として使っていくことだった。



「あの。片岡先生すみません。」
「ちょっとお話があるんですけど。」



その後中から出てきた片岡先生、高島先生、太田部長とともに私達は監督さんたちの部屋へ向かうのだった。



「それで、貴方達どうしたの?」
「実は…」


私はその場で正式にマネージャーになりたいことを伝えた。もちろん成宮鳴の妹である事と今まで鳴の練習相手だったことなどを伝え、マネージャー業はあまりやったことがない事などを伝えた。一方ゆきは部活がない日にお手伝いをしたいということを伝え、片岡先生は少し考えると時間をくれといい、数日後。私たちは春乃ちゃんなどほかの
マネージャーさんの前で紹介され、慣れたところで選手さんに紹介され正式にマネージャーとなったのだった。



「いくぜー 繭 」
「はーい。」

あれから数日後の練習後。
私は片岡先生から、マネージャー業はほかの先輩方がしてくれるらしく、ピッチャー陣と一緒に練習をしたりと、主にグラウンドで選手の補佐をすることを命じられた。
まぁ断る要素などなかったのでいいのだが、少しほかのマネージャーの先輩が気になり、一言伝えるとほかのことは任せてと快く言ってくれた。
ということで今日はキャッチャーなのですが。


「どうよ、俺様のボールは!」
「残念ながら、伊佐敷先輩ボールです。」
「次は俺だ。」
「はーい。」



相手は投手陣ではなく伊佐敷先輩と結城先輩。
丹波さんが倒れてから心配していたが、なんだか思ったより元気そうで安心した。



「結城先輩ストライク入ってます!」
「おおそうか。」
「なにー。おい 繭お前ずるしてねーよな!」
「してないですよー。っていうか先輩ばっかりずるいですー。」
「なんだよー、お前投げてーのかよ。」
「ちょっとこの間からいらいらが止まらなくてですねー」
「じゃあ 繭 ちゃん、俺がとってやろうかー。」
「まじですかー。本気でいってもいいです?」
「おー。」
「なんだ、 繭は投げられるのか?」
「あ、そっか。哲しらねーのか。こいつの球やべーぞ。」
「んじゃあいきまーす。」
「ってお前ピッチャーのグローブで今まで受けてたのかよ。」
「だってこれしか持ってないです。」
「なんかムカつくぜー。」
「えー。」



そういいつつも私は御幸先輩と緩めのキャッチボールを繰り返す。



「見るからには普通だが…」
「まぁ見てろって。」



「…っ。ナイスボール」



私の球は前回と同じく変な音を立てて御幸先輩のグローブに収まっていくのであった。



「あー、すっきりしたー。」
「お前やっぱすげーわ。」
「うむ。今度打ってみたいものだ。」
「いつでもお相手します。」


「んだー、川上。打たねーなら俺とかわれー。」
「あーサイドスロー先輩。じゃあサイドスロー先輩こっちで投げてくださいよ。」
「え?は?」
「先輩のピッチング間近で見れるなんで!!」
「はは。よかったじゃねーか、ノリ。」
「え、何を!」
「先輩今度ぜひ教えてくださいね!」
「え、あ、はい。」
「おらー 繭 俺は投げるぞー。」
「あーちょっと待ってくださいよー。まだ構えてませんって。」



こうして私のマネージャーとしての道は始まったのである。


第8話 END


(ところでサイドスロー先輩のお名前がわかりません。)
(あー唐揚げって呼んでやれ。)
(え?唐揚げ?)
(うむ。それでいい。)
(ぷはは。)

(よくないですー!!!)


その後、無事にノリ先輩と呼ぶことになりました。


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