さんねんろぐみ ※転生連載、ららるらの二年生篇作兵衛視点の短編なのでまだそちらを読んでない方は読んでいただけたら嬉しいです。 街を一通り回ったが、左門も三之助も見つからなかった。あいつらのことだから動き回っているんだろうけど、何軒か聞いて回ったお店の人も見ていないという。 「奇跡が起こって、裏裏裏山にいるのか…?」 要が心配になってきた。街の中ならともかく、裏裏裏山にいるなら要だって熊や野犬に襲われる可能性はあるのだ。 「いくら優秀ない組だって…熊と野犬と南蛮攫いに会ったら…!」 さああ、と血の気が引いていく。要のことだ、左門と三之助をためらいなく庇いかねない。 「あ、あ、あ」 「坊や、大丈夫かい?」 気がつけば、心配そうにお爺さんに顔を覗き込まれていた。ぶんぶんと首を降って踵を返す。 裏裏裏山に行かなければ。左門と三之助と要の元に、走って走って走って、行かなければ。 景色が掠める。 息がきれて、風を追い抜いていく。 いつからかと聞かれると、はじめて会ったときからあいつらはそうだったし、要はお節介だった。 こっちだ!と威勢良く方向を間違え、こっちだよな?と無自覚に方向を間違え、まぁいっかと自分を犠牲にする。 駄目だと思ったんだ。 俺が今ここであいつらを追い掛けなかったら、きっと俺自身が気持ち悪くて胸くそ悪くて、納得いかないんだろうって。 だから走る。 あいつらを追って、どこまでも、どこまでも。 「のろしが上がってない…」 要になにかあったのか。その考えに行きついて、さらに血の気がひいた。 はやく、はやく見つけないと!焦る俺の耳に、鈴の音が届く。 「!」 御守り効果テキメンだ。 おそらく左門か三之助が近くにいる。鈴の音を追って、背の高い草をかき分ける。 「頑張れ要!」 左門の声。 大きな栗の木が視界に入るとともに、その根元で縄を必死に掴みもがいている要がいた。 「大丈夫だ!きっと作兵衛が来てくれる!」 「!」 だから、 「だって作兵衛は、僕らがどこに居たって、必ずみつけてくれるんだ!」 だから俺は、 「――俺はお前らの保護者じゃねーぞ!」 叫ぶようにそう言って、要の腕をぐいと引っ張った。 さんねんろぐみ。 富松作兵衛!神崎左門!次屋三之助! ※ブラウザバックでお戻りください。 |