水色少女日和 | ナノ





第3話 修学旅行の時間




「渚ー、繭ー。班の人数揃った?」


…なんの班?


「片岡さん。」

「あ、めぐちゃんおはよー。」


朝、登校した私たちを待っていたのはめぐちゃんのよくわからない一言でした。


「おはよう、繭。あー、決まったら私か磯貝くんに伝えてね。」



「「…班?」」


どうやらそれは隣の渚も同じもよう。



「渚たち忘れたのー?来週の修学旅行よ。」


そんな私たちにカエデちゃんは京都のガイドブックを持ちながら教えてくれた。


…あーもう来週なんだ。


「まったく…3年生も始まったばかりのこの時期に総決算の修学旅行とは片腹痛い。

…先生あまり気乗りしません。」



なーんて言ってる殺せんせーの荷物はありえないくらいの量が見える。



なーんだ、


「「「うきうきじゃねーか」」」


第3話 修学旅行の時間

「おはよ。繭.。」


「あ、おはよー悠くん。」


「そういや昨日忙しかったみたいだな、マスター言ってたぜ。」


「えー結局マスター悠くんにでんわしたのー。」


「いや、たまたま俺がかけたってほうが正しいのかな?」


「昨日ねーやばいくらい人いたんだよ!」


いつもと同じように席にカバンを置いたあとはまだ来ていない倉橋陽菜乃ちゃん…通称ひなちゃんのお席を借りて日課になりつつある悠くんとのお話。



「繭―。おはよー」


「え、うわぁ。もう、ひなちゃん!」


「えへへーごめーん。」


そしていつものように飛びついてくるひなちゃん。



「あ、そうだ!繭」


「ん?ひなちゃんどうしたの?」


「繭、修学旅行の班ってもうきめたー?」


「んーん。まだー。それさっきめぐちゃんに言われたところー。」


「実は私もまだなんだよねー。」


「あ、そうなの?」


「だからさー繭。一緒の班なろうよ!!!」


「うん!私も一緒の班になりたいなー!」



さっきまで話していた悠くんをそのままにして私はひなちゃんと修学旅行の話で盛り上がっていた。


「なになに何の話―?」


「実はねー」


そしていつの間にかひなちゃんの後ろの席の桃花ちゃんも話に入り、女子3人で盛り上げるのであった。




「磯貝おはよー」


「おはよー前原。」


「…ありゃ、繭ちゃん取られちゃったね。」


「…うん。」


「…なぁ磯貝。お前修学旅行の班どうすんの?」


「まだ決めてない。」


「…じゃあさ。」



それから少ししていつの間にかきた前原くんが仕切ってくれて修学旅行の班は出来上がるのであった。


メンバーは、

悠くん
前原くん
木村くん
めぐちゃん
岡野さん
ひなちゃん
桃花ちゃん



うん。今からすごく楽しみ。




「ねーねーどこいきたい?」


「えー八つ橋食べたい。」


「こら繭。今は場所の話をしてるの!」


「あー私も八つ橋たべたーい。」


「ひなちゃん!やっぱり美味しそうだよね!!!」


「うん!あ、繭。そういや駅前に新しいクレープ屋さんできたの知ってる?」


「知ってる知ってる!私まだ行ったことないんだよねー。」


「あ、私あそこ行ったよ!美味しかった!!!」


「よし、繭。今日帰りに行こう!」


なんてだんだん話がそれていったような気がするけど気にしない。


「こーら、繭。クレープもいいけど早く修学旅行のやつ決めようぜ。」

頭にデコピンされたと思ったらいつの間にか目の前にいた悠くんに怒られた。


「まったく、ひなも早く決めちゃわないと行けないわよ?」


ちょっと呆れ顔のめぐちゃんも一緒に…



その後、学級委員の二人のおかげで私の班はスムーズにいろいろと決めることができた。



それから少しして殺せんせーがなんか辞書のようなものを持って教室へ入ってきた。


「一人一冊です」


そう言ってみんなに配ったのは修学旅行のしおり


「わっ…重い。」

