第5話 夏の時間 第5話 夏の時間 「あっぢー」 「地獄だぜ。今日びクーラーのない教室とか。」 突然ですが、E組にはクーラーがありません。 だから、夏の楽しみといえば本校舎にあるプールでしか暑さを紛らわすことはできないのですが…またこれも地獄でして。 ま、まず私はプールには入らないんだけど。 そう、今だって。 「桜井さんは入らないのー?」 「あ、ごめんちょっと入れなくて…」 茅野さんが浮き輪で浮いていたり、ほかのクラスメートがどんどん旧校舎ちかくの森の中に作られたプールに入っていく中、私はただそれを見守っていた。 「えーなんかもったいなーい。」 「ごめんごめん。」 別に体調は悪くない。ただ… 「じゃあせめて足だけでもつけておいたら?そうしたら少しは涼しくなるんじゃない?」 そう言ってくれたのは誰だっただろうか。 「繭さん繭さん!」 足だけで水を楽しんでいたそのとき、急に私の携帯から声がした。 「律―?どうしたの?」 「みてください!律もみなさんと同じように水着仕様にしてみました!」 そういう画面の向こうの律はビキニ。 「いいじゃん!その格好でね、帰ってくるの待っててみたら?今みんな泳ぎに真剣であまり見せられるものじゃないからね。」 …とりあえずいつから携帯にいたのだろう。 それにしても… 「渚もやっぱり男の子だなぁ。」 私の目線にあるのは上半身裸の渚。…まぁ男の子みんな裸なのだけど。 記憶にあるのは随分幼い時のものしかないから、なんか変な感じ。 …それに比べ私は… 「なんて。あーあ。ばっかみたい。」 思わず自分で言って自分で笑ってしまう。 「ねぇ律。」 「はい?」 「私たちはいつになったら自由になれるのかな?」 「どうされたのですか?」 「んーん。なんでもない。」 なんでもない。 ただ、残酷なだけ。 ← |