I! LOVE! YOU !

「今日は要に俺の愛を伝えにきました」


「はい?」


出産間近の母馬が心配だから今日は遅くなるという孫兵さんが、いつ帰ってきても寝られるように布団を敷いている最中。


スパンッと開いた障子から姿を見せた三之助が、なんの脈略もなくそう言った。


「なに?どうしたの三之助?失恋したの?」


「要」


「えっ、ちょ…!」


がばりと効果音がつきそうな勢いで、三之助に覆うように抱きつかれる。くそ、長身め。


「ってうわ!?酒くさ!?なに三之助!?呑んだの!?」


「あー?七松先輩がなんか…」


「はぁ!?呑まされたの!?ばか、なんで逃げなかったんだよ!」


「そしたら要に愛を伝えなきゃいけない気がしてきて…」


「だめだお前、もう寝ろ」


「要ー!」


スパンッとまたまた開いた障子に、ドドッと乗り込んできたのは作兵衛と左門だった。


「っうわ!?なに!?今度はなに!?」


「要!好きだ!愛してる!」


「お前もか」


がばりと飛び起きた左門がお酒の匂いをさせて、真っ赤な顔で三之助の後ろから僕に抱きつく。


しかし、左門の体では三之助を覆うことは出来ず、ただドッという衝撃が僕を襲った。


「ちょっ……重い重い重い!」


「要好きだ」


「わかった!三之助の思いはよっくわかった!だから退こう!ね!」


「僕の方が好きだぞ要!大好きなんだからな!」


「重い重い愛が重いいい!」


2人分の同級生の体重に耐えられず、勢いよく後ろに倒れる僕。迷子2人もゴロゴロと床に倒れる。


「要ー要ー要は僕のこと好き?なぁなぁなぁ」


膝にごろごろと猫のように転がる左門と、ポジションを奪われてはならんと三之助が僕に後ろから覆い被さる。


「いってて……うあー脳みそ回転したんじゃないかなこれ……つか重い三之助」


「なーなー好き?なー」


「違ぇよ左門。要は俺のことが好きなの!俺のために毎日味噌汁作ってくれるの!」


「悪いけど料理はたぶん三之助の方が上手いよ。僕に包丁持たせると下手すりゃ死人が」


「なー要ー」


「はいはい、なぁに左門」


「要は僕がいちばんだよな?な?僕がいちばん好き?」


「うんうんそうだね。左門がいちばん好きだよ」


「ほんとか!僕も要のこと大好きだぞ!」


左門は僕の膝にじゃれついていた体を起こして、顔を僕に近づける。


「えっちょっとさも…」


「違うよな?」


耳元で呂律の回ってない三之助の声が拗ねたように響く。


「要がいちばん好きなのは俺!そーだろー?」


「え、いやみんな好きだよ!友達!でしょ!?」


「うん、要はいつも僕らに手を貸してくれるし」


「からかうと面白いし」


「三之助、表出ろ」


「だから僕らは要が好きだぞ!大好きだ!」


「ありがとう左門、三之助。お酒くさいけど嬉しいよ。お酒って怖いね」


「本当?」


「本当本当、だからそろそろ離れ」


ぐい、と後ろに引っ張られる衝撃。ごろりとまた後ろに転がった僕に、三之助と左門のとろんとした目がうつり、そして


ちゅ、


と耳元でリップ音が2つはじけた。


「え゛っちょっとばかなにしてんの!!!」


「んー、要なんか酒くさい、あはは、きもちい」


「お前だ馬鹿!!ちょっと左門!!三之助どうにか」


「嫌だー!!僕は会計室には戻らないぞ!!ここに基地を作る!!」


「ちょっだから重いって……!そこお腹!僕のお腹!基地なら別の場所に」


「えへー」


「ゃっ……!?馬鹿三之助っ…僕の耳を噛むなぁああ!」


「みんなそろばんを捨てろぉおおぉお迎え撃てぇええ!!」


「ちょっ、とほんとに、!作兵衛!!」


そうだ確か左門と一緒に作兵衛も部屋に雪崩れ込んできたはず。どうした作兵衛!なぜ黙ってる作兵衛!


「作兵衛!助けて!この人たち無駄に力が強い!委員会レベルが違いすぎる!」


「……ぃ」


ゆら、と視界の端になにかが体を起こした気がした。と、と、とゆっくりこちらに歩いてくる足音。


「……左門、三之助」


低くドスの効いた作兵衛の声にぴたりと場が硬直する。


「悪い子だ、ハウス」


ヒュルルルル


作兵衛の手から縄が飛び、あっという間に左門と三之助を縛り上げた。ごろごろと縛られ床に転がる迷子2人。


僕は体を起こし、ぐしゃぐしゃになってしまった忍服と髪に苦笑しながら作兵衛を見上げた。


「ありがとう、作兵衛。いやぁ一時はどうなることかと」


「……」


「作兵衛?作兵衛さん?」


作兵衛は握っていた縄をぽいと後ろに放り投げ、僕の前に膝をついた。


「え?ちょっと?作兵衛?」


「…いいか、要」


「!?」


また低い声が僕の鼓膜を撫で、作兵衛の親指が無理やり僕の顔を上げさせる。迷子が視界の端でうごうごと縄をほどこうとしているのが見えたが、正直それどころではない。


「作兵衛、まさか…!」


不快そうに歪んだ眉は、とろんとした目に打ち消されて強がっているようにしか見えない。


そして、またお酒のかおりが


ちゅ、


リップ音が今度は額ではじけた。


「俺がいちばん、要のことが好きだ」


「わかったわかったわかったわかった!!もうわかったからぁああ」


「なんだよ、逃げるなよ」


「恥ずかしいんだよ!!この、もう作兵衛の、ええと、被害妄想!!」


「要」


「そんな低い良い声で名前を呼ぶんじゃない!七松先輩呼んで来なさい誰か!!」


「作兵衛じゃないだろ!俺だろ要!」


「なーなー要!」


「あーはいはいそうだね!みんな好き!大好き!!」


頭が完全にパンクした僕は縛られている縄から抜け出した迷子と作兵衛、3人丸ごと誰一人零さないようぎゅうっと抱きしめた。



だ! い! すき!
(はぁ、ただい……は?)(ああ、孫兵おかえり)(おいなにやってんだよ。服も髪もボロボロ……相撲でもしたか)(うん、近いかな。僕もう婿にもらえなくなったら、この3人に養ってもらう)(つかなんでろ組3人ここで寝てんだ)





ららるら主くんが三年ろ組にちゅっちゅっされてぎゅーする話でした!

すみません!まじ!
ごめんなさい!



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