「…辞書だろこれ。」


内容をちらっと見てみるとイラスト解説で色々なものがかかれていて、どうやら先生はきのう徹夜して作ったみたい。





当日


新幹線を前にどんどんと乗車していくA〜D組の生徒たち。


「うっわ。A組〜D組までグリーン車だぜ。」
「うちらだけ普通車。いつもの感じだね。」


「うちの学校はそういう学校だからな。入学時に説明したろ。」


そういったのは先生だろうか…うん。生徒ではないな。



その後私たちも普通車に乗り込み、電車は発進するのであった。


楽しくしゃべりながら乗る生徒と、相変わらずどこでも仕事熱心な烏間先生と服装があまりに派手すぎて怒られているビッチ先生と共に。


あ?殺せんせー?

殺せんせーは…


「駅ナカスイーツを買って乗り遅れたんだって。」


って渚が教えてくれた。


電車が動いて人生ゲームをしている人もいれば暗殺の事を話し合っている人がいたりとみんな思い思いの時間を過ごしている。


私はというと…


「ビッチ先生元気出してー。」


「うぇーん」


「…すまんな汐見さんだけこの席になってしまって。」


「いえいえ大丈夫です。」


そうなんです。先生方と同じところに座っているんです。


「繭―――。」
「わっ…もう」


ビッチ先生がいきなり抱きついてくるものだからちょっとびっくりしたじゃないか。


「…そういえばあんたって意外と胸あるのね。」


…いきなり何を言うんだビッチ先生。


「え?あ、絶対ないです。」


「ふーん。」


そう言いながらも先生の手はなぜか私の胸に。


「おい」


「はーい。」


烏間先生が止めてくれたからよかったものの、ちょっと間違えたらあぶないひとじゃないか。



「あ、そうだ繭。ちょっと後ろ向きなさいよ。」


「え?いいけど…どうしたんですか?」


「まぁまぁ。」


そういうとビッチ先生は自分のバックから一つのポーチを取り出し、そのポーチからゴムなどを取り出した。


そしてあまりに暇だったのだろうか、ビッチ先生は私の髪をいじり始めるのであった。


私の髪は渚と同じ水色で長さは有希子ちゃんより少し長い。


その髪に先生はたくさんの三つ編みを施していき、しばらくしてそれを解いたりと専門の機械がなくてもできるような髪型を教えてくれるのであった。



「…よし。こんなものかしらね。」



結局、その後の髪型は結局三つ編みにした髪を後ろでポニーテールのように結び前髪は片方に分けて黄色のピンで留めるのであった。


「うわぁー。…別人みたい。」


「そうよ!女は化けるんだから!」


そういうのには理由があって、

顔は先生が持ってきた化粧品でお化粧をしてもらったため、ビッチ先生に見せてもらった鏡に映っていたのは誰だろうと思うくらい別人になった自分だった。


頬にはチークを唇にはグロスを…なんか凄すぎて言葉にできない。


「ほら、さっさと見せてきなさいよ。」


…誰に?なんてそう思うのはただ一人だけ。


「え、無理無理。」


「いいじゃなーい。行ってきなさいよ。」


しかしあまりにも私がそこから動かないのでビッチ先生は私を無理やり渚のいる場所まで連れて行くのであった。



「なぎさーみてみてー」


行ってみると渚は班のみんなとトランプをしていた。


「なーにビッチ先生…って」


「あー繭ちゃんかわいいー」


「えへへ。」


「でしょでしょ!」


カエデちゃんを筆頭に急にこの班のところが騒がしくなったのだからみんなが少しずつ集まってくるのはなんか自然と起こった。


「繭―かわいいーーーー」


相変わらずいつものように抱きついてくるひなちゃん。


「えへへ。自分でもびっくり。」


「ねぇねぇ磯貝くんには見せなくていいの?」


「悠くんは…はずかしいからいいの。」


「えーでも。さっきからずーっとこっち見てるよ?」


…え?


