扁桃腺とかで倒れるのが例で、中学から上の学校へ入るのに、二年もつづいて試験の当日にわかに高熱を出して、自動車で帰って来たりして、つい入学がおくれ、その結果中学時代に持っていた敬虔な学生気分にも、いつか懈怠が来ないわけに行かなかった。ここにも若ものの運命を狂わせる試験地獄の祟りがあったわけだが、それが庸三の不断の悩みでもあった。
 けれど今になってみると、彼はむしろ自身の足跡を、ある程度彼にも知らせておいていいような気分もした。それがもし恋愛といったような特殊の場合であるとしても、老年の彼以上にも適当な批判を下しうるだけの、近代人相応の感覚や情操に事欠くこともあるまい――と、そう明瞭には考えなかったにしても、少なくもそういった甘やかしい感情はもっていた。
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