水色少女日和 | ナノ





第7話 プールの時間




私たちは今、森の中を歩いている。


服装はみんな水着にジャージ。


さぁつきましたよ。なんて先生が言った先に待っていたのは、


先生特製E組用プール



第7話 プールの時間



みんなが飛び込んでいく中、私はその様子をただただぼーっと見ているのであった。

「繭―早く来なさいよ?」


下から私のことを呼んでくれるのは莉桜ちゃん


「…無理。」


「え?なんで?」


「私泳げない。」


「えーーー。」


莉桜ちゃんがあまりにも大きな声を出すものだからいつの間にかみんながこっちをみるのであった。


あれから岩場を少し移動して低めの場所まで来た私をなぜかみんなは必死に中に入れようとしているのであった。


「ほーら早く。」


「いやだから無理だって。」


「いいからいいから。」

そういって今度はひなちゃんが引っ張っていくのであった。


「やーだー。」


「ほら。繭、手だして。そこに座って。」


今度来たのはめぐちゃんだった。


「うん。」


とりあえず私はめぐちゃんの手を握りながら岩場に座ることにした


「とりあえずこのままゆっくり入っておいで?」


「うん。」


めぐちゃんに言われるがままに入っていった私。


「あ、入れた。」


そんな私をめぐちゃんは支えながら浅い方へ連れて行ってくれるのだった。


「はい。立てる?」


「ん。なんとか。ありがとめぐちゃん。」



「とりあえず無理しない程度にねー。じゃあ私泳いでくるわ。


…あ、あと。」


“磯貝くんさっきからずっと見てるよ。”


