実は面目ない話だがね。二三週間前に門司駅の改札口で、今まで持っていた金側時計を掏摸にして遣られてしまったのだ。モバド会社の特製で時価千円位のモノだったが惜しい事をしたよ。そこでヒョイッと思い出して、十八年前にお預けにしておいた銀時計がもし在るならばと思って貰いに来た訳だがね。……ところでその序に、何か一つ諸君をアッといわせるような手土産をと思ったが、格別芳ばしいものも思い当らないので、そのまま門司の伊勢源旅館の二階に滞在して、詰らない論文みたようなものを全速力で書き上げて来た。そこでまずこれを新総長にお眼にかけようと思って、斎藤先生に紹介してもらいに行ったら、それはこっちから紹介してもいいが、役目柄、学部長の若林君の手を経て提出した方がよかろうと云われたから、こっちへ担ぎ込んで来た訳だ。面倒だろうがどうか一つ宜しく頼む」
 というお話です。
阿佐ヶ谷 歯医者
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