「存じております。一ヶ月ばかり前に頂戴しましたフォックス・テリヤで……」
「そうじゃない。この犬がどこの家の犬だか知っとるのかと云うんだよ……君が……」
「……………」
 羽振医学士の顔がサット青くなった。どうやら知っているらしい眼の玉の動かし方だ。
「知らん筈はないじゃろう。あの家の犬ということを」
「存じません。ドコの犬だか……貴方がどこかからかお持ちになったのですから……」
「この犬は山木テル子さんの犬だよ」
「ヘエ、山木テル子さん……存じませんな、ソンナ方……」
「ナニ知らん……」
「ハイ、まったく……その……」
「ウン、キット知らんか……」
「……ぞ……ぞんじません。そんな方……まったく……」
 博士の卵が汽車の信号みたいに青くなったり赤くなったりした。しかし汽車の信号でも何でもモウ相場がきまっている。自分が結婚を申込んだ女の名前を忘れるようなウンテレガンが在るもんじゃない。薬剤師転職サイトランキング ※2014年度版
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