抜けるように白い。その白さの更に向こう側に、一瞬、白い炎が走った。

 「理想の町の話を聞いたのは、今日はこれで二度目です」
 「解禁日だから、年に一度の。それが今年はどうしたことか、年老いた写真師、市長やバア兼喫茶店のマダムはともかくとして、何の関係もない連中が次から次へと名乗りを挙げてきたものだ。伝説の不良少年やら怪しげな画家兼美術教師、海を渡ってやって来た正体不明の楽団まで加わって何とも賑やかなカルナヴァルの前夜になってしまった。それというのも、今夜は誰もが自分を主人公になぞらえることができるからだ。このゲームではそれが許される。皆が皆、このルールをいつの間にか知っている。……君を見ていると町が分かる。わたしは君を通して、町で起こっていることを見ていた。君はいわば、今日一日のこの町についての語り手だったのだ、わたしにとって」
 「だったらお礼ぐらいしてもらわなくちゃ、合わないよね」
 いつの間にかさっきの少年が、そこに立っている。両手にお盆を持ち、その上にはガラスのコップに入った水みたいなものが載っていて、薬だろうかと僕は想像する。
 「いつだってこうだった。実に、実に懐かしい。物事はたいていこんな始まりかたをする。
 貯水池公園の真ん中に建っている〈塔〉。町の計画した忠霊塔の建設に際してあいつの持ちこんだデザインを押し通し、実現させてしまったことにはわたしも深く関わった。あそこからすべてが始まるはずだった。橋と、あの塔を結ぶ軸に沿って町は疾走し、拡張を繰り返すはずだった。
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