兄と…




「もしもーし。 繭ー起きてるー?もちろん起きてるよねー?あんねー、今日俺青道で試合すんの。でさー、お前今青道にいるんだろ?母さんが教えてくれたからね。 繭ちゃんは青道の寮にいるって。だから、来るよね?来ないとどうなるかわかってるよね?
んじゃ、そういうことで。 」



という電話があったのは朝の7時。
うん。今日の朝は華やかだ。




・・・・


「ねぇ。ちょっと遅いんだけど、どういうこと?」
「知りません。」
「はぁ?それがお兄様に対する態度?」
「はい?まずお兄様なんて呼んだ事なんてないんですけど。」
「はい、生意気ー。調子乗ってる。ムカつく。はーこいつと同じ血が流れてるとか想像しただけで嫌になるし。」
「それはこっちも一緒。ったくなんであんたなんかと。」
「あーあ。昔はお兄ちゃんってついてくる可愛い妹だったのになぁ。」
「それはただの幻だったんじゃないんですか。」



今私達は沢村と稲実の人の目の前で喧嘩をしている。
…まぁ話は少し前に戻るんだけど。
あの電話からとりあえず制服に着替えて稲実のと青道が試合をしていたグラウンドに来た。
そこでなんとなくピッチングなどを見てたり暇を潰して試合が終わるのを見ていたんだ。(サイドスローの先輩始めてみた。)
それが終わったらみんなが移動を始めたので最後まで片付けをしていた沢村の所に近づいて昨日御幸先輩に渡したノートの話とか課題の話をしてそろそろ移動しようかってときに後ろからこの二人に話しかけられたんだった。



「ねぇ、そこの元気そうな君。」



もちろん沢村は自分の事だとはわかったみたい。けど、私はその言葉には振り返らなかった。



「俺っすか?」
「あー、そうそう。それと隣の女の子。」



…これは気づいていないのか。
…いや、コイツはわかっていってる。わかってて呼んでるんだ。



「あれ、女の子って行ったのに反応なし?」
「おい、呼ばれてるぞ!」



…あ、そっか。沢村は知らないんだっけ。



「なにか御用ですか、成宮鳴くん?」



とりあえず私は笑顔で振り返って保護者代わりになろうであろう鳴とバッテリーを組んでいる原田さんとわがまま兄貴を見たのだ。そして鳴はその後沢村に何事もなかったかのように今日は降谷はでるかとか聞いていてそれを聞き満足すると今度は私のほうを見て相変わらずの口調で私に言うのだった。ちなみに最初の言葉は「元気だった―?成宮繭ちゃん?」とファンが聞いたら泣いて喜びそうな笑顔とついでにハート付きの言葉だ。


…で、まぁ今に至る。





「おい、鳴。そろそろ…」
「何、雅さん。今ちょっとじゃましないで。」


「おい。成宮?どうしたんだよ?」
「うるさい。沢村。黙って」



これは似たもの兄弟というのだろうか。
…誰もわたし達を止められるものはいなかった。



「しかもさ、何あの“友達が欲しい”って。お前はいつも俺の後をちょこちょこ歩いてきたらいいじゃん。そうやって中学までやってきたじゃん。」
「は?何それ。何様って感じなんですけど。大体、鳴がいつもいつもクラスに来ては喋っていくもんだからクラスとはなかなか馴染めないし、野球部ばかりだし。周りは鳴に近づきたい女の子ばっかりだし。」

