又、十四号室の中に引返して来ると、皆もあとから這入って来た。その扉を固く締めてから、熱海検事に脱帽して許可を得た私は、部下を岩形氏の枕元に集めると、次のような命令を下した。
「志免君と飯村君は東京市内と附近の銀行へ、いつもの通りの形式で通知を出してくれ給え。今のような女が、多少に拘らず金を預けに来たら急報してくれるように……それから、これは日比谷署にもお手伝いが願いたいのだが、市内でタイプライターを売っている店はいくらもあるまいから当って見ること……。タイプライターを本職にしている女だったら大抵家の近所か、又は勤め先の会社か何かに近い、きまり切った店でリボンを買うものだからそのつもりで……。それから借着屋を当らせること……。着物の種類はわかっているだろう……女がヘリオトロープの香水を使っている事を忘れないように……それからもう一つ新橋二五〇九という俥屋を探してもらいたい……こっちが先かも知れないがその辺は志免君の考えに任せる。相当手剛い女と思った方が間違いないだろう。……それから二種類の毒薬の分析は無論のこと、屍体解剖の序に左腕の刺青の痕を切り抜いてもらって、残っている墨の輪廓を出来るだけ細かに取っておくように……それだけ……」
 命令を終ると皆、眩しそうに私の顔を仰いだ。私の下した判断と処置が、あんまり迅速であったからであろう。皆互に顔を見合わせて突立った切りであった。
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