第8話 沖縄の時間 第8話 沖縄の時間 「ねぇ、 繭。大丈夫? 」 「…無理。吐きそう。」 今日、私達は先生を暗殺する。 見ての通り、私は今酔っております。 ここは沖縄にある島。 そう、私達がA組から賭けで貰ったもの。 「ようこそ福間リゾートホテルへ。」 そう言って私の前に出されたのはサービスだというトロピカルジュース。 とりあえず私はその人に頭だけで会釈をし、目の前のジュースを飲むのだった。 「 桜井さん、その格好暑くない? 」 「薄いから平気だよ。」 「そう?ならいいんだけど…。」 沖縄に来ても私の格好は長袖のカーディガンにタイツという秋に着るようなコーデになっている。 「とりあえず水分いっぱい取ってね?」 「倒れたらダメだよー。」 先程から女子を中心に声をかけてくれる。私はみんなに大丈夫と言って話を流すのだった。 その後は班別に殺せんせーと沖縄を楽しみその中で暗殺をしたりとほかの班の行動を先生が察しないようにしていた。 その結果…真っ黒な殺せんせー 「黒すぎだろ!!」 なぜか歯まで黒くなった殺せんせーにE組のみんなは突っ込まざるを得なかった。 今からご飯…で、その後暗殺だ。 「 繭、もう酔いはなくなった? 」 「うん、大丈夫だよ。」 「そっか。」 渚もいつも通り…というかやはりいつもとは違って少し楽しそう。 そんな渚を見て、私も少し口角が上がるような気がした。 夕食は貸し切りの船上レストランで食べるのらしいんだけど。 …私には少しきつかった。 そして暗殺が始まったが、成功かと思ったその作戦も先生の完全防御形態という謎の形態のお陰で失敗に終わった。 ここに来ての新たな先生の形態の存在を知ったクラスのみんなはそのショックと同時にクラス全員という大規模な暗殺計画の失敗にみんなは失踪感で埋め尽くされていた。 そんな中、私はその疲労感だけではなく、別のものに悩まされていた。 「…なぎさー、疲れたね。」 「うん。」 「あーもう。」 「…?」 なんかすごく体がだるい。 「どうしたの?」 「体がおかしい…。」 「ちょっと!」 渚の冷たい手が頭にふれる。 「…すごい熱。」 私のようになっているのはクラスの半分くらいで残りの半分の人はクラスメートの異常な自体に驚いていた。 そんな時、烏間先生の携帯が鳴り、この状況を起こした人物からのものだったらしい。 「はぁ、はぁ…」 その間にも私の意識は落ちそうになる。 …あーあ。こうしていると思い出すなぁ、昔本当に風邪をひいたことを。 あの時はまだお母さんも元気だったんだっけ。 −ほら、風邪をひいているんだから寝てなきゃ― ―母さん、プリン買ってきたぞ。どうだ様子は…― ―結構よくなったみたいよ。― ―そうか。― それから中学に入ったと同時にお母さんが事故でなくなってお父さんは段々おかしくなって行ったんだっけ。 …あ、お父さんに何も言わずに出ていったけど、怒られるかな。 まぁ無事に帰れたらの話だけど。 なんて考えていると夢の中の景色がいきなり変わった。 ―なんであいつは死んだんだ?答えろ!!― ―なんだその目は。え?― お願いだからもうやめてと何度言ってもお父さんはやめてくれなかった。 夢が覚めると、奥田さんが私の服を脱がそうとしているところだった。 「あ、あの 桜井さん。服脱ぎませんか? 」 「ごめん。大丈夫だから。」 「そ、そうですよね。とりあえずタオル変えますね。」 そういうと奥田さんは私の頭にあったタオルを取り、新しいものと取り替えようとしてれた。 ―お前は所詮一人ぼっちなんだよ― 奥田さんを見ているとそんな言葉が頭の中を流れ、私はその言葉を振り払うべく、身体を起こすのであった。 「あ、まだ寝てないと!!」 「大丈夫。」 私は必死に止めてくれる奥田さんにトイレだからといい、みんなが休んでいた場所から離れた。 その道のりは決して楽なものではなく、私は何度も壁に体をぶつけるもとりあえずひとりになれる場所に行きたかった。 「ここなら、いいかな…。」 私がたどり着いたのはホテルの反対側にあるビーチ。 海は…お母さんが大好きだったから。 「また寝ようかな。」 夏の海辺は暖かく、私は近くにあった木を支えとし、その場で眠るのであった。 ホテルに戻った潜入組はそれぞれもう大丈夫なことを伝えた。 「あれ、 繭は? 」 そんな中、渚はさきほど寝かせてきた場所にいないある人物を探していた。 「 桜井さんですか?さきほどお手洗いに行くと……。 」 「それっていつの話?」 「多分ちょっと前だったと思います。」 なんとなく胸騒ぎがした渚は烏間先生に理由を話し、みんなで探してもらうようお願いをした。 「そっちにいたか?」 「いないー。」 「じゃあ私はこっちを見てくる。」 先ほどの暗殺計画の後だったからか、その人物は携帯を持ってはおらず、律のGPSでは探せなかったため、必死になって探す渚達。 「みーつけた。」 そのうちにある人物がその少女を探し当てた。 「 繭ちゃん、起きなよ。 」 「…ん。な、さ。」 「うん。」 「…なぎさだー。」 「本当に渚君のことが大好きだよね。」 自身を彼と間違えたこの少女は安心したのかまた眠ってしまい、彼は少女を仕方なく抱き上げることにした。 「…やっぱり軽いねー。…それに」 女の子なのだから軽いのは当たり前なのだが、抱き上げた時に少女の服が少しめくれ、紫色のものが見えた。 彼は悪いとは思いつつも彼女の腕を少しめくってみる。 「やっぱりここにもあるか……んー。これは聞いても教えてくれないかな。」 とりあえず目の前の子を運ぶことだけを考え、彼は律に連絡をし、少女の無事は律を通して全員に伝えられたのだった。 しかし、そんなことがあったことをこの少女はまだ知らない。 ← |