「え?」


そう思いながら悠くんのところをみると前原くんと一緒になってこっちを見てる悠くんと目があった。


「あ。」


一瞬だけ目が合ってそれた視線。


隣の前原くんは一体何のことかわかったみたいで私の名前を呼びながら手を振ってくるのであった。


私も前原くんに手を振り返し、隣の悠くんをもう一度見てみると顔を真っ赤にしながらも一緒に手を振ってくれるのであった。


その後、渚やクラスのみんなと写真を撮るうちに電車は京都へ到着するのであった。






A組〜D組の人が高級旅館にお泊まりなのに対し、こちらは古びた旅館。


しかも中では先生がグロッキー状態になっていた。


「せんせー乗り物酔いするんだ。」


「そうみたいだねー。」

しかも先生、この大荷物で枕を忘れたらしく、もう一度学校へ戻るんだとか…




「どう?神崎さん見つかった?」


「あれ?有希子ちゃんどうしたの?なにかなくした?」


「あー繭ちゃん。日程表がないんだって。」


…話に聞けば有希子ちゃんは独自で日程をまとめていたらしい。


「えー大変じゃない。」


「どこかに落としたのかな…」



そんなに大したことではないんだろうなぁ…ってこの時は多分全員が思っていたんだろう。





しかし、次の日事件は起きてしまった。


それが起きたのは修学旅行2日目。



そのとき私は何も知らずただただ自分の班の暗殺を成功させることだけをかんがえていた。


私たち1班が指名したのは嵯峨野トロッコ列車の名所の一つ保津峡の絶景が見える場所。


「あ、ひなちゃんみて!」


「あ、川下りしてるよ殺せんせー。」


もちろんこのひなちゃんと私の誘導も計算上のこと。


そしてスナイパーの合図は殺せんせーが船を見に窓から身を乗り出す瞬間!