めぐちゃんは最後に耳元でこういってから泳ぎに行った。


めぐちゃんがいってから悠くんをちょっと探してみると悠くんは泳いでいた。


「…っぷぁ」


「あ。」


なんか悠くんを見てたらほんと…




「水も滴るいい男…ってか繭ちゃん?」


「ままままま、前原くん」


考えていたことがなんか言われてしまったので隣をちらっと見てみると前原君がいた。


…びっくりするじゃん。


「…え、あ。いつからそこに…」


「んー片岡いってからすぐぐらいかな。」


…じゃあ


「最初から?」


「多分そう!」


…いやいや。そんなのって…



「あ、磯貝気づいたから俺泳ぎに行くわ。ばいばーい」


っていきなりどっかに行ったし。



なんて思ってると


「ねぇ前原と何話してたの?」


なんて悠くんがくるのだからこれまたびっくり。


「いや…別に」


「繭。顔赤いよ?」


「大したことじゃないもん。」


「じゃあ教えて?」


うっ…今日は意地悪ゆうくんだなぁ


「悠くんが…」


「僕が?」


「水も滴るいい男だなぁって話。」


ゆうくんの顔を見れなくて顔を背けて話をした私。


「…。」


何も言ってくれないゆうくんの方を見てみると…


「あーもうみるなって…」


ゆうくんの顔は真っ赤になっていた。


「ふふ…」



「もう…」


それからは二人で笑い合っていた。



なんてある夏の暑い日のお話。






それから少しして今度は寺坂くんが暗殺をするので放課後プールに来て欲しいといってきたのだった。




「よーしそうだ。そんな感じでプール全体に散らばっとけ。」


「偉そうに…」


偉そうに…確かにその通りだとは思う。


なんだか言ってる言葉がすべて借り物のように聞こえるのは気のせいなのかな…



「疑問だねー僕は。君に他人を泳がせる器量なんてあるのかい。」


そういった竹林くんをプールに落とした寺坂くん


「すっかり暴君だぜ寺坂のやつ。」


「あーあれじゃ1・2年の頃と一緒だな。」



なんて声もちらほら聞こえてくる。



「繭、大丈夫?浅いとはいえ、水の中だし…」


「あーひなちゃん多分大丈夫だよ!」


「まぁなんかあったら磯貝くんいるしね。」


…なんでそこで悠くん。


「うん//」



私がいるのはダム?の近くだけど…まぁ大丈夫大丈夫。





「なるほど…先生を落としてみんなに刺させる計画ですか。」


そんなことをしていると先生が来た。



「ずっとてめーが嫌いだった。消えて欲しくてしょうがなかった。」


「えぇ知ってます。暗殺のあとでゆっくり二人で話しましょう」


そういったのと同時に寺坂くんはピストルを引くのだった。


ドガッ


「え?」


その音と共に私の隣にあったダムが破壊されて私たちは流されていくのであった。


「いたっ」


その際に何か当たったのだろうか…足がすっごくいたい…


けどその間にも私は誰にも気づかれることなく流されていくのであった。


そして同時に私も意識も落ちていくのであった。





「ん…」



あれからどれくらいの時間が経ったのだろう…



「…いたっ」



足を見てみると右の足首が結構膨れていた。



「あーあ。やっちゃった…」



とりあえず


「戻ろう…みんなのところに。」




…もうひとりは嫌なんだ。。。







Side


いとなくんの件も落ち着いてみんなでカルマくんに水をかけていた時に僕は気づいてしまったんだ…


「ね。繭…え。」


大事な片割れがここにはいないということに。




「なぁ渚…繭知らね?」


…あーやっぱり磯貝くんも気づいていなかった。



「僕ちょっと探してくる。」


「俺も行く。」


「なにゅ。先生も…」


僕たちは走り出した。



「先生は先にみんなと教室戻っていて!」


「大丈夫。なんとなく場所はわかるから!」




大事なものを探しに…







「…痛い。」



あれから少し歩いてみたものの一向に場所がわからない。


「きゃっ…」


そのままの状態で再び一歩を踏み出そうとしたもののやはり足はほぼ限界だったようで私はまたそこにころんでしまうのであった。




「もうやだ…



渚…



悠くん…



助けて」





そう声を出した時だった。



「あ、磯貝くんいたよ!」


「繭―!」



…良かった。



そう安心したとたん、私の意識は再び落ちていくのであった。


最後に大好きなぬくもりに包まれるのを感じながら。






次に目が覚めたのは校舎の中の保健室だった。


「あれ?私…」



「あー繭。目が覚めたのね!」


入ってきたのはビッチ先生。



ふと左手があったかいので見てみるとそこにいたのは



「悠くん…」


制服姿の悠くんが眠っていた。


「あー磯貝?ずっとついてたみたいよ。」


「ふふ…ありがとゆうくん」



…本当にいつも助けられているなぁ。



「あーそういえば、繭。医者の話によると…1週間ほどあるいたらダメみたいよ?」


…え。


「え、なんで?」


「なんか、無理に歩いたのがダメだったみたいで骨までに影響は出ていないけどその近くには影響していたみたいであるかないでくださいってことでしばらくは繭…車椅子の生活みたい。」


