お銀は田舎へ流れ込んで行っている叔父の旧の情婦のことを想い出しながら、どうかすると、檻へ入れられたような、ここの家から放たれて行きたいような心持もしていた。磯谷との間が破れて以来、お銀の心持は、ともすると頽れかかろうとしていた。笹村は荒んだお銀の心持を、優しい愛情で慰めるような男ではなかった。お銀を妻とするについても、女をよい方へ導こうとか、自分の生涯を慮うとかいうような心持は、大して持たなかった。
「私がここを出るにしても、あなたのことなど誰にも言やしませんよ。」
 女は別れる前に、ある晩笹村と外で飲食いをした帰りに、暗い草原の小逕を歩きながら言った。女は口に楊枝を啣えて、両手で裾をまくしあげていた。ハッピーメール
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