ドシュッ


その音が殺せんせーへ銃をうったことを物語った。



しかし、先生は八ツ橋でそれを止めた。


「おや八つ橋に小骨が。危ないこともあるんですね。」


ニヤニヤしながら私たちをみる殺せんせー。


私たちは顔を背ける他なかった。


そして列車は再び出発し、先生は2班のもとへ旅立っていくのだった。


「あーあやっぱ殺せなかったか。」


「しゃーねーよな。まさかの八ツ橋で止められるなんて思ってねーし。」


「だよね。」


そういう1班のみんなは悔しそうな感じ。



「繭―。お土産売ってるよー!」


「え、ひなちゃんもう買うの?」


「うん!だって美味しそうじゃん。」


…おいしそうって。。。



「あーけどなんかアイス食べたくない?」


そういう桃花ちゃんの目の前には抹茶アイスの文字が。



「アイスいいねー。」


「ねーめぐー。アイス食べない?」


まぁみんな食べたいみたい。


「え?まぁいいんじゃない?ね?磯貝くん。」


「うん。いいんじゃないかな?俺はいいけど、前原はくう?」


「俺は食おっかなー。」


「じゃあみんなでかいにいこー!」



そう決めてからの行動は早く。


私たちは悠くんめぐちゃん以外アイスを食べるのであった。


「んーおいしー。」


「繭って本当にうまそうに食うよな。」


「えー美味しいよ?」


「良かったな。」


「はい、悠くんあーん」


「え?」


「ほら。早く。」


いきなり言ったから困ったのだろう。


悠くんは少し迷いながらも私のアイスに口を付けるのであった。


「ん。うま。」


「でしょ!」


「にしても…」


…間接キスごちそうさま。


なんて悠くんが耳元で言うんだから私の顔は真っ赤になってしまった。



その後私たちは清水寺へ向かい普通の中学生のように観光するのであった。



ちょうどお昼を過ぎたころだろうか。…あれが起きたのは。


「清水寺って私初めてなんだよねー。繭は行ったことってある?」


「んー。ないかなぁ。桃花ちゃんは?」


「私もないかなぁ。」



私はひなちゃん桃花ちゃんと一緒に話しながら歩いていた。

その後ろには木村くん。


そして少し前にはめぐちゃん前原くん岡野さん悠くん。


「ひなたち遅れないようにねー?」


「「はーい。」」


「そういえばこの前ねー。」


「え、それやばーい。…っていたっ。」


なんてふたりの会話を聞いていたとき、いきなり私の頭にありえないくらいの痛みが襲った。しかもその痛みは異常な程で、あまりの痛さに立っていられなくなった私はその場にしゃがみこんでしまうのであった。



「ちょっ。」
「俺あいつら呼んでくる。」


桃花ちゃんたちが何かを言ってるけど聞こえない。


−茅野と神崎さんを助けなきゃ−


そのとき私の脳内に流れたのはその言葉だった。



少しするとだんだん痛みは引き、気づけば目の前に悠くんたちが来ていた。


「繭?おい?」



「悠くん…」



「大丈夫か?立てる?「…渚が。」…え?」


「渚になにかあったみたい…」


私がそう言ってからの悠くんたちの行動は早かった。


まず悠くんは渚に電話をかけてめぐちゃんは
殺せんせーに連絡をしていた。


「だめだ。渚のやつ繋がらねー。」


「殺せんせーも何も知らないって…とりあえず今3班のところらしいからいますぐ向かうとは言っていたけど。」


やはりどちらも繋がらなかったみたい。


「とりあえず向かう?…ここじゃあ人多いしさ」


誰が言ったのだろうかわからないがとりあえず私たちは先程までいた場所を移動してどこかのカフェへ入っていくのであった。



「大丈夫だって。だって殺せんせーが向かったんだから。」


「そうそうあれで一応担任だしな。」


そういってくれたひなちゃん前原くんのことを信じつつ私はなんとなく目の前にあった悠くんの手を握るのであった。


私が握ると少しびっくりしてたものの悠くんは握り返してくれてそれで少し落ち着くことができた。



その後渚から連絡が入り、先程までの状況の説明などをしてくれて今からカエデちゃんたちも無事だということを教えてもらった。


それをみんなに言ったらよかったってみんないってくれたからなんか余計な心配させてしまったような気がした。



その後旅館に集合した中に渚たちがいてとりあえず私が人目も気にせず渚に抱きついたものだから周りのみんなは少しびっくりするのであった。








私がお風呂から上がってくるとなぜかみんなで殺せんせーを暗殺することになっていた。


…え、一体何があったの?


「あ、繭、今お風呂上がったの?」


すると殺せんせーを探していたのであろう悠くんが先生用ナイフを持ったまま近くにいた。


「え?うん。」


「っていうかお前髪ぐらい乾かせろよ。」


「え、だって…」


「だってじゃない。」


そういうと悠くんは私の肩にのっていたタオルで私の髪を乾かし始めた。


「ん。悠くんなんか慣れてるね。」


「そうか?まぁいつも妹のやってるからかな。」


「ふーん。…なんかきもちい。」


そのまま悠くんに任せるような体制になっていた私。



ある程度終わったとき、悠くんはできた。という声を発してから今度はそのタオルを頭に被せるのであった。


「え。悠くん?…ん」


どうしたのだろうと見上げた私が見たものはすごく近くにある悠くんの顔。


そして口にあたる違和感。


そう、キスされていた。




それに気づいた私は悠くんの首に手を回し、悠くんも私の腰や首に腕を回してくるのであった。




きっと誰も気づかないこの場所で



私たちはお互いを確かめるかのように何度も何度もキスをするのであった。




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