「どうせ今も野球部ばかりなんだろ。そうだ。絶対そうだ。」

「そうだとしても鳴がいないから自由だもん。うるさい人いないから静かだし。」

「ってかなに?そんなにクラスと馴染んで何がしたいわけ?」

「ただ学校生活を楽しみたいだけじゃん。私の学校生活を鳴がどうのこうの言えないじゃん。」

「はぁ?あ、わかった。絶対彼氏が欲しいんでしよ。そうでしょ。そうだよね。俺モテるから羨ましいんだ。」

「寝言は寝ていいなさいよ。そんなにお望みなら高校生活で絶対彼氏作ってやるわよ。さすがに鳴みたいに二股まではいかないけどね。」

「あーもう生意気。作れるもんなら作ってみなよ。絶対無理だね。ってか俺がいつ二股したよ?ほれ、言ってみ?」

「あれは小学生の時だったかなぁ。ほら、隣の家の美嘉ちゃんと同じ小学校だった朱音ちゃんに好きって言って同じ物上げてたじゃない。」

「はぁ?そんなことしてねーし。」

「どうだか?っていうか絶対彼女もそうだけど、いい加減バッテリーに迷惑かけんのやめなさいよ。」

「そんなことないし。」

「ある!鳴とバッテリー組むってだけで私がどんだけ阿部君(シニア時代のキャッチャー)から相談受けてたか知らないでしょ!」

「はぁ?俺なんもしてねーし。」

「相手のデータ、興味ない人の事は見てくれないんだけど…って阿部君ずっと言ってたんだからね。」

「そんなの俺の仕事じゃねーじゃん。」

「なくてもバッテリーなら見ときなさいよ。覚えろとは言わないけどもしキャッチャーの人倒れたら終わりじゃない。」

「はいはい。以後気を付けますー。あ、ってか彼氏を作るのはご勝手にって感じだけど一也だけはだめだかんね。」

「あー御幸先輩かー。いいよねー、御幸先輩かっこいいし、キャッチャーだし。鳴よりちゃんとボールとってくれそうだし。」

「だから、だめだっていってるじゃん。」

「あーもう。うるさいなぁ。」

「絶対ダメ。一也だけには渡さないんだから。」




「俺に何をくれんの?」



「だから、一也に 繭は渡さないって。 」



「「…って、は?」」



明らかにわたし達じゃない第三者の声が聞こえた。その人は私が最近よく耳にしている声。



「よ!鳴と 繭。」



それは先程から名前が出てた御幸先輩だった。



「一也だー。」



…いやいや鳴そんなかわいい声じゃねーだろ。



「ってかお前ら喧嘩すんのもいいけど場所考えろよ。」
「いやいや、だって 繭が悪い。折角稲実に来いって言ってたのにさぁ。 」
「鳴と一緒の学校なんて絶対行かない。」
「はぁ?だから、お前はいつまで経ってもバッティング下手なんだよ。」
「それ鳴がいう?私よりコントロール下手なくせに。」
「それはお前がずーっと俺のバッティングピッチャーやってたからでしょ。しかもお前最近の俺の球見てねーじゃん。あーあ残念。お前が弟だったら良かったのに。」
「弟だったら絶対キャッチャーさせられた気がする。」
「えーいやなの?」
「よかった。女で。あ。けど弟だったら絶対鳴と同じぐらいモテたかもー。いや、それ以上かなぁー」
「はぁ?」



「はいはい。そこまで。」



わたし達の言い争いは先程からいる御幸先輩に止められる。



「いくぞ鳴。俺こいつ嫌い。」
「あ、そっか雅さん。去年の夏ー。」



そのご、鳴は雅さんとやらにつれられてその場を離れていくのだった。



「しっかしお前って案外性格変わんのな。」
「え、そうですか?」



「じゃあ一也。また後でな!…そこのブスな女も。」



やっぱり相変わらずムカつくやつだ。



「……あ、そうだ。鳴!」



鳴を見たらなんだか悩んでいたことがどうでも良くなった。



「なんだよ。ば繭。」




「…もう負けないからー。」


「…はぁー?」


「鳴に勝ったことなんてないけど、次はもう負けないからー。」



「どうやって勝つつもりだよー。大体お前試合でねーし、その様子だと野球部のマネでもねーじゃん。」



「私今日から野球部のマネージャーするから。だから鳴にはもう負けない。」



その言葉にここにいた全員が驚いた様子だった。



「はぁー?そんなの聞いてねーし。」



「だーかーらー、今決めたの。」



「ばっかじゃねーの。」



「いいよ、ばかだから。誰がなんといおうとマネージャーするから。
鳴の許可なんていらないもんねー。」



さんざん叫び尽くした私の息は少し上がっている。



「…はっ。上等じゃん。せいぜい頑張って悪あがきしなよ。馬鹿妹。」



「…はは。絶対鳴から点とってやるんだから。」



こうして壮大な兄弟喧嘩は始まるのであった。


第7話 end


(っということでよろしくおねがいします。)
(…ぷはは。 繭ちゃん最高)
(ヒャハ。お前本気で点とるんかよ。)
(いやいや先輩達ならいけると思いまして。)
(こらこら俺らは?)
(まぁ期待してまーす。)
(…棒読み)



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