trick or ? ※拍手のリクエストにお答えして!五年みんながららるら主大好き全力投球です。なんかいろいろあれ。お気をつけて! 「へー……」 五年教室の一室。机で本を読んでいた不破雷蔵が、とうとつに感嘆の声をもらした。傍の机にみんなでゴロゴロと上半身を預け転がり、暇を持て余していた他五年生メンバーはなにか面白いものでも見つけたかと顔をあげる。 一番近くにいた鉢屋三郎が代表して口を開いた。 「どうした?」 「はろーうぃん、って知ってる三郎?」 「はろーうぃん……?」 なんだそりゃ、と眉をひそめる鉢屋と他メンバーに雷蔵は苦笑して説明文らしい一文を読み上げる。 「子供たちが思い思いの仮装をし、町の中を徘徊しながらお菓子をもらい歩く祭り。"trick or treat?"とは"お菓子か悪戯か?"という意味である」 「悪戯?」 「お菓子をくれなかったら悪戯ができるって行事みたいだ。面白いね」 「それは興味深いな」 スパッと反応したのは久々知兵助だった。それに隣の尾浜勘右衛門も頷く。 「お菓子もらえんのいいね」 「そっちじゃないだろ勘右衛門!悪戯の方だよ!」 竹谷がなぜか手をわきわきとさせながら勘右衛門を叱咤する。雷蔵はまた始まった、という表情だ。 「悪戯ってどこまでしていいんだろう?」 真面目な顔でたずねる久々知に竹谷や鉢屋面々も真剣な面持ちで腕を組む。雷蔵だけはため息をついて本をとじた。この手の会話が始まると読書どころではなくなってしまうのが常である。 「触るのはOKだろ?」 「えっ触るってどこまで?」 「どこまでもだろ。こっちはお菓子がもらえないんだぞ」 竹谷の問いになんともこじつけな鉢屋の応えである。 だいたいこういう話題の被害に遭うのは雷蔵の後輩、三年生の一ノ瀬要だった。ふわふわな癖っ毛と柔らかな物腰で中性的な顔をしている要は、からかうと真っ赤になって反抗してくるので可愛い可愛いとこいつらの餌食になる。 反応がいいので要はあれよあれよといじられからかわれ、最近では五年面々のあまりの溺愛っぷりに雷蔵の手も回らないくらいだった。 まぁ話すだけなら要に被害はいかないだろうと、最近は実害以外は放っておくようにしている。 「お菓子もらってもさー悪戯したいよね」 勘右衛門の言葉にみんな和やかな表情をして頷く。 「むしろお菓子を使って悪戯だろ。口のチョコレートが溶けるまでキスしてたい」 「うわーっ!!三郎のスケベ!!!でもいいねそれ」 「三郎ならやりかねないから煽るな勘右衛門」 真顔で注意する久々知に、いやお前でもやりかねないと皆心中でつぶやいたのは本人には届かない。 「要が仮装するならさぁ。やっぱり魔女っ子?」 「わかってねぇなハチ。そこは悪魔だろ。小悪魔小悪魔」 「ええー俺は狼がいい。獣耳さわって嫌がられたい。兵助は?」 「俺は要ならなんでもいい」 「目がマジなんだよお前は!こぇえよ!」 竹谷に後頭部をひっぱたかれ、久々知が少し唇をとがらせて唇を開く。 「要はなに着たって可愛いよ。可愛いから」 「ああなんだろう。全くもって不自由な日本語なのに全部伝わる」 すまんと言いながらひっぱたいた後頭部を、竹谷がさすってやった。 「ああー要なにしてるんだろうなー今ー」 「もう下校してるんじゃない?要は今日図書当番じゃないから」 「そっかー」 ぐでーっと勘右衛門はせっかく起こした上半身をまた机に寝転がせた。その拍子に窓の向こうに沈んでいく太陽がみえたらしく、ぽつりとつぶやく。 「そろそろ帰るー?」 「なんか虚しいわ……頭んなかだけ真っピンクなんだけど。要かわいい」 「三郎やめろ」 「要が豆腐まみれだ」 「兵助やめろ」 「かえろっか」 雷蔵が苦笑をこぼして本を鞄にしまった。それを合図にだらだらと帰宅準備をはじめる。 「あっ」 瞬間。ぴょこっと教室に癖っ毛の髪が揺れた。 「先輩方まだ帰ってなかったんですねー!良かった」 「要?」 委員会の先輩である雷蔵が名前を呼ぶと、要はパタパタと駆け寄って肩掛け鞄を探り出した。 「こういう行事があるって知らなくって。ハロウィンって知ってます?」 はにかむ要に、さっきまでそれ関係で要のいかがわしい想像をしていた四名がしらっと視線を離す。 「面白いなぁと思って。昴さんに習いながらお菓子つくってみたんです」 鞄から取り出したのは可愛らしく透明なビニール袋に包装された、オレンジ色のカップケーキだった。 それを5つ手に持ち、えーっとと小首をかしげて口をひらいた。 「trick or treat?」 「あはは。違うよ要。それはお菓子をもらう人が言うの」 「えっあっそうなんですか?あー……そっかー……」 えへへと笑いながら要はどうぞーとお菓子を手渡す。 「要」 「はい。なんですか?鉢屋先輩」 鉢屋が要からもらったカップケーキを机に置き、要の肩に優しく手を置いた。 「"trick or treat"ってどういう意味でしょう」 「え?えっと……」 右斜め上を見上げながら狼狽える要は、おそらくハロウィンに関する記憶を探っているのだろう。やがて思い当たったようで、ぱっと顔を輝かせながら口をひらいた。 「お菓子をくれないと僕が悪戯しちゃいますよ?ってことですよ」 全く曇りのない表情で告げられた言葉に、雷蔵を覗く全員がほとんど反射的に叫んだ。 「「「「あり!!!」」」」 「えっ」 「………あー気にしなくていいよ。要」 「えっ?あの、」 「こいつらの頭のなかはいつも春だからね。さぁ帰ろ」 うおーとなにやら盛り上がる他メンバーを放り出し、雷蔵が要の背中を押した。それに気がついてばたばた追いつこうと走る足音に、雷蔵はため息を落とす。 「全く、もう。困ったものだよね、要」 「? そうですね。あんまり走ると転んじゃうと思います」 的外れ過ぎる応えに、これでもかと頬がゆるんだ。ああ僕もなんだかんだ、あいつらと変わんないなぁ。 「可愛いねぇ、要は」 HAPPY Halloween!! ※※※ セーフ! セーフセーフ! 2時間クオリティさーせん! ※ブラウザバックでお戻りください。 |