かんちゃんとへーしゅけ

今日もぽかぽかとお日様が気持ちが良い。みんなもその青い空の下、きゃっきゃっと元気に遊んでいる。


竹谷くんたちとサッカーをしていた僕は、室内からぱたぱたと走ってきた藤内に手を合わせながら頼み事をされていた。


「要ー悪いけど園長先生に呼ばれちゃって、室内見ててくれないか?」


「うん、いいよ。三之助、こっちは任せるね」


一緒にサッカーをしてくれていた三之助を振り向く。


「三之助ミラクルスーパーシュートッッ!!!」


三之助がまた手加減なしで幼稚園児用のちっちゃなサッカーゴールに、全力でサッカーボールをぶち込んだ。


「……三之助」


「お?おう!任せろ!」


「三之助先生すげー!もういっかいやって!!」


竹谷くんを筆頭に三之助にわらわらと園児たちが群がる。満更でもない顔をしながら三之助がシュートを教え始めた。


「全く……」


「じゃーすまん、頼むな要」


「はーい」


手洗い場で泥だらけの手を洗い、靴をしまってもも組を覗けば兵助くんと勘ちゃんが一緒にお絵かきをしていた。


「なに描いてるのー?」


「要せんせー!」


ぱっと顔を上げた勘ちゃんに微笑んで隣に座らせてもらう。2人の画用紙を覗き込むと、クレヨンで思い思いの絵が描かれていた。


「これはなぁに?勘ちゃん」


「しょーらいのゆめ!」


キリッとした表情で勘ちゃんの口から飛び出したのは、なんとも立派な答えだった。驚いたと同時に感心する。


「すごいね勘ちゃん。もう将来の夢を考えてるんだ」


「うん!」


「へえ………ん、ん、?」


頷いて感心しながら再度勘ちゃんの手元を覗き込むが、そこに描かれていたのはなにかの茶色の塊と、銀紙?のようなものだった。


「えっと……」


えへへーと自慢げな勘ちゃんなのだが、僕にはこれがなんなのかわからない。


「勘ちゃん、これはなにを描いたのかな?」


「包み焼きハンバーグ!」


ぱぁっと花の咲くような笑顔だった。


「おれしょーらいは包み焼きハンバーグになりたいの!」


「包み焼きハンバーグ?」


「うん!」


勘ちゃんのしょーらいのゆめはとっても美味しそうなものだった。可愛らしくて思わず苦笑が漏れてしまう。


「いいなー勘ちゃん。大人気だね」


「ほんと!?」


「うん。みんな大好きだからねー包み焼きハンバーグ」


「でもねーだめなんだー」


へへ、と勘ちゃんは兵助くんに寄りかかりながら無邪気に笑った。


「おれの好きなひとしかおれは食べちゃだめなんだー」


「かんちゃん…おもい…」


「へーすけはいいよ!おれへーすけ好きだもん!」


けらけらと笑う勘ちゃんに思わずこちらまで笑みが零れる。2人は本当に仲良しさんだ。


「要せんせーもね!食べていいんだー」


「え?いいの?」


「うん!おれ要せんせーも好きだよ!」


「そっかーありがとね」


「うん!」


「できた!」


寄りかかっていた勘ちゃんを飛び起きてはねのけて、兵助くんが画用紙を僕に見せてくれた。


「兵助くんはなにを描いたの?」


「とうふはかせになるの」


兵助くんの画用紙には、白衣のような服をまとったおそらく兵助くんと、なにやら後ろに大きな機械が描いてあった。


「とうふはかせはすごいの。とうふにいろんなこうかがあって、しあわせにするの」


「ふふ、兵助くんも勘ちゃんも食いしん坊さんだねぇ」


くすくすと笑いながら2人の頭をなでる。2人はくすぐったそうに笑って、僕を見上げた。


「要せんせいは?」


「え?」


勘ちゃんがくりりと瞳を輝かせて僕の膝をたたく。


「要せんせいはなにになるの?」


「うーん、僕かぁ」


ふむ、と腕を組んで考え込む仕草をみせると、2人は期待に満ちた表情で僕の回答を待つ。


「僕の夢はもう叶っちゃってるからなぁ」


「そーなの?」


「うん」


2人の頬をつまむと、2人はきゃっきゃっと笑い声を上げる。僕は優しく微笑んで、画用紙に視線をうつした。


「夢、叶うといいね、2人とも」



かんちゃんとへーしゅけ
(ごねんいぐみへん)


※※※
幼稚園パロで勘ちゃんの将来の夢ってなんだろうね?という話を友人としていて、あれこれ上げましたがどれもピンと来ない。やがてむーんと考え込んだ結果、私の脳に稲妻が走る。


「包み焼きハンバーグだ!!!!!!!!!!」


そのあと爆笑でしばらく動けなくなりました。勘ちゃんペロペロ。


ヤマネコ



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