通りの花屋から買って来て、庸三を顰蹙せしめたものだが、お節句にはデパアトから幾箇かの人形を買って来て、子供の雛壇を賑わせたり、時とすると映画を見せに子供を四人も引っ張り出して、帰りに何か食べて来たりするので、庸三はある日彼女の部屋を訪れて、彼女にお小遣を贈ろうとした。
「先生のお金――芸術家のお金なんて私とても戴けませんわ。私そんなつもりで、先生んとこへ伺っているんじゃないのよ。どうぞそんな御心配なさらないで。」
 彼女は再三押し返すのだったが、庸三の引込みのつかないことに気がつくと、
「それじゃ戴いときますわ。――思いがけないお金ですから、このお金で私質へ入っているものを請け出したいと思うんですけれど。」
「いいとも。君もそういうことを知っているのか。」
「そうですとも。松川と田端に世帯をもっている時分は、それはひどい困り方だったのよ、松川は職を捜して、毎日出歩いてばかりいるし、私は私で原稿は物にならないし、映画女優にでもなろうかと思って、せっかく話をきめたには決めたけれど、いろいろ話をきいてみると、厭気が差して……第一松川がいやな顔をするもんで……。」
 葉子は出て行ったが、間もなくタキシイにでも載せて来たものらしく、息をはずませながら一包みの衣裳を小女と二人で運びこんで来た。派手な晴着や帯や長襦袢がそこへ拡げられた。
武蔵野市 歯科
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