ロ市附近に一つの秘密結社が発達しかけておりました。この結社は初め、日本、印度、支那三国の無頼漢によって組織されておりましたので、その三国の英語の頭字を取ってJ・I・C団と名付け、主として西部亜米利加、及、メキシコ境へかけた民家や、旅行者を荒す強窃盗やインチキ賭博を仕事にしておりましたが、その後次第に西北海岸の都会地に近づいて富豪や銀行を脅やかし、又は各方面の依頼に応じて暗殺を引受くる拳銃業者の集団となり、英、米、伊、露、等の各国の無頼漢が参加するに及んで、遂に大仕掛の政治的金儲手段を引受くる大団体と化し、一時桑港に移しておりました本部を更に東、紐育に移し、名士、富豪の暗殺、同盟罷工の煽動等はもとより、各国に潜入して、悪思想の宣伝、革命等のあらゆる政治的の陰険手段を請負うに足る、恐るべき組織を完備するに至りました。
 この団体の首領は名をウルスター・ゴンクールと申しまして、小生と同年同月生れで、西班牙人の父と、猶太人の母との間に生れた混血児だと申しますが、一見したところでは純然たるヤンキーとしか思われませぬ。出身は墨西哥境のアリゾナ州で、志を立てて英国の剣橋大学に遊び、法律を研究して帰ってから、西部亜米利加を放浪しておりますうちに、このJ・I・C結社に加盟したものでありますが、今から八年前に、同人がまだ、J・I・Cの一方の頭目として腕を揮っております時分に、ローサンゼルスの或る舞踏場で、偶然に小生と落ち合ったものであります。
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