…うそ。


「だから、保護者の人に連絡しないとってさっきから烏間があんたの家に電話しているみたいなんだけど、繋がらないって言っていたわ。」


「あー無理だよ。だってお父さんしばらく出張してるから。」


「えーじゃあどうすんのよー」


…どうしようかなぁ。


渚にお願いしてもいいけど、あの家にはお母さんいるし。




「じゃあ俺んちくる?」


「え?」


「家帰っても誰もいないんだろ?…まぁどうするかは任せるけど。」


いつから話を聞いていたのだろう。


気づけば目の前に悠くんが起きていた。


「そうよ。そうしなさい。」


そしてなんかビッチ先生も乗り気。



「…いいの?本当に。」


「もちろん。」



こんな感じでなぜか悠くんのおうちにお邪魔することになってしまった私。


とりあえずまずは自分の家に荷物を取りに行くことから始まるのだった。



「はい。ついた。」


始めて案内してもらった悠くんの家への道のりは私の家へ帰る通学路とは全然違ってすごく楽しかった。


「ちょっとぼろいけど、ごめんな。」


なんていう悠くんのおうちはマンションの一室で、悠くんはぼろいといったけど私からすれば普通な気がするんだけど。


「よっと。」


悠くんはビッチ先生がくれた車椅子をドアの隣に置いたと思ったら乗っていた私を玄関にあった段差のところに座らせてくれた。


そして“そのままちょっと待っててな。”というと“ただいまー”といいながらリビングらしきものへ入っていくのだった。


「綺麗なおうち…。」


まだ玄関しかはいっていないが、このおうちは私の家とは違っていろいろなものがあるなぁなんて思いつつ私はちょっと観察をするのだった。



「「おねえちゃんだぁれ?」」


だからだろうか、私はまったくこの二人に気づくことができなかった。


声がする方向を見てみるとそこにいたのは悠くんとそっくりなアホ毛をもつ小さな男の子と女の子。


「えっと…」


この場合なんといえばいいのだろうか。



けどそんなことよりも、


「わたしはあおいっていうの。」


「ぼくはしゆうっていうの。」


「こら、しゆうまねしちゃや。」


「まねしたのはあおいでしょ。」



目の前の光景がなんか懐かしすぎた。


−なぎさばっかりずるい−


−ずるくなーい。これはぼくのものなんだもん−


あの頃はこの先のことなんて考えてなかった。


お母さんがいて、お父さんがいて、渚がいて…ちょっと戻りたいなぁなんて…



「「おねえちゃん、なかないで。」」


「え?」


そう言われてやっと自分の頬が濡れていることに気づいた。


「あれ、え。わたし…」


止まって欲しいのになかなか止まらない涙。



ぎゅっ



「え?」


なにが起こったのだろう。


誰の体温も感じなかったこの時間で気づけば左右からそれぞれ体温を感じるのであった。


「「だいじょうぶ。…だってずーっといっしょだから」」


この言葉を聞いたとたん、私の中でさらに何かが溢れ出る気がした。


それがなんだったのかわからないけど、とりあえずこの時はありえないくらい泣いていたのだけ覚えている。



「なぁ母さん。俺、繭のことあまり知らないや…」


「そんなもの。これから知っていったらいいの。…誰にだって触れたくない部分なんてあるのだから。」


だから悠くん達がこんな会話をしているなんて知らなかった。





「なんか、ごめんなさい。」


「いいのよ。泣きたいときは泣かなきゃ。」


結局あのあとなかなか泣き止まない私の涙が映ったのか双子ちゃんも一緒になって泣いてしまい、悠くんとお母さんと女の子が泣き止ませるのに必死になってくれたのだった。


で、今はテーブルに向かい合って座っているのだけど。


あ。双子ちゃんは悠くんとお風呂ね。


「悠馬から足のことは聞いたわ。…治るまでしばらくいていいのよ。」


「あ、ありがとうございます。」


「…で、よかったら教えて下さる?先ほどの涙について。」


…やっぱり聞かれるんだ。


「私、実は双子の兄がいるんです。…小さい頃の記憶なんてあんまり覚えているわけはないのに、なんだか見ていたら懐かしく思えて。」


「あーもしかして最近転校してきたって…あなた?」


「4月から今の学校に通わせていただいてます。」


「…いろいろ大変だったみたいね。」


「あーなんかすいません。初対面なのにこんなお話…」


「そんなの気になさらなくて大丈夫よ。」


そういい綺麗に笑った悠くんのお母さんはどこか悠くんにそっくりで、あぁ家族なんだなぁって思った。



「こーらーしーゆーうー」


あれからお母さんと宿題が終わったとかいう女の子と一緒にお茶をしながら話していたら、いきなりそんな声がお風呂場から聞こえ、その次にはこちらへ向かってくる足音が聞こえた。


「あ、おねえちゃんみーっけ。」


「え。」


その声と共に服は着ているものの髪の毛がすごく濡れた状態で私に飛びついてきた双子ちゃんの片割れくん。


片割れくんの髪についていた水分は私が着ていた制服のシャツがどんどん吸っていったため、あー濡れていくなぁなんてのんびりと考えていた。


「こら、詩悠。ちゃんと拭かないと。」


そんな声と共に次にリビングに入ってきたのは下だけを履いた悠くんだった。


もちろんさきほど思っていたことなんて吹っ飛んでしまった。


「えへへ、ごめんなさーい。」


そう言って私の上から降りていった…えっとし、しゆうくん。


けど、今の私にはそんなことはどうでもよかった。


だって悠くんがそんな格好でくるものだから、もちろん私の目線の先にあるのは悠くんの立派な腹筋なわけで…って何考えているんだろう私。


「ったく、早くしないとテレビみれねーぞ。」


「やだぁ。ゆーにーのけちー。」


そう言って戻っていった悠くんは先ほどのことなんて気にしていないのだろう。


けど私からしてみては初めて見る悠くんの体に顔が赤くなって仕方がないのだった。



あのあと、なんの計らいかわからないけど、今日のお風呂は女の子と一緒に入ることになった。


「足元気をつけてくださいね。」


なんかこの子しっかりしててこっちがいろいろ申し訳なくなってしまう。


「あ、ありがとうございます。」



お風呂から出るととりあえず磯貝家の皆さんはあたらめて自己紹介をしてくれるのであった。


お母さんの侑奈さん

長男の悠くん…悠馬くん

長女の悠夏ちゃん

次女の碧悠ちゃん

次男の詩悠くん


なんかお父さんしかいない私の家庭とはまた違って暖かい家庭だなと思った瞬間だった。



「さて、寝るか。」


「う、うん。」


今、私は悠くんのお隣にいます。


「ごめんな。布団しかなくて…」


「ううん。私こそ今日はいろいろありがとう。」


「そういや、足どう?あと、渚には言った?心配してたみたいだけど。」


「今は全然平気。渚にはここに来る前にメールしたよ。

…あ、悠くんのおうちにいるってことは言ってないけど。」


「はは。まぁ渚のことだから明日気づくだろうな。」


「うん。…ってか、なんかこうしていると修学旅行がなんか懐かしく思っちゃう。」


「あーみんなで布団だったもんな。あれって女子も?」


「うん。みんなでビッチ先生の過去の男の人の話を聴いたり、みんなの恋ばな聞いたりって感じだったよー」


「男子部屋もそんな感じだったかなぁ。」


「ふふ。…また行きたいね。みんなで。」


「そうだなー。」



それからお休みのキスをして私たちは眠った。



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