臓腑の底から湧き出して来る戦慄と共に、我を忘れて大声をあげた。
 それは金属性を帯びた、突拍子もない甲高い声であった……が……その声は私に、過去の何事かを思い出させる間もないうちに、四方のコンクリート壁に吸い込まれて、消え失せてしまった。
 又叫んだ。……けれども矢張り無駄であった。その声が一しきり烈しく波動して、渦巻いて、消え去ったあとには、四つの壁と、三つの窓と、一つの扉が、いよいよ厳粛に静まり返っているばかりである。
 又叫ぼうとした。……けれどもその声は、まだ声にならないうちに、咽喉の奥の方へ引返してしまった。叫ぶたんびに深まって行く静寂の恐ろしさ……。
 奥歯がガチガチと音を立てはじめた。膝頭が自然とガクガクし出した。それでも自分自身が何者であったかを思い出し得ない……その息苦しさ。
天神 矯正歯科
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